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1997年、NPO法制定の動きが進む中で出版された本。アメリカの4都市(サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ワシントン)と、ヨーロッパの5カ国(スウェーデン、デンマーク、オランダ、ドイツ、イギリス)の非営利組織への取材調査の結果をまとめた本。約700ページに及ぶ大作。
出版から、そしてNPO法制定から20年以上経ち、取材対象の各国・各地域の状況やそこで活動する非営利組織の実情も変わっているとは思うが、そもそもNPO法制定課程の中でどのような非営利の活動が行われることや、その上での地域コミュニティが期待されていたのだろうか、ということを考えられる。
本書の執筆はハウジングアンドコミュニティ財団によって行われているということで、主に住まいやまちづくりに関わる分野からの調査分析が行われている。
ポイントとなるのは資金調達の視点。欧州の国々は国ごとの際はあっても社会民主主義的というか、制度や仕組みとしてまちづくりを組み込むモデルとなっていて、資金調達の仕組みも端から織り込まれている。
一方でアメリカについては、活動の主体者たちがそれぞれに勝ち取るスタンス。活動の立ち上げ当初からビジネスとしての持続可能性を構築することは当たり前のことなんだろう。インターミディアリーと呼ばれるいわゆる中間支援組織も、ビジネスモデルの構築も含めたスキルトレーニングやコンサルティングを行う能力を発達させている。また、ビジネスセクターに対しても働きかけを行い、コミュニティの維持や価値向上のための姿勢の変化を強くもとめる姿勢が強い。いずれも、日本ではまだまだ弱い部分。
住民が地域や自分たちの住まいをどうしていきたいかという自己決定をしていくという姿勢があくまで基本。欧州各国の共同住宅を形だけ真似てもしょうがないが、現在の日本のマンション組合や、地域の自治会などが地域経営の視点を持っていくにはどうしたら良いか。地域経営・地域自治の機会の創出と専門性の獲得、資金調達含む支援体制いずれもまだまだ足りないが、NPO法制定課程のみんなが「これからだ」と思っていた頃と比べると、関係者にいまそれだけの課題意識と熱意はあるだろうか。
そう考えるとコロナ禍を機にこれからを本腰入れて考えざるを得ないタイミングというのはうまく使っていくことができるのかもしれない。