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ゆたかな社会とは:すべての人々が、先天的・後天的資質と能力を十分に生かし、それぞれの持っている夢とアスピレーションを最大限実現できるような仕事にたずさわり、その私的社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で、安定的な家庭を営み、できるだけ多様な社会的接触をもち、文化的水準の高い一生をおくることができるような社会。
これに必要な基本的諸条件は
①美しいゆたかな自然環境が安定的、持続的に維持されている
②快適で清潔な生活を営むことができるような住居と生活的、文化的環境が用意されている
③すべてのこどもたちが、それぞれの持っている多様な資質と能力をできるだけ伸ばし、発展させ、調和のとれた社会的人間としての成長しうる学校教育制度が用意されている
④疾病、障害に際して、その時々における最高水準の医療サービスを受けることができる
⑤様々な希少資源が、以上の目的を達成するために、最も効率的、かつ衡平に配分されるような経済的、社会的制度が整備されている
自動車の社会的費用:自動車の所有者や運転者が負担すべき費用を歩行者や住民に転嫁していること。これが放置されると自動車を利用するほど大きな利益を得るようになり自動車需要は増えていく。
学校教育が果たしている3つの機能:社会的統合、平等主義、人格的発達
大学の意義:学問の研究と学生の教育。教育は副次的。研究といっても特に、規律・規則がなく自由な精神にもとづいて行われる点が企業などとの違い。
日本の保険システムのゆがみ:人件費、設備維持費の赤字分を検査料、薬剤料などから出る黒字で補填している点。医療的最適性と経営的最適性の乖離。
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本文より
現行の医療制度について、そのもっとも重要な問題点は、保険点数制度に基づくら診療報酬制度である。この診療報酬制度のもとでは、医療の供給体制を長期間にわたって、望ましい状態に保つことはほとんど不可能であるといってよい。
日本の医療制度の矛盾するを一言で言ってしまえば、それは、医療的最適性と経営的最適性の乖離ということではなかろうか。
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過去の論文などをまとめたもののようだ。そのためか、農業、都市、教育、医療、経済、環境を取り上げているが、それぞれのテーマでは細かい議論に入り込んでいる印象が強く、全体としてのまとまりが感じられなかった。
共有地の悲劇は、オープンアクセス、コミュニティの規約の制約を受けないことを前提としている。コモンズでは人々の集団またはコミュニティが確定され、その利用に関する規制が設けられているため、共有地の悲劇は発生しない。空海による満濃池の大修築と溜池灌漑の管理のコモンズ制度は、持続可能な農の営みであった。
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宇沢弘文先生の理論の中核本
大学時代塩野谷先生にご紹介頂いて40年漸く読破良かった
資本主義経済体制の限界・本質的問題は今日的「格差問題」
市場原理主義から漏れる「社会資本」の劣化
SDGsの問題意識に通じていると思う
宇沢弘文先生の価値観が求められる時代 コロナで加速する
バイデン大統領の理念は近いものがある 米国の力が間に合うか
1.アンチ新自由主義
資本主義のダイナミズム リスクテイクとアップサイドリターン
市場の失敗 外部経済の統制 市場化・政治規制
2.地球という枠組みが劣化すると
与件の中で成果を最大化する資本主義は新たな制約を受ける
3.農村 都市・自動車 学校教育
4.学校教育
5.医療
6.金融制度
7.地球環境
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内容はかなり難しいが、ジャーナリスト堤未果さんの本から辿り着く。経済至上の資本主義でもなく既に破綻した社会主義でなく、と、何となく考えたくて。一読に値するとは思う
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著者のことをテーマにしたイベントに興味を持ったので、一冊読んでおこうと手にしたのがこちらの一冊。
著者のような学者の方の書かれる独特な文体が、普段ビジネス書等で読者を意識した(悪く言えば媚びたような)読みやすい文体に慣れてしまっている私にとっては読みづらく感じました。
なんか、こう、やたらまわりくどい記述がわかりにくいことをよりわかりにくくしているような。
平易に書いていただければ、もっと多くの人に伝わるだろうになぁとも思った次第です。
誤解を恐れずに言えば、結局のところ当然のことを書かれているように感じました。
付箋は16枚付きました。
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内田樹さんがオススメするので、
そしてまた自分の仕事に使えるロジックかと思ったので、
名前は知っていたが、ついに読む。
経済学的にも業績を残した方であるが、
評価は難しいな。
本の内容もあまり感心しなかった。
でもまた読む返すのではないだろうか。
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2020.24
良書すぎた。
・社会的共通資本とは、人伝的に魅力ある社会を持続的安定的に維持することを、可能にする社会的装置
・自然環境、社会インフラ、制度資本の3つで構成される。
・市場機構や、評価、官僚的な管理をされるべきものではない。
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宇沢『社会的共通資本とは、一言で言えば「誰にとっても等しく大事なもの」を「社会にとっての共通の財産」として大切にしようということ..具体的には、「自然環境」「社会的インフラストラクチャー」「制度資本」の三つの大きな範疇に分けられます』
教育も研究も社会的共通資本だよね。オススメ!
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難しいことを易しく、経済学的視点から社会のシステムについて述べている。ポスト資本主義、アフター(ウィズ)コロナの社会システムとしてかなり素晴らしい案だと思う。2000年の著作。著者の慧眼に敬服。
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社会を豊かに保ち続けるために大切な要素を社会的共通資本として定義し、国家の管理でもなく、市場に任せるでもないあり方を論じた本。社会的共通資本は自然環境、社会的インフラ、制度資本に分かれている。
「全て」を国家が管理する社会主義か、市場の自由競争に任せる新自由主義かという二項対立に対して、「一部」はまた新しい形でのありかたが大切だと説いている。
ともすれば、「全て」「二項対立」「0か100か」で語られがちな政治・経済に対して、「一部」「折衷案」「個性記述的」に考える視点を与えてくれる。
文章は当初の入りが平易でありながら、途中経済学的議論が展開され、少しついていきにくい部分はあったが、一方で説得的でもあった。経済学の知識をさらにつけてチャレンジしたい。
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私の尊敬する
大学の先生から
ゼミで学びました
どんな社会になっても変えてはいけない考えはあると思います
基盤となる考えです
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資本主義とは?改めて疑問を感じさせてくれる一冊。特に医療システムのパートは医療崩壊の可能性が叫ばれる昨今に読むと、もっともな内容でもある。
他方で新書で経済を専門としていない読者も対象ということもあり、少々著者の理想をただ書いているだけ、という印象にもとれる内容になっているのが残念。
この本をベースに解釈を広げる勉強の場があると面白いと思った。
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社会共通資本
◯社会的共通資本とは
・制度主義は資本主義と社会主義を超えて、全ての人々の人間的尊厳が守られ、魂の自立が保たれ、市民的権利が最大限に享受できるような経済体制を実現しようとするもの。
・社会共通資本はこの考え方を具体的なかたちで表現したもので、社会的装置を意味する。
・自然環境、社会インフラ、制度資本(教育、医療他)の三つの範疇に分けられる。
・実質的所得分配が安定的となるような諸条件
・社会的資本はそれぞれの分野の専門家によって職業的規律に従って管理、運営される。政府の指示や市場原理によるものではない。
◯社会主義の失敗
・計画経済は、中央集権的な性格を持つものは言うまでもなく、かなり分権的な性格を持つものも例外なく失敗した。
・計画経済が個々人の内発的動機と必然的に矛盾することが根源的な原因
◯分権的市場経済の矛盾
・実質所得と富の分配の不平等化は止まらない。
・利潤動機が常に倫理的、社会的、自然的制約条件を超越して社会の非倫理化を極端に推し進める。
・世界恐慌後に出てきたケインズの一般理論は、マクロ経済学の枠組みを作り、その後の世界の経済成長を支えた。
◯農の営み
・農業は工業と比べると生産性に劣るため、放っておいたら縮小して行ってしまう。
・農村規模を社会的観点から望ましい規模に安定的に維持することが必要。そのため一定割合が農村にいる誘因を作る必要がある。
・農業は産業的範疇を越え、多様な自然と生態系を守り、人間的成長を促してきた。
・コモンズの管理は信託された人が行う
◯都市
・移動手段、輸送手段として自動車が爆増した。しかし社会的費用は添加されていない。これは道路の整備と保守、交通安全だけでなく、子供達が安全に使えなくなってしまったことによる損失も含める必要がある。人命や大気汚染も本来的に含める必要がある。
・日本は住める面積が狭いため、特に社会的コストが大きい。それでも自動車が普及したのは道路整備にも自動車産業にも雇用を生む力が強かったから。
◯教育
・一人一人の子供の特質を生かし、立派な社会的人間として成長き、個人的に幸福な実り多い人生をおくれるよう成長を助けるもの。
・大学に自由が必要
◯医療
・保険点数制度による診療報酬制度が問題で、医療的基準と経営的基準の乖離をもたらしている。物的なものに点はつくが医師や看護師の技術やホスピタリティにはつかない。この報酬だけでは全然足りないのだが、これを検査、投薬、輸血による黒字で補填している。
◯環境
・経済学では、ある一つのエリアでの自然資源(材木、魚の量)の推移で考えるが、実際には大気や流入物といった様々な条件関与している。
・伝統的社会では、自然は宗教の中に含まれて考えられていることも多く、自然資源を持続的なかたちで利用することは、文化であった。
・人の移動が自由になり、文化宗教環境の乖離、植民地化のプロセスによって資源の搾取が広範なエリアで行われるようになっていった。地域に根ざした���識は無視され否定されていった。
・キリスト教、哲学、経済学と、自然を人間がコントロールできるという論調を強めていった中で経済成長が重視されていった。
・環境と経済の両立 by ミル「経済学原理」
国民所得、相対価格体系、資源配分のパターン、名目所得の分配などが時間を通じて一定水準とする
・炭素税は有力だが、排出量あたりの税額を世界で統一すると途上国は大変厳しい。GDPで傾斜をつける必要がある。
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ケインズ経済学
①希少資源の私有制
②所得分配の公正性
社会的共通資本
・一つの国ないし特定の地域に住む全ての人々が、ゆたかな生活を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置
・自然環境、社会的インフラ、制度資本
・職業的専門家によって、専門的知見に基づき職業的規範に従って管理維持されるべき
政府による官僚的管理、市場的基準に従っておこなわれるものではない
・新自由主義はケインズ経済学の反動を受けたもの。市場原理主義。制度主義とは対比的。
・自動車の社会的費用。所有者なしは運転者が負担しなければならない費用を、歩行者あるいは住民に転嫁して、自らはほとんど負担しないまま運転。社会的費用が少ないから、大きな利益を得ることができ、自動車の需要は限りなく増大。社会的費用の内部化が必要。