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今年も全日本じゃんけんトーナメントの季節がやってまいりました。ここ道楽ドームにお集まりいただいた7万人もの観客の皆様の前で、決勝トーナメント進出者1024人が覇を競います。本日この場所で決定する今年の『ジャンケン王』は、はたして誰か?この特別な一日を、最後までごゆるりとお楽しみください。それでは1回戦を始めましょう。……日本が誇る、史上最大のエンターテインメント・ショウ。第13回全日本じゃんけんトーナメントへようこそ!
〜主催者『L』あいさつより〜
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史上最大のエンターテイメントショウ『全日本ジャンケントーナメント』。最後の一人になるまでひたすらにじゃんけんで勝ち進むという単純明快な勝負だが、テレビ放映されるほどの大人気を有し、巨額の賭けの対象としても有名である。のべ3000万人の中から選ばれた1024人が集い、第13回決勝トーナメントに挑む。有名な大学教授、天才少年プログラマーから読心術師などなどそうそうたる顔ぶれが並ぶ中、地味な中学生である『木村彰一』は非常に困惑していた。今まで一度もじゃんけんで2連勝もしたことのない、自他共に認める凶運の持ち主の自分がなぜここに・・早く負けたい-そんの思いとは裏腹に彰一はトーナメントを勝ち進んでいく。
準優勝者には賞金が与えられ、優勝者には謎の主催者『L』との対面という名誉が与えられる『じゃんけんトーナメント』、はたしてじゃんけんキングに輝くのは誰なのか?
運も実力のうち・・と申しますが、そんな運によるところが大きいであろう『じゃんけん』がテーマです。オリンピックにはでれないけれど、これなら優勝も夢じゃない!そんな心理が働くかどうかは知らないですが絶大な人気となるのも分かるような・・
運に頼るのは当然として、統計をとる者から心を読む(?)者まで意外と奥が深いです。そんな中、なぜかアンラッキーのはずの彰一が勝ち進むわけなんですが・・彼、表の主人公なんですね。
というのも、この本仕掛けがありまして。
各章ごとに扉絵が白黒にわかれてましてほぼ交互に入っているのですが、順序通りに読むのではなく、白の章→黒の章といったぐあいに読むように進められます。そうすると物語がまた違った顔を見せると言う代物なんですが、まあこの仕掛けがあるという時点でおおよその予想がつくので、意味があったかなかったのか・・私的には順序どおり読んだ方がブラック的には面白かったかも・・なんてひねた見方をしてしまいましたが。仕掛けもですが、本文中にやたらと引かれている横線が、親切のつもりなんだろうけどうっとおしかったです。体裁に凝り過ぎて内容がついてこないというか、自己満足に走り過ぎてるというか。
ミステリー初心者さんだったら面白かったかもしれないけど。
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ふつうに面白かった!
一気に視界が拡がったところが個人的にツボ。
あとがきはどういう意味なんだろう?
今のタイミングで読むとあとがきの阪神の地震のことが興味深くもある。主題には少しも関係ないんだけれど。
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紋切り型・パターナリズムに満ち満ちた人間どうしの
非・実存的な世界においては
男女関係、友人関係、親子関係、その他もろもろの社会関係すべてが
どこかで見た光景の「再演」にすぎない
そんな中、かろうじて素の自分を垣間見れる場所があるとするなら
それは、シンプルな勝負事の世界だけだ
ギャンブルにのめり込む人たちがあとを立たないのは
そういう事情があってのことなのかもしれない
そのような世界にあって真に強者と呼ぶべきは
ギャンブルの構造を本質まで把握し、裏から操作できる胴元…
ゲームマスターをおいて他にないだろう
「エル」はゲームマスターと、それに踊らされる人々の物語である
いけすかない話である
しかし98年の発表当時には
風刺として、ある程度の説得力を持っていたかもしれない
後に乱発されるデスゲーム小説の草分けとも言える
(あとがきでは福本伸行「カイジ」にも言及している)
また、デビュー当初「人間が書けてない」として
ずいぶん批判を受けたという作者だが
しかしこの作品においては
人間の書けてなさがプラスに働いているようにも思える