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ゴッドファーザーに感化され、カトリックスクールでギャング団を結成した少年達の話。いたずらで描いたアダルトコミックに、校長のシスターが神父に陵辱されている場面を描いたのが見つかり、処分は必至。その処分をなしにするために、さらに大きないたずらとして少年達が考え付いたのが、近くの動物園にいる山猫を捕獲して、学校内にはなすというアイディア。
これが縦糸。その他に、主人公のフランシスの恋愛や、町で起きた白人警官による黒人射殺事件に端を発した黒人のデモ、そして学校内での人種間の対立などが横糸として折り込まれた。ラストはギャング団の精神的支柱でリーダーでもあるティムが山猫の捕獲の時にかみ殺されるというショッキングな内容。でも全体に流れているのは、全能感と無能感の間を揺れ動く少年達のひりひりするような切ない「今」感。取り返しのつかない時を、どうやって生きていくか、そんな意識を持った思春期の感触が蘇る感じだった。小説ってやっぱり思春期のものなのか?
こんな部分の表現がいい。
ぼくは怒りを持続させられたためしがない。人はぼくを物わかりのいい人間だと思っている。実際にはほとんどわかっていないのに。ただ、ぼくはおおかたのことには耐えられるから、それはそれで長所であるのだろう。(p138)
ものを盗むときも、実際には恐怖と不安でその対価を払っているのだというのがティムの持論だった。それが無法者の通貨だというのだった。(p145)
「心の準備なんていつまで待ってもできっこない」ティムが言った。(p277)
最後の一言なんか凄くかっこいいよな。何かで使えそうだ。
それとフランシスとマージーの初体験の時のこんな描写。いいよねえ。
見るからにはかなげな白い腋の下が、少女の体のありとあらゆる部分をなまめかしく見せる、あのなだらかで刺激的な交わりを示しつつ、肩へ、そして乳房へと流れていた。(p245)
著者は30歳で、この小説の校正中になくなったそうだ。幸福な一発屋。といっていいかもしれない。