紙の本
試験管の中のアイデンティティ
2001/02/19 15:06
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投稿者:竹井庭水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
SF設定と人間観察眼という西澤節。コピー人間もどんどん増えて、フーダニットに行くと思ったら、後半は『殺意の集う夜』ばりのドタバタぶり。しかし『殺意〜』ほど理不尽ではなく、これがまぁ感情移入して目が離せないったらありゃしない。兄弟へのコンプレックス、恋愛対象への異常な執着心などなど、高校生達の少し歪んだ感情が濃縮されてます。
そこにこの異常な環境がデバイスとなって働くので、その感情が現実では行かない方向にどんどん流れていく。複数存在する自分。崩れ行く自我。淘汰の不安。特異な動機。この環境内でのリアリティが十分効いて効果大。コピーでもオリジナルでもない、実存する自分はどこだ。SFの衣をまとい、己の意味を問いただす。
(初出:いのミス)
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友達の好きな作家を巡るキャンペーン。突如現れた壁「ストロー」に触れると自分のクローンが生まれてしまうというなんともSFな話。かつミステリー。なんてことない日常だったはずのものが、狂気で彩られた惨劇に変わっていくのは結構読み応えがありました。私達のつまらない、ちっぽけな欲望は、突き詰めていけばこういうことに変化してもおかしくないのかもしれんなあ、こんな特殊な状況下では。最後はあれ?これで終わり?って感じだった。
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複製症候群読んだ。ネタはおもしろいけどオチが弱すぎる…外の話なんて正直どうでもいいし、全員生き返らせたあとはけっきょくどうなるんだよ!
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一見案あらすじを読むと、難解そうなんだけど。外と舞台は限られているし、単純そうな気はしたのに。「幕間」に挿入される部分に混乱。どういうことなんだ何が起こってるんだ、とさくさく読み進んだら、ラストでさっぱり氷解。当然、真相にはまるで気づきませんでしたとさ。伏線はかなりあったんだよな~。
人間をコピーする……考えてみれば本当に怖い問題。クローンとはまた別問題だよね。
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うん…
なんか嫌な話ではある。
でもまああるかも、みたいに僕は思わされてしまった。(狂気の描写のことであるが)おそらく好みもあるのだろう。
でも個人的には他の不条理状況系パニック読み物に比べてペラくない感じがして良いと思う。場合によっては不条理状況については何の説明もなく終わってしまうものもある中で、一応推測と言う形だが説明が付いているし、書く側がSF的な矜持を持っているようで、好ましい。
内容についてはさすがにこの作者だけあってミステリ的な、と言うかはわからないがしっかり驚かせるガジェットが組み込まれていて面白かった。
思い込みの設定だからいいのだが、お父さんだと明言しておいてひっくり返すとは…
いささか無理を通している観が無くも、ない。
しかしこの人は好きな人に告白してエンドと言うのが好きなのだろうか。
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おもしろかった!
殺人の場面はあっという間で、犯人もあっという間に分かるからミステリーというと「?」ってなるんだけど、設定とコピー人間の存在の重みが良いです。
でも、先生がなぜ始めからロクに好印象を抱いていたのかがよく分からなかった。
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触れると複製されてしまう虹色の壁、という設定もぶっ飛んでいるけれど、配置された人間関係もまた複雑。これでなにか起こらないほうがおかしい、と思わせるけれど、まさかここまでやるとは……恐ろしい。
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西澤流SF変格ミステリ。
殺人事件が起きるまで、しっかりSF作品として楽しませてくれるのはさすが。
SF設定ながら、ミステリの王道の、嵐の山荘的状況になっているのが面白い。
普通では考えられない殺人動機も興味深い。
終盤は喜劇的な印象が強く、論理的解決というわけにはいかず。
ユーモアのあるSF作品という評価になるか。