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「失われた十年」に20代を過ごした著者が
同年代の大学の頃の仲間を訪ね歩き話を聞き
その「失われた十年」がなんだったのか
人生において20代とはなんなのかを見つめていく。
また10年前の写真と今とを並べることで
その10年という時間の隔たりを見ようと試みる。
僕らの世代はバブルの恩恵を
お年玉くらいにしか受けなかったので
本に出てくるバブル当時の話なども
聞いた話と変わらずリアリティーは感じなかったけれど
20代の間にどういう選択をし
どういう人生を歩もうとしているのか
という部分に関しては
ものすごく感じ入るものがあった。
この本では著者の友人9人が出てくるのだが
同じ大学の同じサークルで時間を過ごした
同じ出発点のた9人の間でも
いろんなものを捨てていく人もあれば
いろんなものを築いていく人もあり
数字に馴染めなかったものもいれば
数字を扱うようになったものもいて
ある種の枠から飛び出した人もいれば
飛び出せずに憧れる人もいて
そういったいろんなものが相対的に絡み合っていて
本当に人生ってすごいなぁと思った。
少なくともこれらの人々を見ていると
20代というのは初めてオリジナルになれる時代なのかもしれない
と思った。
特別な例を除けば
実社会に出るまでは
人にそんな大きな差異は生まれない。
社会に出た途端に千差万別な現実に対峙する。
そういうものがよく描かれた本だなぁ
と思いました。
あと、9人の中に一人すごい人がいて
ミャンマーで出家しちゃった人が出てくるんですが
その人に
「バブルが弾けて日本人は弱気になってしまったけど
そのことについてはどう思う?」
という主旨のことを尋ねた時に
「今度また豊かになれば、また日本人は強気に戻るの?」
「全然変わらないじゃない。それじゃあ、何も変わらないじゃない。」
と発言していて
それが現在の日本での(そしておそらく欧米でも同じ)豊かさの基準に対する
強烈なアンチテーゼになっていて印象に残りました。
その人の行動事態はちょっとやりすぎじゃないの?
とは思うものの
そうせざるを得なかった彼の気持ちも分かるし
すべてじゃないにしろ彼の考え方に大きく共感できる部分もあるなぁと
僕自身は思うのです。
自分が目指す、自分の豊かさ。
これは常に考えていたいテーマかもしれません。