紙の本
大学の教材で使いました
2018/05/27 04:22
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投稿者:円 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西洋美術史を学んでいるとき、フェルメールを深く考察している本として大学教授に紹介されました。それまではカラヴァッジョやラ・トゥールに興味が向いていた自分が、一気に興味がなかったフランドル絵画に惹かれたきっかけになった本です。フェルメール当人の経歴、作風の特徴や制作の仕方の考察、当時のフランドル地方の芸術環境、当時のフェルメールの社会的な立場など、深く考察されており、一人の芸術家を深く研究している方の本です。これを読むと、世間一般の入門向け美術の本が物足りなく感じられます。お勧めです。
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オランダの黄金時代。
歴史のいたずらに翻弄されつづけたフェルメール作品の魅力を
わかりやすく、生き生きと語る気鋭の野心作!
手書きPOPより抜粋
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絵画鑑賞をちょっと齧った程度の当方にはなかなか理解困難な本。だがフェルメールという作品数が圧倒的に少ない天才の作品に対する真摯な取り組みには感心しきり。
最近上野の某美術館にてこっそりと、しかし誇らしげにattributionが展示され、それを某有名人が狂喜乱舞の体で観賞記を世に公表しとりましたが、この本を読むと何だか苦々しい感じを否定できないというのが本音ですかな。
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フェルメールの生涯や、同時代の画家たちとのかかわり、そしてファン・メーヘレン贋作事件にいたるフェルメール受容史などを、わかりやすく説明している本です。
フェルメールの描く静謐な空間や、息遣いまでも伝わってきそうな女性たちの姿などは、多くの鑑賞者たちの心に深い感銘をあたえます。しかし著者は、そうしたフェルメールの作品の魅力を認めつつも、「いま美術史家である筆者がフェルメールをめぐってなすべきことは、世に多くいるであろう「優れた鑑賞者」たちに向けて、作品を多角的にみるための材料をできる限り広範囲に、しかも適切、正確に提供することに尽きるのではないか」と述べて、あくまで実証的な立場からの紹介に努めています。
大著『フェルメール論―神話解体の試み』(2008年増補改訂版、八坂書房)を刊行している著者のこうした抑制は好ましいものだと感じますが、フェルメール受容史における「神話」の形成についても、もうすこし立ち入って紹介してほしかったようにも思います。
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「フェルメールの世界」小林頼子著、NHKブックス、1999.10.30
278p ¥1,218 C1371 (2019.02.16読了)(2016.09.16購入)(2000.07.10/5刷)
副題「17世紀オランダ風俗画家の軌跡」
【目次】
はじめに
第一章 フェルメールの生涯
第二章 若きデルフト画家の歩み
第三章 飽くなき洗練と絶え間なき自己変革
第四章 単身像の風俗画を読む
第五章 女の居場所―風俗画が語る社会史
第六章 失われし画家を求めて―フェルメール忘却神話の真相
第七章 ファン・メーヘレン贋作事件―新たなる研究への転換点
第八章 真作と非真作―揺れ続ける鑑定
おわりに
注
主要参考文献一覧
あとがき
☆関連図書(既読)
「フェルメール」黒江光彦著、新潮美術文庫、1975.04.25
「盗まれたフェルメール」朽木ゆり子著、新潮選書、2000.03.30
「フェルメール光の王国」福岡伸一著、木楽舎、2011.08.01
「フェルメール静けさの謎を解く」藤田令伊著、集英社新書、2011.12.21
(「BOOK」データベースより)amazon
17世紀のオランダは市民社会の勃興期。時代の変化を敏感に嗅ぎ取り、時代の懐深く分け入ったフェルメールは、常に自己を模索しながら、主題の選択や人物配置、空間構成、光や質感の描写に独創的な才能を発揮し、静寂に支配された光と陰が綾なす傑作の数々を物していった。謎の天才画家といった神話に惑わされることなく、17世紀に生きた画家の素顔を浮かび上がらせ、歴史のいたずらに奔弄されつづけたフェルメール作品の魅力をわかりやすく、生き生きと語る気鋭の野心作。
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フェルメールの生涯と作品を概観しながらオランダの風俗を眺める。
フェルメールの作品の何がスゴイのか、というのは読んだ後も不思議と曖昧である。思うに、彼の作品は「意味が排除されている」からだろう。
例えば、作品からアトリビュートや画家の意図のような、鑑賞者が作品に何らかの「意味」を見出すことができれば、作品は明確にスゴイものとして彼らに映る。(と僕は思っている)
しかし、彼の作品には意味が極力排除されているために、スゴさの理解に苦しむ。
一方で、「意味が排除されている」からこそ作品自体に全ての注意を向けられる。そこにフェルメールの繊細さや巧みな構図や配色がある。
彼の作品が純粋に鑑賞者が没入できるよう配慮されているようにも感じる。
その姿勢は、主題を他の画家の模倣から始め、そこから独自の世界観に昇華させるという事実からも伺える。
それを踏まえた上でフェルメールの作品群を改めて鑑賞すると素晴らしいものに見えてくる (気がする