紙の本
ゆっくりと読みましょう
2004/05/23 09:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
メアリ・シェリーにコナン・ドイル、間宮林蔵、杉田玄白など歴史上の実在の人物たち、さらにはシャーロック・ホームズ、フランケンシュタインの怪物など想像上の人物たちによって語られるさまざまなエピソード。何のつながりも持たない人々の、まるでバラバラに見えたこれらの挿話が実は根本でつながっていることに気付いたとき、現実とフィクションとが奇妙に混在した世界で、人類の存亡を賭けた神と悪魔、光と闇の戦いが見えてくる。質量ともに長大で壮大なスケールのSFです。
あっちに飛びこっちに飛びの話、SF特有のカタカナ語や科学の専門用語がこれでもかとばかりに並べられ、読みにくく理解しにくいところもありましたが、果たして無事に終わらせることができるのかと心配になるほど大きく複雑になって絡み合っていく個々のエピソードを見事に一つにまとめ上がっていくあたりはさすが、読んでいて鳥肌がたつほどゾクゾクします。
著者のSFの代表作と成りうる、腰を落ち着けてジックリゆっくりと読みたい1冊です。
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山田先生自身「失敗作です」と言っていたように、後半は話がどうでもよくなっていく。が、前半は意欲的で発想の飛躍もノリが良く、傑作を予感させる出来だった。その前半だけでも保存物だと思う。
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既存のフィクションの登場人物まで登場し改変する世界を舞台に、”物語”という根源的なテーマについて書いた大作。
個人的に『屍者の帝国』を思い出す要素が多くて比べたりした。
前半、この先何が起こるか予測できない展開にはとても引き込まれる。フランケンシュタインの怪物が、エリザベス殺害の真相究明をホームズに依頼するとこなどは最高に楽しい(推理もちゃんとある)。
物語そのものが現実を改変する力を持ってしまったのに、”ほんとう”の物語はなくなり、あらゆる物語が飽和し凡庸化する。そして現実もまた同様に。作者の分身を思わせるような、ある衰退したジャンルの作家も登場。××作家のディストピアといった体。
いろんな角度から物語をめぐって思索をしていき、最終的には”究極の物語”をめぐる壮大な話へ。
ただなんだかいつの間にか物語も終わってしまい、『エイダ』という物語自体にカタルシスを覚えることはできなかった。
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いろいろな世界・物語が独立して
動いているような序盤は「どう結びつくのだろう」
と面白いのだが、その答えを明かす?終盤は、
とてもわかりにくく爽快感に欠ける。
奥様の感想そのもの。
あまり説明・解説されても興ざめだろうが
「もう少し」という気になってしかたない。
とはいえ、これ以上厚くなったら私も含めて
この世界から脱落する人が増えるだけかもしれないけど。
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『フランケンシュタイン』を物したメアリ・シェリー。その実娘の名を冠した未曾有の量子コンピューターを主軸に、〈物語〉が〈現実〉を侵食し、ゾロアスター教神話と最新宇宙論がリンクして壮大な光と闇の闘争へと展開していく……のだが、いかんせん消化不良の感は否めず。雑誌連載による制約もあったのだろうけど、当時の知見や古今東西の著名人らをフル動員しての熱量には目を瞠るものがあるので、これらの設定をもっとストーリーに落とし込んで丹念に描いていけば、『百億の昼と千億の夜』クラスの傑作になったような気も。
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フランケンシュタインの怪物を生んだあの夜のことを取り上げた小説といえば、
”石の夢”を思わせるが、それに、ドイルはでるわ、玄白は出るは、
量子コンピュータは出るは・・・・
贅沢だ。