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紙の本
いのちの輝き
2007/06/04 15:42
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:考える木 - この投稿者のレビュー一覧を見る
写真家は、自らの内から湧き出る想い、メッセージをその作品に込める。
しかし、星野道夫の写真は、そんな作家の意匠などとうに超越している。
彼の写真は、シャッターが切られた、まさにその一瞬一瞬を生きる生命そのものを写し出す。
それは、ホッキョクグマなどの生態を撮ったものはもとより、エスキモーたちの手によって解体されていく鯨の写真にさえ感じることができる。解体され滅んでいく肉体を離れようとする鯨の生命、そしてその生命を飲み込もうとしているエスキモーたちの生命……。厳しい北の大地で、繋がり息吹く生命の環が感じられる1枚だ。
生命の輝きを伝えようという意図は、おそらく星野自身にはなかっただろう。
おそらく彼は、太古からの気の遠くなるような時間の流れに想いを馳せ、ゆっくりとした種のうつろいを交えながらも繰り返されてきた、生命の営みを覗き見る歓びにシャッターを切ったのではないだろうか。北極圏に生きるあらゆる生き物と同じ時間を共有し、同じ空気を吸いながら、その場所で共存できることの歓びが、写真からは伝わってくる。
結局、星野の写真は、彼自身の生命のほとばしりなのだろう。
彼は、自分の生命が震え、感動するままに記録したに過ぎない。
しかし、そこに撮られたものは、何よりも被写体の、そして、星野自身の生命の輝きを伝える。
わたしたちにとって大切なことは、想像することなのだろう。
わたしたちの周りの文明社会とはいっさい関わりのないところで、別の世界が幾つも広がり、息づいているということを。
そうすることで、ともすれば息が詰りそうな自らの生が、開けていくような気がする。
そして、それが、シベリアで果てた星野道夫という、洞察に満ち、それでいて無垢な生命の輝きを繋いでいくことになるのだと思う。
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