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紙の本
活字から臨場感が伝わる一冊。
2009/09/10 02:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
まるでドラマか映画を観ているように読み進めることができる、視聴覚的な一冊だ。読書しているはずなのに、映像が脳裏に流れていく。それぞれの登場人物たちの緊迫感や恐怖感もリアルに伝わってくる。銃の知識は皆無である私だけれど、繊細な描写である程度の想像は出来たし、銃弾の名称もゲームの『バイオハザード』をやった事があるのでどれほどの威力を持っているかも想像ついた。
慶子の散弾銃が、会社の同僚たちには「お父さん」感覚で親しまれている織口によって盗まれるが、その銃はわけあって物凄く危険である。彼の行き先に目処が立っていた同僚、修二が追跡する。時間差で警察も動き出すが、それぞれの視点から、同時に物事は進行していく。慶子には慶子の身の危険が迫り、何も知らない織口は順調に北上していくし、修二は範子と共に織口の行方を追っていった。
織口や修二らが北上していく時、途中でいくつかの休憩所がある。そこで長距離トラックの運転手や長距離バスが立ち寄り、一服したりトイレ休憩を取ったりする。そっちの方面出身の友人から聞いた話だと、本当に本書に登場してくる休憩所にはある旅行会社の長距離バスが停まり、乗客たちは休憩をするんだとか。宮部みゆきはきちんとそれをおさえ、描写しているので現実味が濃い。
残酷な殺され方をした織口のかつての妻と娘、その犯人達の思惑には痛々しいものがある。酷い手口で殺人を犯しておいて、周囲をいかに欺いて現状を打破していくかと、反省どころかそこに頭を働かせる犯人達。法律は時によって被害を被った人々には無力なのかもしれないと思った。
人は、同じ状況を味わってこそその時の気持ちが分かる生き物だと思う。人を殺めた人たちは、逆に殺められるその瞬間にこそ被害者の気持ちが分かるのかもしれない。日本では、アメリカのように罪の重さによって刑の年数が増していくわけではないので、アメリカの凶悪犯罪者に懲役130年の実刑の判決が下ったりすると少し妙な心持もしたけれど、その方が人の生命の重さもひしひしと伝わるケースも確かにある。実刑130年なんて、終身刑よりも重みがあるように思えるのは、私だけだろうか。牢屋で生涯を終えてもなお、その罪は終わらないような響きがある。
だけど一つ、物語の終止符の打ち方が納得いかなかった。より良い終わり方があるような気がしてならないので、★一つを削りました。正当防衛とはいえ、人を殺めてしまった修二へ向けられる他者の目、居た堪れない。ある意味、物語は問題を残したまま終了している。エンディング以外の展開には目を瞠るものがあり、見事でした。
紙の本
みごとな職人芸の一作
2002/04/26 05:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ファニー・ヒル - この投稿者のレビュー一覧を見る
慶子は散弾銃を持って結婚式の会場に向かっていた。結婚するのは、自分を利用して捨て、今は弁護士のタマゴとして出世の階段を昇ろうとしている元恋人、国分。
釣具店に勤める織口は、鉛を買いに来た慶子が銃を持っていることを知る。
明日の金沢での公判を前にして、織口はどうしてもその銃が必要だった。
おだやかで同僚から「お父さん」と呼ばれて慕われている織口。そんなごく普通の中年男の心の暗闇を唯一知る、職場の若手修治は、今晩織口の様子がどこかいつもと違っていたのが気にかかっていた。
なんだか、まるでもう2度と会えないような気がする。
宮部みゆきは本当にうまい、と思う。
どれを読んでもはずれがないし、ストーリーの破綻やご都合主義の甘さもないので、安心して読める。
これも納得できる終わり方で、しかも後味は決して悪くないところが良かった。
紙の本
迫真のサスペンス
2001/01/23 19:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部みゆきはジャンルを問わない幅広い作品で、読者を楽しませてくれるが、本書はサスペンスに重点を置いた作品である。
人々の視点が次々に変わっていき、スピィーディーに話が展開していく為、読者を飽きさせない。そして終盤、ラストに向かって
様々な人物が、一つに収束していくところは圧巻である。
いろいろと考えさせられる話ではあるが、なによりも読者の心を掴んで離さない、作者のテクニックに感心した。