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2012.2.1読了。
クリスマス前に2人の少女が誘拐され、一人がすぐに殺され、もう一人も殺される事件が小さな街で繰り返し起こっていた。一卵性の双子の妹をそれに寄ってなくした刑事のルージュは、そのようにして拐われたグウェンとサディーを見つけ出そうと心理学者のアリと捜索をするが…という話。
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事前に「少女誘拐もの」というキーワードのみ知っていたので、読むのに少し勇気がいった。少女達が酷い目に遭う描写があるのではないかと思っていたからだ。また邦題の「還る」という言葉に何となく不穏なものを感じたせいもある。
結論から言うと、それらは全くの杞憂だった。勿論誘拐された少女達がどうなるんだろうと読みながら常にはらはらしてはいたし、過去の事件の絡みなどもあって陰鬱な気持ちになる部分もある。だが終わってみると、私が恐れるほどの残虐描写はなく、ほっとした。事件が事件なのでゼロというわけではないが、その際も事実だけをさらっと書くに留まっていた。
不満点を挙げるなら、描いている主題に対して、登場人物が多すぎることとエピソードが過多なこと。出てくる人物の中で名前が必要なのは限られているし、途中で出てくるペテン師になんて名前を与える必要はなかったと思う。犯人をぼかすための作戦かもしれないが、その場合あまり成功しているとは思えない。
また、登場人物それぞれを描こうとした結果だと思うが、エピソードの多さで冗長になり、全体的に印象が散漫になっているのが残念。もう少し焦点を絞り込めばページも少なくなったんじゃないだろうか。
そんな不満を感じつつも、先が気になって600P超を一気読みした。
これをミステリとして読むと、ラストについては賛否あるだろうなと思う。ただこの作品は「ミステリ」というよりも、危機に対して果敢に立ち向かう少女達の友情の物語なのだろう。
読み始めた当初、この物語の主人公はルージュなのだと思っていた。自らの半身である双子の妹を誘拐事件で亡くし、心を閉ざして誰とも馴れ合わなくなった孤独な美貌の青年。実家は元資産家で、非常に優秀な才能を持つが、敢えてその能力を無駄にする生き方をしている。少女漫画のような嫌味すれすれの背景設定を見れば、どう考えても彼が主人公だと思ってしまう。
しか彼はあくまで主人公「達」の一人だった。読み進むにつれ彼の印象は薄くなっていき、それに反比例するように作中の女性達が強烈な存在感を示していった。
ルージュの母、グウェンの母、サディーの母、アリ、グウェン。
そして何よりサディー。
さらわれた二人の少女のうちの一人、サディー・グリーン。
最初第三者の言葉を通じて描かれるサディーの姿にはあまり好感が持てなかった。特に彼女の部屋の描写には正直ひいた。
でも彼女を知る人々は口をそろえて言う。「あの子に会ったらあの子を愛さずにはいられない」。娘への悪影響を恐れてサディーとの交際を禁じたグウェンの父さえも。ページを繰って物語の途中でサディーに「出会った」時、私はその言葉に納得した。
明るくて勇敢で賢く、何より友情に篤い少女。
陰鬱な空気漂う前半部分を読み進めた後だっただけに、その存在は眩しく映った。グウェンだけでなく読者である私も、彼女の存在に随分気を楽にしてもらったように思う。
気弱になりがちなグウェンを励まし、一緒に脱出の道を探るよう導くサディー。どんどん惹きつけられていく自分を感じながら、サディーの母の言葉を思い出していた。確かに、彼女と「出会った」ら愛さずにいられない。
だから、あのエピローグには言葉を失った。
読後すぐは驚きの方が強かったが、時間を置いてこの感想を書いている今、やるせなさと悲しみで胸がいっぱいになっている。サディーは本当に、勇敢で友情に篤い、最高に魅力的な少女だ。
結末まで読むとタイトルの意味が分かると言われているが確かに。原題よりも好きだ。
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少女たちの救済と贖罪――そして奇蹟。
ミステリを超えた、衝撃と感動の物語(ミステリ)。
正直なところ、話の流れを完全に理解できていないため、再読が必要だ。
ただエピローグで明かされるある事実を念頭に置いてみれば、また違った景色が見れるのかもしれない。
蛇足のエピソードと登場人物が多すぎる。
ミステリ:☆☆☆☆
ストーリー:☆☆☆☆
人物:☆☆☆
読みやすさ:☆☆
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長い上に、そろそろトシなのか、翻訳物は登場人物とその役割が
なかなか頭に入らなくなってきていて、
読みながら何度も最初のページの紹介一覧を見返しました。
でも、今は警察官となっている双子の妹を亡くしたルージュや
ちょこちょこと顔を出し入れする(笑)さまざまな人たちにも興味惹かれ、
また当然ながら、誘拐された少女たちの運命がどうなるのか
興味津々で読み進みました。
最後、こういう終わり方をするのか?というか
こういうエンディングはあり?というか、
うーん、予想もしない終わり方で非常に余韻が残りました。
★4,7という感じで、★5にしました。
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良質のサスペンスとしてグイグイ読ませる筆致もさることながら、この本の真価はサスペンス以外の部分にある。ネタバレになるので詳しくは書かないが、一言で言うと人間の心が生みだす奇跡。ラストについては賛否両論あるみたいだが、僕はこれがベストだと思う。ほとんどの読者は、僕と同じように、しばらく何が起きたかわからず、それと気付いた時には形容しがたい感動?感傷?がこみ上げてくるだろう。
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確かに、最後の最後には驚いた。こういう意味だったのか、全てがここにつながるのか、と思い、その剛腕な繊細ぶりに大いに感心した。
しかし、それまでが長く感じられてしょうがなく、読むのが苦痛だった。
作者が特定のキャラクターにばかり肩入れをしているように思えて、どうにもストーリーがうまく受け入れられない。登場人物が多い上、エピソードも過剰でごてごてしている。ストーリーの展開が頭に入ってこず、混乱した。ミステリーとしてはかなりわかりにくいと思う。
この本を読んだ感想は、サディーとその母親の造形、これに尽きる。そこに全てを注ぎ込み、書ききった作者のエネルギーはすごいと思う。
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図書館で借りたら、だいぶ読み込まれていて驚き。10年以上前に出た本だから、という理由もあろうが、それだけ多くの人に読まれた証拠だろう。
正月休みに分厚いミステリがどうしても読みたかった私にはぴったりだった。
小さな町の仲良し少女2人が姿を消す。15年前に同じ手口で妹を亡くしている警官が捜査にあたる物語。大勢の人物、複雑な伏線。サイコ的要素が多い犯人の正体は、ありきたりといえばありきたり。だけど、作者が本当に描きたかったのは犯人はだれだ!ってことじゃないのが分かるので、よしとする。
娘たちを探すそれぞれの親の姿に涙涙…。
原題『囮の子』もいいけれど、邦題もうまい!
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最初に読んだ時、サディーの母親が「あの子は誰からも好かれる」て訴えてるところは「このバカ親が」とせせら笑ったけど、最後まで読んでもう一度読み直した時には「ああ、本当に」と深く同意し、そしてせつなくなった。
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ようやく読了。
誘拐され、必死で脱出しようとする少女2人と、行方を懸命に追う刑事。 海外物の訳本で、さらに登場人物が多いということもあり、かなり読み辛い部分はありましたが、それにしても、エピローグでの驚きが凄かった。
そして切なかった。
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こういう終わり方にしたのか~!と本当、びっくりものでした。私は感動した組!。
この結末は賛否両論でしょうね。
いや、でもいいよん。だって・・・クリスマスだもん(謎&笑)。
最初は犯人は誰?主人公の刑事ルージュの双子の妹を殺した犯人と同人物?などなどミステリ要素の方が強く読み進めていましたが、途中からは少女たちの脱出劇の方が心配になっちゃって、もうハラハラドキドキ。
二人の少女は性格も全然違うし、1人の子はとっても面白いキャラクターをしているんです。おまけにルージュの妹の事件のこと、ルージュの前に現れた顔に傷のある謎の女。誘拐された少女たちの親のこと。更に破産寸前のルージュの家の問題などなどいろいろな要素が絡まりあい、本自体は結構厚いのですが嫌になることはないです。
オコンネルの作品にはキャシー・マロリー巡査部長を主人公にしたシリーズもありますが、私はマロリーがあまり好きではないので、もっとこういう作品を書いて欲しいなぁ~とせつに願う次第です。
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やっぱ今んとこ、コレが一番好きかもしれんなぁ。
久々に読んでそう思った。
初めて読んだ時の衝撃は今でも残ってます。
普通のミステリとしても、
魅力的なキャラクターをいっぱい登場させ、
それで犯人を最後まで隠し
分析官アリの傷のなぞとかも見事に解決。
警察官ルージュと、目撃者の少年デイヴィッドの
打ち解けるまでのやり取りもイイ。
で、囚われのグウェン、サディーも、
必死で脱出のチャンスを探るのです。
サディーのキャラがこの作品の最大の魅力ですが
ホラー映画マニアで人を驚かせるのが趣味。
知識と経験で犯人に立ち向かおうとするの。
この二人のやり取りも大好き。
「これでも一生懸命やっているの」
「あたしにあんたを置いていけるわけがないでしょう?」
一生モノの友達なんだな、と感動します。
そう、エピローグまでは、とてもいいミステリです。
ここまででも星4つはあげちゃう。
エピローグは、もうどんな反応をしていいかも分からない。
エピローグで真相が逆転する小説もあるけど
これはそういうのとは全く違う。
何ていうかな、
それまでの出来のよいミステリ、っていう雰囲気を
根底から覆し、昇華させるのです。
言えないのがほんと辛い。
でもこのエピローグがあることで
星はさらに1つ半位あげてしまいそう。
なので、星5つじゃ足りないの。それほど好き。
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かなり前に読了。
海外小説はなかなか感情移入しづらいものが多いけど、この作品は感性にピタリと合った。
何よりも複数いる主人公格のキャラクターたちが魅力的で、彼らの複雑な心情が手に取るように分かる。
女流作家だからか、根底に作品やキャラクターに対する愛情と誠実さが感じられ好感を持った。(やや叙情的とも言えるかもしれない)
物語自体はさほど目新しいものではないが、それでも犯人と対峙するシーンは夢中で引き込まれた。
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クリスマス間近に誘拐された少女2人。
その土地では何人もの女の子達が誘拐されて被害にあっています。
外国の物語はやはり登場人物の名前を覚えるのに手こずってしまう。。
物語に馴染むまで少し時間がかかってしまいます。
だけど、それを差し引いても面白い!
かなり入り込んで読んでしまった。
2人の女の子がどうにもキュートで。
更に賢い子たちなのです。
終わり方は賛否両論ありそうですが、私は好きですね。
登場人物、脇役がいないと言っていい程に
魅力的な人たちばかりです。
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舞台はニューヨーク州メイカーズヴィレッジという静かな田舎町。天才的な子供を集めている学校、性別の違う一卵性双生児の兄弟、女児二人一組を誘拐殺害事件、毎回時期はクリスマス、というおもしろそうな気になる要素がちりばめられている。600頁は長いが、たくみな構成と内容が長さを感じさせない。少女二人の絆に感動し、15年前の真相に驚き、結末に完敗した。すばらしいミステリーを読めた。
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アマゾンのレビューを見てしまったので、読む前からオチは何となくわかってしまった。それにも関わらずラストでは「そんな!」と思わず叫びたくなった。
並の小説ならば、ただの凡作で終わるであろうこの結末。それがこの作品では、これ以上ない、というほどに成功している。
とにかく、サディーのキャラクター造形が素晴らしい。それがすべて。