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紙の本

少年と少女と象の五十日以上に渡る旅の記録

2002/03/12 18:38

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かけだし読書レビュアー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 アメリカ東部ペンシルバニア州で叔母の世話になっていた少年タッドは、ひょんなことから象を連れて巡業をしていた一家と共に旅をすることになる。その後とある事件がきっかけで、象を手中に収めようとする貪欲な悪人達から追われる身に。タッドは幼い少女シッシ−と共に象を連れて、アメリカ東部のピッツバーグから中部のネブラスカ州を目指して、船や徒歩で五十日以上の長い旅をすることになる。

 ほんわかした表紙の絵とは裏腹に、内容の方はどっしりとした冒険物語。故郷の炭坑町マークルから一歩も外に出たことのない少年と、父の巡業に連れ添ってアメリカ各地を渡り歩いてきた勝ち気な少女シッシ−が、友情や信頼ではなく、主従関係となっているところがユニーク。シッシ−が命令をし、タッドがそれに従う。そこに少年の幼い頃のトラウマが絡んでいるあたり、なかなか深い。

 旅先で出会う人物もそれぞれ歴史的な背景を抱えているような人ばかり。西部に移住しようと船をこしらえながらも、家族をコレラで亡くした孤独な老人や、新聞広告に掲載された花嫁募集の文字を見て、ネブラスカへと向かうオールドミスの女性など、当時のアメリカ大陸に生きる人々の情熱と力強さが感じられる作品だ。

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