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中井久夫エッセイ集の第3弾。
特筆すべきは、本書冒頭に置かれた、「いじめの政治学」というエッセイだ。現代のいじめ問題について、鋭く掘り下げている。教育者、いじめを受けている子、あるいはその親は、ぜひ本書を手に取るべきだろう。
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聖書とまで書いたらいきすぎだろうけれど、こんなにも心落ち着くものもあるのかとこれまでになく感心した。深読みするところもなく、行間を読むべくでもなく、頭の中がつながっているようにクリアー。
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【目次】
Ⅰ
いじめの政治学
Ⅱ
戦時下の小学生の読書記録
移り住んだ懐かしい町々
三幅対
意志は治療の媒介者
ロサンゼルスの美しい朝
清明寮に小豆島からオリーヴの木が来た
二度目のルミナリエ
ハードルを一つ上げる
日本の心配
感銘を受けた言葉
はじめの一冊
私の選ぶ二十世紀の本
私の「今」
Ⅲ
赤と青と緑とヒト
症状というもの──幻聴を例として
記憶について
精神科治癒環境論
喪の作業としてのPTSD
阪神・淡路大震災のわが精神医学に対する衝迫について
二年目の震災ノート
「こころにやさしい」社会
Ⅳ
リッツォス『反復』より
これは何という手か
Ⅴ
「若きパルク」および『魅惑』の秘められた構造の若干について
詩を訳すまで
訳詩の生理学
脳髄の中の空中庭園──ヴァレリー「セミラミスのアリア」注釈
セミラミスのアリア
私の三冊
Ⅵ
「創造と癒し序説」──創造の生理学に向けて
ロールシャッハ・カードの美学と流れ
あとがき
初出一覧
*****
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精神科医・斎藤環氏は先日ツイッターで2012年大津のいじめ騒動に言及し、“中井久夫は集団内で「いじめ」関係が成立する過程を三段階に分けた。被害者の「孤立化」「無力化」「透明化」。「透明化」に至って、いじめの存在は完全に隠蔽される。”と、中井久夫を引いた。『高校生活指導127号 いじめの政治学 特集』ともうひとつがこの本だという。
日本の「いじめ」という現象は、もっと広く生じているいかにも日本らしい出来事と同じものに思われるし、最近宮台氏が代官山と浅草を例に挙げて<自治>について語っていることとも関連があるように思われる。参考になるかと。(但し大学図書館には無い)
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ダイヤモンドのようなエッセイがあるかと思えば、ただただ読むのが苦痛でしかない文章もある。いじめや文体など明晰なものから、駄文まで混ざっていて、再編集したくなる。繰り返しも多く、それだけで、寄せ集め感が出てしまっているのも惜しい。
・私が自分と折り合いをつけられる尺度は私が他者と折り合いをつけられる、その程度である。
・光賦活、アカとアオ
・外来でも脈拍が正常化するまでに数分間かかる。
・患者に選んでもらった中では、デュフィが一番
・体験の分かち合いは、事実、感情、事実の順番
・ゲーテ、一カ国語しか知らないものは一カ国語をも知らない
・訳詩は原詩より劇詩になる
・カルテ、刑事は現場を百遍踏む
・読み過ぎると、意味飽和が起きる。
・技術移転、語学力はほどほどが大事
・創作者の無力感
・文体獲得で初めて創作は癒しになる
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埼玉愛犬家連続殺人事件、北九州監禁事件、尼崎事件、これらの事件を契機に関心をもち「いじめの政治学」を読むために購入。上記は極めて知的に「いじめ」という暴力の構造を解体していく名著。これから何度も読み返すだろう。
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【目次】
?
いじめの政治学
?
戦時下の小学生の読書記録
移り住んだ懐かしい町々
三幅対
意志は治療の媒介者
ロサンゼルスの美しい朝
清明寮に小豆島からオリーヴの木が来た
二度目のルミナリエ
ハードルを一つ上げる
日本の心配
感銘を受けた言葉
はじめの一冊
私の選ぶ二十世紀の本
私の「今」
?
赤と青と緑とヒト
症状というもの──幻聴を例として
記憶について
精神科治癒環境論
喪の作業としてのPTSD
阪神・淡路大震災のわが精神医学に対する衝迫について
二年目の震災ノート
「こころにやさしい」社会
?
リッツォス『反復』より
これは何という手か
?
「若きパルク」および『魅惑』の秘められた構造の若干について
詩を訳すまで
訳詩の生理学
脳髄の中の空中庭園──ヴァレリー「セミラミスのアリア」注釈
セミラミスのアリア
私の三冊
?
「創造と癒し序説」──創造の生理学に向けて
ロールシャッハ・カードの美学と流れ
あとがき
初出一覧
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とてもすべてを読むことはできなかった。訳詩の部分はとばした。でも、いじめの政治学は必読。子どもの権力社会という見方は卓越している。そのほかにも、阪神淡路大震災後の省察は今日につながる。また、病棟を作る際の計画は学校建築にも役立つ。
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一度お読みになると「ものがちがう」ことに、きっとお気づきになる。今は「中井久夫集」(第6巻)に収められているが、単行本も、著作集も「みすず書房」。上品で清潔な装丁もうれしい。
神戸の誇る知識人。そんなふうに思う神戸の人が、いや世界中の人が一人でも増えたらうれしい。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201904100001/