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この作品は賢明で、気が利いていて、優しさに富み、皮肉なユーモアと精妙な観察力の遺憾なく発揮された傑作である。19世紀英国が誇る女流作家ジェーン・オースティン後期代表作。
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個人的にすごく好きな作品。
ファニーはPride and Prejudiceのエリザベスのように華やかな主人公ではないものの、その姿に共感させられるところが多かったです。
また様々な人たちの関わり方、生き方、暮らし方などなど、当時の雰囲気がよく分かる要素が詰まっていて、それも魅力の一つです。
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人がどれほどうつろいやすかということ、そしてうつろいやすさの絶対的な要素としての《時間》の強大さというものがほぼ登場人物全員とプロットに底流している。うつろいやすくないのは常に価値判断を見誤らないように努力して生き続ける主人公のファニー・プライスだけだ。
貧乏な生家から裕福な母の姉妹の家であるマンスフィールド・パークのバートラム家に幼少の時にひきとられ、最初はバートラム家の人たちにまともに相手をしてもらえず、何かにつけ正式な家族のメンバーとしては扱われることはなかったが、最後にはバートラム夫妻に存在の重要性を認められるばかりか、「うつろいやすさ」でバートラム家を破綻に導く実の娘たちよりも、「本当の娘」として歓迎され、次男の結婚するという話は一見、善が勝つという勧善懲悪のストーリーのようだがそうではない。そうでなくしているのは、各登場人物のもつリアリティと厚み、作者の物語および人物に対する距離の置き方なのだと思う。
ファニー以外のすべての登場人物はその欠点を露わにするように描かれている一方で、それらの欠点は悪としてではなく、人間らしさとして提示されている。友人がオースティンの小説は登場人物は欠点ゆえに魅力的だといっていたのはこのことだろう。例外はミセス・ノリスでこれほど卑しい人物の例は文学上、そうそうないのではと思わされるぐらいだが、彼女のずうずうしさは物語りにユーモアというスパイスを加えている。バートラム家の人たちのファニーの捕らえ方は物語の進行とともに変化するのだが、ミセス・ノリスだけが最後の最後までファニーを嫌い、その嫌い方が断然、面白い。
奥ゆかしさ、徹底した他人への思いやりと思慮深さ、信念の強さといった美徳を兼ね備えたファニーはある意味、そうした美徳ゆえに一番リアリティに欠ける人物ともいえるのだが、この小説は読者が主人公に感情移入するように意図して書かれていたものではないので、読書上の欠陥やずれにはならない。
ではファニー・プライスは何かということになるが、台風の目のようでもあり、リトマス試験紙のようでもあり、真空のようでもある。この小説の不気味さはこのへんにあるような気がする。この不気味さの正体を知りたいから、もう一度読みたいのかもしれない。
イギリスを舞台に、191年前に書かれた小説だが、どこか知らない国の知らない時代の話ではなく、ファニーの「性格」といい、愛よりも資産や社会的地位の維持、もしくは向上のためになされる結婚とその弊害は今の日本人にも親近感をもって読める。191年たっても人は同じ愚行を繰り返しているのか、とオースティンは嘆くだろうか。それとも技術革新が起きて、政治、社会は変化しても、人の心理だけは普遍/不変ということなのだろうか
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いつもの善良で知的な主人公が周囲のはた迷惑な人々に翻弄されたり、傍観したりして、やがて理想の伴侶と結婚するという経緯を巧みな人物造詣で読ませるのですけど今回は途中でまどろっこしくなってきて、すっ飛ばしたくなる気持を抑えるのが大変でした。
登場人物達の行動やセリフとかがくどいくらい長いので、もういいか、ってな気持になるのでした。
19世紀初頭の話であっても、今とさしたる違いはないとわかる。
やはりオースティンは結婚と家族がある限り、読まずにはいられないのだと思う。
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漢字が読みにくいものもあったけど、ファニーがとても魅力的で応援したくなる人物だった。心が繊細で的確な判断ができるけど、立場をわきまえて大人しい。映像があればぜひ見てみたい。