紙の本
ハードSFの代表作・古典といわれる作品だけに「古くささがない」ということは
2005/06/08 14:25
12人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された。関連は? この一作をもって現代ハードSFの巨星となったホーガンの傑作長編。と紹介されている。
本格SFを手に取るのは久しぶりです。まだ空想科学小説と呼ばれていた頃から大好きだったから、ヴェルヌやウェルズやドイルに夢中になった少年時代に始まり、E・E・スミス、アイザック・アシモフを読んでいた頃から、小松左京、光瀬龍あたりまでだったでしょう。その時々でSFの楽しく感じたところは違っていたのかもしれません。それをSFと呼んでいいならこれまでの傑作の一番は小松左京の「日本沈没」であったなぁと思うのです。その程度ですから「ハードSF]とはどんなものかしらと興味を持っていました。
この死体はなにものかと地球規模のプロジェクトが組織される。遺留品は数少ない。あらゆる先端学問が動員され分析が始まる。放射性炭素年代測定法、原始生物学、宇宙創生論、地球物理学、進化論、記号解読学などなど。数々の仮説を検証し、彼が地球にたどりつく経緯を明らかにしていく。ストーリーは単純でその分析プロセスを丹念に描くだけの小説だった。ここまで科学理論を徹底したSFにはお目にかかったことがない。ミステリーで言えば非現実で、ためにする状況をしつらえ、そこでおこる事件を論理一筋で解明するパズル型の謎解き作法に近い。この場合「論理一筋」による読ませる説得性が作品の評価を左右する。
ハードSFの代表作といわれる作品だ。ここで取り上げられている「現代科学理論の粋」は私のようなシロウトにはチンプンカンプンで本物なのかどうかは判断しようがないのだが、読んでいるといかにもそれらしく引き込まれてしまった。
地球人が木星の衛星にたどり着く頃の未来を想定しているから、これも現実的未来であって、登場する宇宙船、装備、機器類、科学技術にも今の水準と途方もなくかけ離れた感じがしないのも「本物らしさ」を高めている。
書かれたのが1977年だから「古くささを全く感じさせない」との評価はまったくそのとおりだった。
宇宙戦争のバトルシーンも巧みに織り込まれ、宇宙規模の大どんでん返しもあって、懐かしい空想科学小説のなごりと気の利いたラストは楽しく読めるところでもある。
ただ、そのアイデアと技巧など名人の手際のよさには感心するものの、結局こしらえものにすぎないと、今更このジャンルにのめり込める歳ではなくなった自分の老化がすこしさみしい。
古臭さを感じさせないとのことに関連することだが、
この小説の世界では核兵器の寡占によって地球規模の平和と繁栄が謳歌されている。「恐怖の均衡」、今でも立派に通用するところがあります。
又終章では生物学者が高らかに宣言する。
「われわれ人類は今、押しも押されぬ太陽系の支配者として、5万年前のルナリアンと同じように恒星間空間のとばくちに立っている。というわけで、諸君、恒星宇宙はわれわれが祖先から受け継ぐべき遺産なのだ。ならば行ってわれわれの正当な遺産を要求しようではないか。われわれの伝統には、敗北の概念はない。今日は恒星を、明日は銀河系外星雲を。宇宙のいかなる力も、われわれを止めることができないのだ」
1977年、ベトナム戦争後の米国人にあった幻滅を消し去ろうとした新大統領カーターの胸の内を見るようであった。がこれもブッシュにも当てはまるというものだ。
紙の本
星を継ぐもの(創元SF文庫)
2012/11/13 12:32
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんじゅ - この投稿者のレビュー一覧を見る
発想がすばらしい。時の流れの悠久さを感じさせる。日本訳はいまひとつ。
投稿元:
レビューを見る
【星雲賞受賞作】
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながり読み終わったかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。
投稿元:
レビューを見る
月面で宇宙服を着た死体が発見された。死体の人物「チャーリー」は、地球上の人間と全く同じ進化を経た"人間"であるが、地球人ではない。「チャーリー」はどこから来たのか、彼はなぜ月面で死んでいたのか? 世界中の学者が様々な説を唱え、謎を解いていこうとする。ハードSF。
ハードSFは今まで苦手で、“食わず嫌い”のまま読まずに来てしまいました。なんかこう「理屈っぽそうだ」と思い、避けてきていたんです。もちろん、ある意味確かに理屈っぽい。ところが、この「理屈」が面白い、とやっとわかりました。
前半100ページくらいまでは、「チャーリー」に関する諸説で学者達が揉めていく事柄ばかりで、「いつ面白くなるんだろう」と思いながらも読んでいたような気がします。「チャーリー」の故郷であるとされる「ミネルヴァ」と新たに木星付近で見つかった巨大宇宙船の謎がからむ部分で、主人公である物理学者ハント博士による謎解きがはじまっていくところから急速に面白くなっていきます。蓄積された情報の解析と、一瞬のインスピレーション。最後まで二転三転していく展開はすごいと思いました。
ハードSFは初めて読む、という人には絶対おすすめです。
投稿元:
レビューを見る
月の上で見つかった謎の死体。人類にそっくりであるものの、地球人ではなく、5万年も前に死亡していた!
ほとんど大きな動きはないものの、理論を積み上げて徐々に謎解きをしていくというストーリー。古典的な傑作。
投稿元:
レビューを見る
とにかく謎の解明に重点が置かれていて。不可解な謎の提示と、それを巡る論議。そして明かされる意外な真実。なんとスケールの大きい推理小説であることか。細かく言えば。手がかりの見つかり方が恣意的に過ぎると思わないでもないのですが。まぁ、そんなことはいいや。
投稿元:
レビューを見る
月で見つかった人類発生以前の
人間の遺体をめぐって地球は
てんやわんやの大騒動!
ラストがどんでんがえしで
ほんわか楽しいSFです。
投稿元:
レビューを見る
月で発見された5万年前の死体。
科学的調査により、人間と酷似するデータを持つこの死体の正体とは…
木星のガニメデで発見された宇宙船からは多数の動物をサンプリングしていた痕跡が見付かる…それは大古の地球動物だった。
二つの発見から導き出されるある答えとは…サスペンス色の高いSFの古典!
投稿元:
レビューを見る
発見・探求・分析といった科学の楽しさを詰め合わせにしたようなSF小説。わくわくしながら読み進められます。
投稿元:
レビューを見る
うーん、すごい。解説にもあるようにSF的にもアイディア的にもおそらくどこかに瑕疵があるのだろうけど、そんなことどうでも良くなるくらいに面白い。ソウヤーみたいだ。人類はどこから来たのか、月面で見つかった人類の謎、ガニメデで見つかった巨大宇宙船、などなど物語が進むにつれてどんどん出てくる謎が最終的に最も納得できそうな、そして最も面白い結論に到達する。
投稿元:
レビューを見る
海外のSFが読みたいなぁ、と思って古本屋で物色していて見つけた本。
作者の中にある自然法則についての仮設を延々と書き綴ってあるわけで、ある意味、小説とは言い難い部分もあるけれど、「地球外生物の存在」というアイテムが、その部分を充分に補っているように思う。また、キャラクターもそれぞれが個性に溢れていて、特にダンチェッカーは、「科学者にこういうヤツ、よくいるよなぁ」という生々しさがとてもよい。マドスンみたいな「専門バカ」もよくありそうだし。ハントやコールドウェルみたいなタイプははっきり言って現実には希少だけど、ハントは自分もそうなりたい、と思うような学際的な感覚の優れた人物で、コールドウェルは自分の上司に是非いてほしい。そういう現実と非現実の間のバランスがものすごくいい。
読んでいたのが夜中で、のめり込んで寝れなくなったのだが、読後、「これはもしかしたら事実かもしれない」と思い、地球外生物が今にも地球にやってきたらどうしよう、と考えて、怖くなってしまった。ルナリアンのような好戦的な生命体が地球に乗り込んできたとしたら……。恐怖である。
投稿元:
レビューを見る
SFを舞台に展開するミステリと私は思っています。難しい言葉が並びますが、最初の違和感さえ乗り越えれば圧倒的な広がりを持つ無限の宇宙が待っています! このタイトルを皮切りに、シリーズが続きます。シリーズになれる程の確りとした世界、それを堪能して下さい。
投稿元:
レビューを見る
ホーガンの長編SF。ミステリ仕立てと思いつつ読むもよし、科学者ズ萌えで読むもよし。私は後者。堅物ぽいダンチェッカー博士の、いかにもな博士っぷりにラブ。続編に「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」「内なる宇宙」があります。続けて読むと更に萌え。
投稿元:
レビューを見る
ミステリーSF。もうわくわくが止まらない。
逆転に告ぐ逆転な展開なんだけど、
それは普通のミステリーとは異なる雰囲気を持つ。
知恵をしぼって発見していくあらたな謎、謎、謎に、
本当に真実が明かされる日なんて来るんだろうかとも思う。
アイディア・演出・キャラ・ラストを含め、間違いなくSFでもっとも楽しいお話の一つ。
投稿元:
レビューを見る
月面で発見された謎の死体は、なんと、地球の進化上ありえない、5万年前の人類だった!? というところから始まるSFミステリーの名作。人類の進化のミッシングリングについて考えさせられます。多分ハードSFに分類されると思いますが、エンターテイメント性が高いので、SF嫌い人でも楽しめるハズ! 続く、ガニメデシリーズも必見です。(『ガニメデの優しい巨人』から登場する“ゾラック”くん、ラーーーーーーヴ!)