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紙の本
悪意、あるいは祈り
2004/11/09 18:33
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tabineko - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほぼ1年間ずっと旅を続けたことがありました。自分が現在どこにいるのかすらわからなくなるような、気まぐれな旅でした。
そのとき連れていったのはたった一冊。「マルドロールの歌」の文庫本(栗田訳)だけでした。なにかを憎んでいたのでしょうか。そして、すべてのものにたいして悪意を抱いていたのでしょうか。
「神よ、願わくば…」ではじまる印象的な最初の一行を読みながら、ぼくはどんな眼を周囲に向けていたのでしょう。列車の片隅の影となって黒いオーラをまき散らしていたのでしょうか。いまとなってはもうわかりません。
この本は、悪意の書でもあり、祈りの書でもあります。ひたすら読み続けることによってますます悪意に染まっていくかもしれません。逆に浄化されてしまうかもしれません。どちらに転ぶかは…
いや、おそらく常に浄化されていくのでしょう。祈りの書なのです。
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