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紙の本
これぞ真骨頂、江戸の華
2004/07/10 16:17
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投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る
霊験お初捕り物控第2弾「天狗風」宮部みゆき。短編集「かまいたち」に収録されている短編「迷い鳩」、「騒ぐ刀」で初登場した岡っ引き六蔵の妹で超能力も持つ「お初」を主人公にした長編小説です。
商家の嫁入り目前の娘が神隠しで消息を絶ちます。南町奉行根岸肥前守の密命を受けたお初は神隠しの謎に挑みます。阿片の密売組織あり、誘拐犯あり、言葉を話す猫あり、謎は謎を呼び真相は深くなるばかり…。霊験お初って謳っているわけですから摩訶不思議な世界もあるわけですが、それも人間の心のなせるわざ、地道な捜査なくして解決しないのは捕物帖となんら変わるところはありません。まるで見てきたような錯覚にとらわれそうな江戸の町に、存在感あふれる登場人物たちが躍動しています。この臨場感こそが本書の命でもあります。現代にもつながる女性の怨念を取り払うものは超能力なんかじゃなく生きている人間の言葉なのです。昔も今も憎しみも怒りも悲しみも喜びも全て心の中にあり、幸せは心の中にしか作れないものなのです。
紙の本
続編に期待するその訳は…
2001/05/13 01:31
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投稿者:だいだい - この投稿者のレビュー一覧を見る
一膳飯屋の看板娘お初には、他人に見えないものが観えるという特殊な才能がある。お初は自らのその才能と向き合い、町奉行根岸肥前守や岡引である兄の後見の下、捕り物に関わり活躍する。この『かまいたち』『震える岩』から続く連作の設定はこんな風にまとめられる。
何がこのお初シリーズの魅力だろう。もちろん人の心の闇が物の怪として実体を持ち、それとお初が対決すること自体、スリリングである。わくわくする。また日常を生きるごく普通の人の心に潜む闇には、ぞくっとするようなリアリティがある。でも私はむしろ、特殊な才能をもありのまま自分として受け入れ、それに素直に向き合えるお初という女性のあり方に魅力を感じる。
勿論それだけじゃあない。お初が聴きにくい話をする前に「笑顔の練習」をする所や、今回の事件の重要な情報をくれるお美代が心配そうにいつまでも見送ってくれる所。右京之介のストレートな告白に戸惑う所。些細な人情の機微の可愛いらしさ、くすぐったさが何ともタマラナイのである。
宮部みゆき先生、三年、いや五年に一作でもよいので続きを書いて欲しいのです。お初と右京之介の若夫婦が読みたいのです。『ぼんくら』の美少年に学問をさせるのもよいですが、右京之介が学問と実社会との齟齬に悩む姿も読みたいのです。宜しくお願いいたします!
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シリーズの次回作が楽しみ
2001/04/24 06:36
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投稿者:みんみん - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうしてなのか理由が見つからないのですが、宮部みゆきの時代小説には、どことなく現代っぽいところが見え隠れする感じがします。しかしながら、ストーリーの語り口は確かで、474頁を最後まで飽きさせないで読ませてしまうところは、さすがです。
江戸言葉、地名、小道具などで時代感が出ているにもかかわず、会話が続くと現代っぽくなってしまうのは登場人物の思考過程が現代になっているからなのかもしれません。
「堪忍箱」でも所々に現れた様に、もののけを登場させたり、猫が巨大な将棋の駒に化けたりと、他の時代小説には無い場面には戸惑うこともあります。
それでも、最後まで読者を引っ張り続けます。事件の結果ではなく、事件解決の過程を読ませるところは、刑事コロンボにも似た面白さがあります。
シリーズ2作目ですが、1作目を読んでいなくても楽しめます。この「霊験お初捕物控シリーズ」が進むことで、登場人物のキャラクタが固まり、2作目の時点ではふわふわして掴み所のない人物も、しっかりと自分の役回りを固めることだろうと思います。
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