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アイ’ムホーム 上 (Big comics special) みんなのレビュー
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紙の本
居場所はあるの?
2002/04/11 22:49
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岡野義高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
家路久は、元エリートサラリーマン。やり手で自信家だが、計算高く独善的な人間だった。ところが、単身赴任先のアパートで一酸化中毒となり、幸い死は免れたものの、ここ数年の記憶を失ってしまっていた。妻と息子の顔も覚えていないどころか、仮面をつけているように無表情に見えてしまう、という後遺症が残ってしまった。ポケットには、たくさんのカギが。ときどき無意識のうちに、以前よく通っていた家に向かってしまう。元妻と娘の家。愛人だった女の家。学生時代の親友の家。などなど。
記憶を失ってからは、すっかり「いい人」になってしまった久だけれど、それぞれのカギの家を訪れているうちに、記憶を失う前の自分がどういう人間だったかがわかってくる。最初の妻と別れてから、すぐに今の妻と結婚したこと。今の妻の実家は資産家なこと。単身赴任していたのは、会社の秘書との情事がバレてしまって、左遷させられていたこと。学生時代の親友の彼女を寝取ってしまって、それが現在の妻なこと。いったい自分はどういう人間だったんだろうか。そして、いつまでたっても仮面をつけてるように見えてしまう、妻と息子との暮らしはどうなるのか……。
記憶喪失というのは、マンガではよく使われるネタだけど、部分的な記憶喪失という設定が、じっさいにありそうでリアルだ。性格まで変わってしまうんだから、記憶というものは、とても大切なものなのだ。久がたくさんのカギを持っているというのは、それだけたくさんの居場所を久が持っていた、ということになる。けれども、久がそれぞれのカギの家を訪れていくにしたがって、そこはもうすでに、居心地のいい場所ではなくなっていることに、気づいてしまう。べつに記憶喪失にならなくても、年をとるにつれて、居場所が変わってしまう、あるいはなくなってしまう、ということは誰にでもある。だから久の不安な気持ちや切なさがわかるのだ。これはほんとうの居場所を探す物語でもある。久は、見つけられるのだろうか?
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