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突然不眠症に悩まされるようになった著者の、悪戦苦闘の日々。軽快で(でも不眠は深刻)読みやすい文章ながら、著者の読書量と知性が伺えてとっても面白かったです。頭のいいひとと話す時の面白さ。この著者、別の場所で、「速読」をうたう世の中に逆らって「遅読」を唱えてました。そういうおっとり鋭いところに好感が持てます。(あ、偉そう?)
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元気が無い時に図書館の本の間をぶらぶらとしていて見つけた本。
この時に思ったけれど、世の中にタイトルの素晴らしいエッセイってほとんどないんじゃないかと思うほど、どれもつまらなさそうなタイトルだった。
きっと読んだら面白いのだろうけど、どん底の、こっちにエネルギーが皆無の時に読む気にさせてくれる、それ以前に手に取ってぱらぱらめくってみようという気にさせてくれるタイトルは少ない。
この「気晴らしの発見」は、そんな中で発見した、あたし的に素晴らしいタイトルの本。
そして読んでびっくりした。
素晴らしい本です。
まず浮かんだ言葉は豊か。
そして、本との付き合い方とはこういうものなのかと得心した。
世界がぐんぐんと広がっていく。
この山村修という人を私は知らず、著者略歴にはただ「大学図書館員」とだけ書いてあった。
ますます不思議だ。何者なんだこの人。
山村修は、この本の中で不眠症と闘っていた。
自分のペースで戦っていた。
読後にインターネットで彼について調べてみたら、最近肺がんで他界されていた。
胸が締め付けられるような切なさだ。
こんなにも本の中で生き生きと生きている人がこの世にいないというのは本当に不思議なものだ。
それよりも、この不眠症と戦った氏が、どんな風に病気と付き合っていたのだろうかと思った。
苦しくならないように、最後まで自分を励まして根気よく付き合っていたのじゃないだろうか。
それとも。
よけいなことを考えてしまった。
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ストレスが原因で早朝覚醒(早すぎる目覚めのこと)に悩む著者は、高脂血症を患い、コレストロールを下げるために 「気晴らしの演習」 に取りかかります。
健康人である今の私 「気の晴れている人」 には、最初読みにくく、取っ付き難いです。「梶井基次郎」 や 「多田道太郎」 に 「E.A.ポー」 等々と馴染みの名前が出て来て、本の話に飛び、主題に戻りを繰り返しているうちに、いつしか独特の語り口に引き込まれていきました。
気晴らしの演習と称して、イッセー尾形のビデオを見て、味覚を再建し、野口体操で呼吸を整え、雨戸を閉めて謡の練習をし、陽光を飲み干し、等々、ついには、ワークショップに出るまでになります。
そして、『ワークショップに出ることは、自分の外に出ることだった。その体験が、めぐりめぐって、私の病んだ部分に効いているのだ。私の心身に、つまるところ、あのワークショップでのさまざまな 「言葉」 のやりとりが、さざ波となって効いているにちがいないと思う。』 と言わせます。
『気晴らしは笑いだ。うらうらとした、うれしい心のさざ波だ。そのさざ波は、おそらく 「言葉」 が起す。...
言葉こそ、心のもみ玉。たいせつなのは言葉だ。他人に向かって投げる言葉。人の目にさらしてみる言葉。他人から投げられる言葉。胸にしみる言葉。耳を打つ言葉。
腹にこたえる言葉』
健康人が明日も必ず健康でいられるかどうかはわかりません。片手間に気晴らしができるのは健康人だけです。
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2016.8.2市立図書館
匿名書評家「狐」でしられた著者によるエッセイ。ストレスからの不眠(早朝覚醒)に悩む著者が、梶井基次郎や多田道太郎はじめさまざまな本をひもときながらストレスについて考えをめぐらせ実践した記録。
ストレスに起因すると指摘される高脂血症(コレストロールの増加)は「沈黙の病気」と呼ばれるものの、血流が淀み滞る感覚は自覚・感知できると考えた著者は、ストレスという心の問題に正面から対するのではなく「コレストロール」という物の制御という方向から対処してみてはどうかとひらめき、ストレスで曇りがちな心の「気晴らし」のための種々の演習をおこなっていく。イッセー尾形作品のビデオマラソン、謡といったハードなものから、ものを味わう、呼吸を意識する、朝日を浴びる、意識的にものをみる、といったソフトなものまで、それにヨーグルトやビタミンCの摂取なども「信ずべし、信ずるべからず」の気持ちで1年ほど続けながら小康を得、さらに気晴らしの究極の快楽的心因としての「青空のイメージ」もつかむ。それでもなお服薬と手が切れずにいた著者が最後にたどりついた「もみ玉」は自分の外に出ること、言葉を頭のなかだけで反芻してばかりいないで他人とやりとりすることだった、というのは考えさせられる結末だった。
いろいろと心にとめておきたいことがつまった一冊だった。手元におきたいけど新潮文庫もすでに絶版…ちくま文庫あたりで復刊しないかなあ。
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