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紙の本

人間に備わった想像力こそが一番怖いものなのかもしれない…と感じさせられるデ・ラ・メアの心理的怪異小説。エレガントなホラー世界を知るに手に入れやすい1冊。

2002/02/17 22:18

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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 デ・ラ・メアの名を私が初めて知ったのは、上下巻2冊に分かれた『恐怖の愉しみ』という文庫本である。好きな画家・平井貴子さんが表紙装画を手がけているその本は、日本に幻想小説を紹介したパイオニアのひとり平井呈一さんの編訳になり、幽霊怪談の嚆矢であるデフォーの短篇はじめ、19世紀末から20世紀初頭の英国近代恐怖小説のおいしいところをつまみとった何とも贅沢なアンソロジーなのだ。
 そこに収められた「失踪」という作品はとても不思議な話。犯人が殺人を告白するのであるが、殺人という文字が使われていない。告白を聞いている主人公もまた、それが殺人だという意識がないままなのである。それでもって読み手に恐怖をもたらす。
 
 その本の入手から時間が経って、『デ・ラ・メア物語集』というシリーズが全3巻、児童書として発刊された。たまたま2巻めを家人が手に入れてきたのであるが、そこで初めて、彼が子供のための詩を書いた卓越した詩人であり、英国の美しい緑なす田園を描き出した物語作家であるということを知った。
 物語集の訳者は、「異界」と「人界」を区別しないことがこの作家の資質であると指摘していた。幽霊譚と童話の二項が、なるほどとしっくり溶け合う心地した。
 ホラーの方から入ってくる人と、児童文学の方から入ってくる人と、おそらく今の日本では、後者の例が多そうであるが、2002年2月現在、唯一文庫本で手に入れられるデ・ラ・メアのこの短篇集は、その二つの世界が融合したもので、たぶん入り口としては手ごろなものと言えるんじゃないかと思う。

 物語の主人公はどれも青少年である。主人公が出会う大人との交流が描かれているのであるが、読んでいると妙なことに、どの大人も先に紹介した「異界」のものと思えてくる。彼らが幽霊のように幻想的な存在だというのではない。
 同じ年ごろの遊び友だちがいない少年の目から見た大人たちは、みんな幽霊同様、得体の知れない奇妙な存在だという姿勢で描かれているのである。
 その視座に重ねて、神隠しゾーンとして古い大きな箱が書かれていて、それが結局どういうものなのか説明されないままに話が終わってしまったり(「なぞ」)、最愛の縁戚の男の子を結婚させたくないがために殺してしまったのかもしれない老婦人が登場して、その真相が明かされないまま、同じく話が終わってしまう(「シートンの伯母さん」)といった物語が提示される。

 この人は、やはり幻想的な幽霊譚を残したヘンリー・ジェイムズの影響を受けたらしいが、確かにジェイムズ同様、エレガントさが持ち味である。漂う雰囲気がエレガントであると同時に、すべてを語らないというエレガンスが共通する。
 そして、真実が語られないゆえに、読み手である私はあれこれの想像を強いられて、そんな想像をしてしまう自分というものが怖くなる。
 スプラッターが好きな向きには、かなり退屈な古典だとは思うけれど、「そこに何かいる!」と思い込んだとき、人間は一番の恐怖に取り憑かれるのではないかとも思えてくるのである。
 それから、こんな内容の本の表紙が、眠る赤子を静かに撫でる美しい母の姿——ジャケ買いしたのに、読み終わって眺めると何とも怖い絵に見えてくる。すごい装丁センスだと思う。

 

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2006/02/09 23:17

投稿元:ブクログ

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