紙の本
イイ話だけではないけれど、暖かい、懐かしいような感じ
2008/09/29 18:01
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YO-SHI - この投稿者のレビュー一覧を見る
副題の「常野物語」の「常野」とは、地名ではなくある一族の名前。一族の名前と言っても、全員が同じ姓をもつ血族ではなく、かつては共同体として生活していた人々の子孫たちだ。かれらを結び付ける共通点は、それぞれが常人にはない能力を持っていること。
ある家系は、目にしたもの読んだもの全てを記憶することができる、別の家系は、未来を見ることができる、また別の家系は、遠くで起きている事柄を聞くことができる...といった具合。
そして、本書は、今は全国に散って普通の人々の生活に馴染んで暮らしている、そういった特別な能力を持った人々の出来事を、様々な視点から綴った連作短編集だ。
正直に言えば、この本にはしてやられた。ある人から「暖かい、懐かしいような感じ」と聞いていたし、最初の作品がその特殊な能力を使って、理解し合えずに死に別れた父と子を結びつける、いわゆる「泣かせるイイ話」で実際泣けたので、「感動する態勢」(そんな態勢があるとすればだが)で読んだ。しかし、そんな思いはあっさりと裏切られてしまった。
2つ目、3つ目..と読み進めるうちに、どうも雲行きが怪しいことに気が付いた。「泣かせるイイ話」ばかりではない、それどころか相当ツライ話もあり、読み終わってあまりの救いのなさに呆然としてしまったこともあったぐらいだ。
そう、私のような特別ではない人間は特別な能力にあこがれ、そのような力があればさぞかし人生が楽しいだろうと思う。しかし、特別な能力であっても「他の人とは違う」ということは、周囲の悪意を買うこともあれば、自らを深く傷つけることさえある。
本書は、常野の人々の暮らしだけでなく、その苦悩や悲しい歴史をも生々しく描くことで、人間として幸せに前向きに生きることの尊さを際立たせているのだ。
たくさんの人に読んでもらいたい。「泣かせるイイ話」だと思って読んでいると、途中で読むのがつらくなるかもしれないが、それでも最後の1編まで通読してもらいたい。「暖かい、懐かしいような感じ」になれると思うので。
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あしにとって最高の一冊。何度読み返したことか。受け止め方や感じ方で読後感が違うと思います。ここから他の物語に派生したキャラもあり。ストーリーもさることながら底辺に流れる心情の豊かさや暖かさに感涙。恩田ワールドの基盤と勝手に決め付けたい(笑。まずはお試しアレ。
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不思議な能力を持つ人々が集って暮らしていたという東北の山奥にあったと言われる常野。
常野の一族を巡る オムニバス形式の連作短編集。
故あって常野を離ればらばらに普通の人たちに混じってひっそりと暮らすようになった彼らが 今再び常野に帰っていこうとしている。
[常野]という名の由来は 権力を持たず、群れず、常に在野の存在であれ。
という意味なのだとか。
穏やかで知的で 権力志向を持たず 争いを好まないず やさしい気配の常野の人々は これからこの世界を光で満たすために再びその地に帰っていこうとしているのだ。きっと。
不思議な力を持つ人が そこここに現われ 悲惨な場面もあるのだけれど 何故かやさしく守られているような安心感のうちに読み終えた。
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特殊能力を持った人たちが暮らしていたと言う常野。心のふるさと、安らぎを持ちたい人にお勧めの一冊です。
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恩田陸は結構面白いと思っていたんだけど、この短編集は少なくても失敗だと思う。一族の設定をうまく生かしきれていない。設定が壮大すぎて、手を広げすぎてしまったのではないか。でも作者が一番それを分かっている様なので、また次回期待しよう。
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膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。
【感想】
http://plaza.rakuten.co.jp/tarotadasuke/diary/200506110000/
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おもしろい!!読みやすい。ファンタジーなんだけど、人間の感情がリアルに感じられる。
(005.9.4読了)
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不思議な能力を持ちながら、ひっそりと生きる人々。その能力のために追われても、仲間とともに自分たちの帰るところ、常野を心に持ち、時をこえて現れる彼ら。心に残る一冊。
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常野の突出した能力をもった人たちの短編集。
読んだ物は全部覚えておける能力が、とてもうらやましいです。
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2009.11.23. ほっとした気持ちになりたくて、久しぶりに手に取る。恩田さんのイメージが凝縮されてつまってる。どの話も好き。読み終わっても、風景や感情がずうっと広がる。やっぱり「光の帝国」が、いいなあ。悲しいんだけど、ちゃんとみんな戻ってくるはずだって思えるから。
2006.01. 常野と呼ばれる超能力を持った優しい人々がいた・・・。短編集なのがもったいない、どの物語も想像力を逞しくさるもの。心あたたまる、やりきれなくて悲しくなる・・・。1冊で想像の羽が大きくなる。続編も出ているので、これからが楽しみ。
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ひっそりと普通に暮らしているが、実は様々な特殊能力を持つ常野の人々。
この作品は、彼らにまつわる短編集です。
一つ一つの物語は独立しているのですが、微妙に繋がっている。
なんとなく、広く世間に散らばり、普通の人々に紛れて暮らしてはいるけれど、根底に強い繋がりをもっている常野の人々の在り方とオーバーラップします。
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「常野」とよばれる不思議な一族を描いた短編集。
切なく、やさしい物語です。
以前読んだネバーランドよりもこちらのほうが私好みです。
「光の帝国」から「国道を降りて…」への流れがたまらなく好きです。
続きが読みたいな、と思える作品が多く、シリーズ化がとてもうれしいです。
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この本あたりから恩田さんの本をうまく消化できなくなってきた;
この話全体的には好きです。
常野に行ってみたい!と思ったし常野の人になりたいとかも思った。
けれど、やっぱり私の苦手とする内容があって未だ怖い。
短編集は数少ないけれど、これは結構オススメできるんじゃないかな。
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不思議な力をもつ常野一族に関する物語。短編10作で、それぞれの話が後で関わってくることもある。
いろいろな能力を悪いことに使おうとしない常野一族はすごいと思います。なのに、苦しんでいたりするところが読んでいて辛いです。特に<光の帝国>は悲しいです。
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不思議な能力を持つ「常野」の人達を描く短編集。どれもそれぞれ色が違うお話です。
読んだ人はそれぞれ自分のお気に入りの作品を見つけるのだろうな。