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すばらしい。ガチガチの本格って言葉がここまで似合う作品はなかなかないよ。館の崩壊、怪しい容疑者、死体の見立て、読者への挑戦……そして前作でも良く分かってたんだけどあくまで論理で固めた解決編、見事としか言いようがない。特に最後の解決。この伏線はここしかないってとこにかっちりと嵌まっていく様は読んでるだけで快感。
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諸君はアッシャー家の崩壊を見出すだろう。
予告の電話は真実を告げていた。
上のような文句で前説を振られたこの作品は、凄い!!の一言しか出てきません。
「アッシャー家の崩壊」・「ベレニス」・「黒猫」・・・。
エドガー・アラン・ポオの作品にのめり込んでいた方には何も言わずに買え!!と無理強いしたくなる作品です。
無論、こういうからには損などさせません。
それほど凄いのです。
物語は「アッシャー家の崩壊」そのものと言える爆破事件から始まります。
屋敷の持ち主である兄妹の妹がその場で亡くなり、兄は行方知れず。
この事件を発端に巻き起こる第二・第三の事件。
これらポオの作品を模した事件に明確な回答は得られるのか?
一つの事件に一章、全三章の問題編。
そして第四章で名探偵が示す回答が導き出されるのです。
ポオ好きもそうでない方もこれを機に彼の作品を手に(より楽しむ為の氏の忠告つき)この作品を手にとってみませんか?
素晴しいおまけがついていますよ。
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米澤穂信の100冊その17:「物語」と「事件」を並行させ、「事件」ではなく「物語」を解くことで解決に導く。米澤さんのミステリを作る方法論の根底にある一冊。
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ポオ縁の地でアシヤ家の爆破崩壊事件から続く、ポオの作品を見立てたような連続殺人事件。魅力的な謎が提示され、探偵役が美しく論理的な推理で犯人を指摘する。実にエレガントなミステリです。書かれたのは所謂新本格ブームが興る直前、ミステリを愛する火は脈々と受け継がれていたのですね。
翻訳小説の形を取って書かれているのも面白いのですが、人物名にニヤリとさせられます。何せマクドナルドにナビスコ、バドワイザー、ハインツなどなど。しかもゲイカップルの名はロンとヤース。これは時代を感じさせますな。
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E・A・ポオ終焉の地で、デュパンの直系(自称)の美少女探偵が事件を解決。全体を通してポオ作品への愛に溢れているので、ポオマニアの人は読むと良いと思うよ!
翻訳小説の形式を取っているけれど、読みにくいことはなかった。
登場人物の名前のセンスが、ちょっとアレだったかな…読んでてお腹空いてくるんだよね…ケロッグとかナゲットとかさ…。
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なにか面白い推理小説無い?と聞かれたとき、相手がミステリーマニアであれば、これを勧めています。ただ、手に入りにくいのかな、現在は。
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諸君はアッシャー家の崩壊を見いだすだろう―予告の電話は真実を告げていた。錦秋のボルティモア郊外で、日系人兄妹の住む館が爆発し傍の沼に崩れ去った。妹は謎めいた言葉をのこして息絶え、兄の遺体もまた水中深くに。ほどなく、棺に横たわった美女の歯が無惨に折り取られる『ペレニス』、斧で頭を割られた被害者が片目の黒猫ともども壁に塗り込められる『黒猫』、各々の小説に見立てた死体が発見され、事件は更なる混迷を呈していく…。E・A・ポオ終焉の地で、デュパンの直系というにふさわしい探偵が本領を顕わす。ポオの言祝ぎが聞こえる、オールタイムベスト級本格ミステリ。 (「BOOK」データベースより)
結構期待して手に取ったのですが、うーんイマイチ。
面白いには面白かったのですが、主人公(だよね、多分)のニッキが好きになれない。
途中の言動・行動も最後の謎解きも、なんかイライラする。
全体的に読んでいて心地よくない。
どんなに陰惨な事件が題材でも、有栖川氏の作品は読んでいて心地よい。
文章が肌に合うのです。
この作品は合いませんでした。
普通に面白く、途中でいやになることもなく最後まで読んだのですけどね。
私がポオを読んだことないのがいけないのかもしれませんが。
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ポオを読んだことがない私にとっては着いていけない部分がありましたが、ストーリーよりも謎解きに特化した作品でなかなか面白かったです。確かなロジック で犯人を絞り込んでいく過程は破綻がありません。
また、「読者への挑戦」があります。関係者のアリバイ表で 登場人物の整理もし易いので、純粋に推理を楽しむことが出来ます。ポオが好きな方、推理を楽しみたい方におススメです。
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新本格前夜のミステリ、と紹介されていたが、確かにうなづける。ポオの小説の見立て連続殺人という、若干の幻想的要素を持ちつつ、謎は論理的。言い回しもアメリカの翻訳小説風で面白かった。また、ポオのアッシャー家の崩壊を犯罪小説として読み解く一編も秀逸。
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三十年ほど前の作品。ポーの[アッシャー家の崩壊]を見立てた本格探偵小説。
作風はむしろエラリークイーンの構成に近い。
一昔前の小説特有の仕掛けと回りくどさに演出の派手さがあるが、王道の本格探偵小説。最近の小説には無い面白みをたまには味わうのも楽しめる。
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登場人物の名前や翻訳風の文章の雰囲気から、バカミス系かなと思れたが、意外とまじめな内容だった。 推理は半分当たった。
内容は面白かったが、探偵のキャラクターがイマイチ好きになれず入り込めなかった。頭は良いが超人的という程でもなく、中途半端に冷淡で、チャーミングというわけでもないブレブレな人物のように感じられた。
犯人も、印象が薄すぎる人物だったので驚けなかった。
事件自体は面白かっただけに、人物が魅力的だったらもっと良かったのにという残念な強く気持ちを感じてしまった。
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どうしてこんな作品を今まで見落としていたんだろう、と個人的に忸怩たる思いでした。ただでさえ見立て殺人大好きなのに、しかもポオって!!! それもアシヤ家が文字通り崩壊というスケールの壮大すぎる見立てに愕然としながら感激です。
もちろん、謎解きの論理もしっかり堅実な本格ミステリでした。あくまでも事実のみを検討するニッキのストイックな探偵ぶりもいいのですが。個人的には動機等から突き詰めるのも嫌いじゃないんだけどなあ、と思っていたら。
……なんたること。動機もインパクトのあるものでした。こういうちょっと狂気な路線がやはり好きです。そしてポオの「アッシャー家の崩壊」の謎までこれで解けてしまうだなんて! まさしく目からウロコの一冊です。
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ポオの墓近くの沼のほとりに建つアシヤ邸の爆破事件で死亡したアシヤ兄妹。さらに、その近くの小屋で見つかった事件関係者二人の遺体。
ポオの著作『アッシャー家の崩壊』『ベレニス』『黒猫』に基づく連続見立て殺人で、探偵役は、事件記述者である警察官の友人の娘の更科丹希(ニッキ)。ニッキの探偵手法は、人のつながりや動機よりも、物証に重点を置いたデュパン流のもの。
爆破予告電話や、妹のダイイングメッセージ『ユーラルーム』、ポオの未発表手紙の行方、一時失踪した元使用人夫妻、失踪したその娘と恋人の行方、殺された仲買人の女の足取り等、複雑な要因が絡み合っていて、事件の構図はかなりややこしい。
ニッキはポオ研究家の教授の話を聴くことで、真相にたどり着いているが、正直必然的で唯一無二の真相とは言い難く、作品中で示されているデータだけで読者が真相を推理することは難しいとは感じる。
小屋の窓ガラスが壊されていたこと、ドアの錠が壊されていたこと、色々な場所の指紋が消されていたことなどから紡ぎだされるニッキの推理は鋭い。その推理から導き出される棺の移動に関する真相は、ポオの某作品の真相と密接な関わりがあり、なおかつ意表を突くものであり、とても面白く、感心した。
登場人物の間で交わされる会話は、アメリカ人らしいユーモアにあふれていて、読みやすい作品。
エピローグでは、作中に登場するポオ研究家の教授による『アッシャー家の崩壊』の解釈が示されていて、こちらも興味深い内容だ。
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東京創元社の2019年復刊書目。
元は『新本格』の第一世代がデビューする少し前に刊行された……と、考えると、時代的に、こういう正統派の『本格ミステリ』が刊行の機会を得られたのは珍しいのでは。
流石にこれだけ時間が経っていると、登場人物の口調や風俗に古さは否めないが、面白かった。
創元推理文庫からは他にも幾つか出ていたようだが、現在ではどれも入手困難のようだ。これをきっかけに他の本にも増刷がかかるといいな。
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本日の読書会覚書。
今月は課題書以外ミステリに手を出していなくて、しかも昨日夕方から課題書を読み始めるわやわやさ…。
もっと、こう、気を引き締めたいと思います。
つい、文字書いたり絵を描いたりするとそっちに比重が掛かりぱなしになってしまうので。
読み始めると乗るんですけれども。
そんな感じで一読しかしてなかったけれど臨んだ読書会でした。
ざっくり感想。
「きみはもう少し人間たちに関心を向けるべきだと思わないかい?人間関係、動機、陰謀、そんなものにさ」と言われた探偵役が
「デュパンは『モルグ街の殺人』でそんなことしなかったわ」って返す。
ココのやりとり、心拍上がるほど好き。
タイトルからの通り、ここで求められているのはホワイダニットではなく、ポオであること。
一貫してポオに捧げられ進む物語という宣言文みたいな返しにギュッと来る。
何故そうしたかではなく、実際の振る舞い、物証から立ち上がる可能性の範囲から理屈で詰めて浮き上がらせた現実を受け入れるというアプローチは、成程モルグ。
被害者がポオに心酔していたこと、それを厭うていた妹さえもその呪縛からは逃れられずに守りたい人を護る為に『ユーラルーム』と口にする。
実行犯は意図がなかったにもかかわらずポオの作品をなぞり、そして真実の糸口はポオの作品の中に。
『ユーラルーム』を最初私も物証と考えアナグラムの可能性を考えたけれど、確かに文中で探偵役が目を見開いたように、それは“詩“として読まねばならず、どこまでもポオの作品を味合わされながら引き摺り回す作品でした。
そういう意味で『だれもがポオを愛していた』というタイトルの解釈をして良いのだろうと思いながら読むエピローグ。
そこで信じられないものを目にして私はのたうつ羽目にwww
エピローグに作中作として乗せられた某教授の『アッシャー家の崩壊』に関するエッセイ。
十数ページにしか満たないエッセイ。
物語は全体で400ページ近くなんですが、その40分の1にもならないこのエッセイの濃密さよ。
そのアッシャー家に関する考察の深さに密度に、この論考を世に出すために逆算して『だれもがポオを愛していた』というミステリが書かれたのではと、私は勇み過ぎかと思いながらも確信していたりします。
むしろ、そうであって欲しいくらいの力強さを持った論考。
凄すぎた…!
そして、ここまで読んだ上で『だれもがポオを愛していた』というタイトルに至るべきだと。
だれよりも愛していたのは、翻弄された登場人物以上に、作者だったんだなぁと。
作者さんの他の作品は寡聞にして未読なのですが、勝手にそう思って胸打たれました。
そしてそして、何よりもう!って思ったのが、��月の課題書が『ポー作品集』だったのですが、その後今月『だれもがポオを愛していた』を選書なさる先輩方の用意周到さがもうすごい。
本当に、選書お任せしてひたすら先輩方のおすすめで引き摺り回して欲しすぎます。
良き先達は、です、うん。