紙の本
壮大な物語のはじまり
2002/02/18 18:50
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かけだし読書レビュアー - この投稿者のレビュー一覧を見る
はるか太古の昔。人々は山にも川にも獣たちにも神が宿ると考えて、月神の支配する森の恵みを受けて暮らしていた。あるとき海の向こうから異なった言葉を話し、人を殺める武器を携えた人々が現れた。ヒメカという日の神の巫女に従う彼らは土地を囲ってクニと称し、ムラへの攻撃を開始した。ムラの若き長アルテイと、半人半神の月神の巫女シクイルケは、傷ついた体でヒメカのクニを逃れてさすらう旅の途中、翡翠色の目をもつ少年ポイシュマと運命的な出会いをするのだったが……。
古代日本を舞台にしたたつみやファンタジー四部作の第一弾。不思議な力を持つ巫女シクイルケや実直なアルテイに加え、不思議な運命を背負うポイシュマ、そしてヒメカのクニの少年でありながらシクイルケに命を救われたワカヒコなど、様々な人の想いが交錯して織り成される物語は重厚で、深い味わいがある。特にポイシュマと父のエピソードは感動的だった。これから先運命に翻弄されることになりそうな二人の少年、ポイシュマとワカヒコの先行きが気になる。物語に添えられた東逸子のイラストも素晴らしい。
紙の本
縄文時代から現代に語りかける物語
2009/07/28 16:23
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YO-SHI - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学校の図書館にもある小学生向きの本。でも、子供向けの本でも大人が読んで面白い場合が2つある。1つは子どもに頃に戻ったように楽しめるもの、もう1つは大人なりの読み方で考えさせられるもの。本書はその両方だが、どちらかと言えば後者の比重が大きい。
舞台は縄文時代のムラ。弥生文化に接触する時代のことらしい。彼らは、月や太陽を神と崇め、川にも木にも動物にも、家の戸口にまでカムイという神的な存在を感じ、お願いをしたり感謝したりして暮らしている。時にはその姿を目にしたり、その声を聞いたりすることもある。
そして、彼らが暮らしていた土地に、海を越えて言葉も服装も習慣も違う「ヒメカの民」が移り住む。月と太陽は神として崇めているが、自然には敬意を払わない。山菜を根こそぎ採ってしまうし、魚も動物も一網打尽という具合。やがて衝突が起きる、これが物語の発端。
その後、それぞれの部族の少年である、ポイシュマとワカヒコを中心にして、物語は展開していく。少年ながら背負ったものがあって泣かせるシーンや、部族同士の抗争にハラハラするところもあって、この辺りが「楽しめる」部分。
「考えさせられる部分」は..。1つは、川や木や動物に神的なものを感じて見る、ということが、縄文の人々にはできて私たちにはできなくなっているのではないか?ということ。深海の生物の目が退化するように。
もう1つは文明について。「ヒメカの民」は土地を囲いイネを育てて暮らす。狩りや採集による暮らしと比べれば安定しているし、文明が1段階進んだと言える。そして、その段階を何段も進んだ先にあるのが私たちの社会。本書の限りでは「ヒメカの民」は無礼で知恵の足りない悪役だ。だとすればその先にある私たちは...?
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日本の縄文時代から弥生時代を舞台にした古代ファンタジー。自然や神を敬う人々が、魅力的に描かれている素敵な作品。
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たつみや作品のシリーズもの第1巻。神話をモチーフにしたおはなしが好きなのか、これまた日本神話が絡んできます。そういうのが好きなあたしにはたまらん。次の作品がでるのをこころまちにして読んでいた本ですね〜。でもなかなか次巻がでないもんだから、出たころには前巻の内容忘れてるんだよね(笑)一気に読むのがオススメ。
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学生のころ貪り読んだ本。ハードカバーなのに全部集めたというはまりっぷり。後日作者が他のPNでホモ小説を書いていると知って、新しい世界に衝撃を受けた覚えがあります。
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東逸子さんの絵も世界観を広げてくれる。
アテルイとポイシュマの変化して行く間柄も好ましく。
アテルイが理想とされる人間像を持ち得ているかのように見えながらも、それはシクイルケと言う一点によって危うく均衡を保っていた完全さである事を描く一場面が流石にたつみや章だなと思う。
不完全さ未熟さを露わにして閉じるアテルイの世界を開く契機が、未成熟なポイシュマの感情の発露。
そのポイシュマの感情を引き摺り出したのは、ワカヒコの受けとめる心であると言う点であるのが上手い。
ポイシュマは自責から逃れる為にワカヒコを憎もうとしていた自分自身に気付き、そのなすりつけの憎悪だと分かった上でポイシュマの感情を引き受け死のうとするワカヒコの意志を知り、本当に自分が抱いていた感情は憎しみでは無く不甲斐なさ、そしてさらにその奥には悲しみがあったのだと言う事を掻き分け捜し出した場面はまさにポイシュマ自身を見つけ出し自分と他者との存在の中でこそ成長して行ける可能性を見せてくれている。
人との間でひとつ乗り越えたポイシュマが本当にしたかった事。
悲しみを悲しみとして受け止める事を認めた時に、それを見たアテルイまでもが自身の殻に閉じこもっていた事に気づき、ポイシュマに対して世界を開く。
お互いに補完し成長して行く数珠つなぎのような人々の関係性が、まさにこのあと数冊続いて行く縄文と弥生と言う、この物語の中では相入れないものとして描かれて行く人々の対立を融和させてゆく可能性を見せていると感じる。
縄文と弥生の端境期を描く新たな神話。
たつみや章、おすすめすぎる…!!!
たつみや章 1998 『月神の統べる森で 』 講談社
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図書館で発見したので、再読。この人の自然に対する考え方には深く共感できるし、それに基づいた設定もすごく良いんだけど、それを筋道立てた物語にするのが下手なんだなぁ。キャラがいろいろと勿体無い。その辺りが、荻原規子や上橋菜穂子あたりとの決定的な差だと思う。
でもこの絵と設定は好きなので、続きも追っていこうかな。表紙のシクイルケ美麗。
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月神の民シリーズ第一弾。時代は縄文と弥生の混在する頃。月神の巫人であるシクイルケと狩猟を主とするムラの長アルテイが、日神の妻(巫女)であるヒメカが治める農耕を主とするクニを訪れたところから物語りは始まる。文化そして考え方の違いによっておこる諍いが丁寧に書かれています。すべて自然の中には神がいる…それらを敬い感謝して生きる日々。自然の描写が美しいと思います。
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FTというか正確には児童文学かな。縄文から弥生への過渡期、対立する二つの社会。そこに現れた一人の少年の物語。
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神様系のお話が好きで、このシリーズは全部読みました。今の世の中でも、神様というかモノに宿る気持ち…みたいなのを大切にしていけたらと思います。絵も素晴らしく綺麗です。
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これも図書館司書さんからの紹介。
あまりファンタジーが得意じゃなかった僕。でもシリーズを全て読破!
たつみや章さんの講演会まで行きました!
現在の教育・育児のあり方に対して凄く熱く語ってくれました!
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わたしがファンタジーものでこんなにも夢中に読み貪った作品はないと思う。世界観が大好きで、何度も読んでいます。この分厚い感じをなくすのはもったいないのかもしれないけれど持ち歩いていつでも読みたいので文庫化してほしいかも。両方とも買うと思いますが^^
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シリーズ第一作。山や川で漁をし、月神を崇めていたシクイルケやアテイルたちのムラを、海の向こうからやって来て、稲を作り暮らし日の神を崇めるヒメカたちが襲ってきた。命からがら逃れたシクイルケとアテルイはカムイの導きによって森に逃げ、そこで翡翠の目に一房だけ銀色の髪のまざった少年ポイシュマと出会う。
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縄文から弥生が舞台の古代日本ファンタジー。日本のアニミズム精神が浸透している時代の話です。古代日本好きなら外せないシリーズ。
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月神シリーズの1。
たつみやさんの書くお話の中には神様が出てくるのですが、このシリーズはガッツリはまりました。