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短編集。子どもができたら、毎晩少しずつ読んであげたい。声に出して、耳から聞きたいおはなしばかりでした。
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ファージョン(1881-1965)はイギリスの詩人・作家です。岩波少年文庫の扉の紹介文によると、父は流行作家、母はアメリカの有名な俳優の娘でした。芸術的な雰囲気に満ちた家庭で本に埋もれて育ち、正規の教育は受けませんでした。
この短編集に収められた作品は不思議な味わいのあるものばかりです。それもこれも、義務教育を受けずに育てられ、自由な空想を羽ばたかせて書いた成果でしょうか。
かなり良かったと思います。お気に入りの作家になってしまったのですが、中でも私がお気に入りの話は「レモン色の子犬」、「月がほしいと王女さまが泣いた」、「七ばんめの王女」ですね。
「レモン色の子犬」は、面白いです。悲しさと美しさが共存したお話です。
王さまの木こりのジョンがある日、年とって亡くなります。その息子のジョーは特技といっては木を切ることしかありませんでしたが、王様の執事に父親亡き後の木こりの職を志願するところから、物語ははじまります。
木こりの仕事を一度は断られたジョーですが・・・王様の娘の王女さまと、意外なところで出逢います・・・。
身分の低い木こりと、王女様の恋の行方は如何に・・・。そんな話です。
「月がほしいと王女さまが泣いた」は楽しい作品です。ファージョンの作品は王様とか王子、王女様が登場することが多いのですが、ここでも無邪気というか、天真爛漫な王女サマが登場します。
王女サマは五歳とか六歳なのですが、お月様がほしくて、屋根の上にまで登って、泣いています。「あたしお月様がほしいの」、と。
その王女サマの一言がとんでもない騒動を巻き起こします。誤認逮捕の嵐、戦争の勃発・・・国中を、大混乱に陥れます・・・。
ファージョンは、技術的に「繰り返す」ことを好きな作家ですね。「レモン色の子犬」でも、同じパターンを何度か繰り返して、ラストでカタルシスが訪れる、という構造です。
作品的には児童書かもしれませんけれど、構造への意思があります。言い換えれば、自由に好き勝手に空想の翼を広げているように見えて、その実、裏では精緻な計算をしているということです。
最上級の、上質の物語がここにあります。
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にゃんくの本『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語』より
(あらすじ)
七歳になるリーベリの元に、或る日、継母のケイとその娘ミミがやって来ます。継母に虐められ、リーベリは学校にも通えず、幼い頃から働かされ、友達すらいなくなります。
リーベリの心の拠り所は、亡くなったママ・ジュリアが遺してくれた魔法の教科書だけ。リーベリは毎日魔法の勉強をし、早く大人になり自由な生活を送れる日が来ることを夢見る毎日です。
成長したリーベリの唯一の仲間はぬいぐるみやカラスだけです。
或る日、そんなリーベリは、海岸にひとり男が倒れているのを見つけますが……。
↓ここから本を試し読みできます
http://p.booklog.jp/users/nyanku
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≪県立図書館≫
大人目線で、面白かった。
皮肉があったり、なにかしらの教訓が読み取れたりするお話ばかりだった。
子供には少し難しいようで、読み聞かせていても、ぴんとこないようだった。
つきあっていくうちに、徐々に魅力に気づいていく、というお話のように思った。
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前書き「本の小部屋」は私の永遠のあこがれだなぁ
そして、ファージョンにはやっぱり、アーディゾーニのイラストがいい
C.S.ルイスやトールキンにポーリン-ベインズが似合うように。
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子供に読ませたい本・小説との決めつけは厳密にいうと誤りだろう。
本物のファンタジーストーリーは大人“も”ではなく、
大人“を”心底感動させ、
「子供に読ませるべきものだ」と彼らに
信じ込ませるだけの魅力に満ち満ちているからだ。
この物語たちのなんと愛らしいこと、
なんとロマンチックでスリリングで
先を読む楽しみを掻き立てる想像力の強いこと。
この本は私の人生一のそんな物語集です。
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◆きっかけ
『少年少女のための文学全集があったころ』の中で松村由利子さんが、様々なお菓子が出てきてワクワクする、と書いており読みたくなった。2016/9/25
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文学少女から「ムギと王さま」を知った。どのお話も綺麗でキラキラしていて宝石箱を開けている気分でした。個人的には「西ノ森」が1番好きでした。
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易しい言葉、でも深く心に響く調べ。まるでモーツァルトのよう。これを読んでいる時、家族がたまたまモーツァルトのロンドを練習していた。とりわけ「西の森」は本当にこの曲そのもののように感じられた。
好きなのは、「金魚」「レモン色の子犬」「西ノ森」
連想するのは、モーツァルト。そして、ワーグナーのモチーフにでてくる「聖愚」という概念。
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レモン色の子犬が、ロマンティック。子猫にはあたしがついて、子犬にはあつしがついている♥はいはい、って感じ
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民話とは一味違う、シュールさやシニカルさが面白い。シンプルで短いながら、ひとひねりあり、「読んだ!」感があるお話というのか、濃密なエッセンスのようなお話集だと感じた。比較的幅広い年代が楽しめる内容だと思うが、大人に踏み入れる頃に読んで欲しい1冊かな。
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子供の頃、友だちと分厚い本を読む競争をしていて、気付けば競争を忘れて引き込まれていました。競争をしていた時読んでいたのは「ファージョン作品集」ですが、本棚の幅を取るという大人の事情で、こちらが今手元にあります。
子供の頃こんな物語に触れられるなんて、今思えばとても贅沢なことでした。
お気に入りは「ヤングケート」「レモン色の子犬」「西ノ森」です。どれも本当と空想が混ざりあったような、不思議な味わいのある物語です。アーティーゾーニの描く挿し絵が、その不思議さにリアリティーを足しています。
何よりも心を惹き付けてやまないのが、石井桃子による訳です。こんなに自由でいいんだろうか?というくらい楽しげで不思議な節回しで、ひらがなとカタカナの入り乱れた世界が広がっています。
何度も繰り返し読む本があるのも、実はとても贅沢なことなのかもしれません。
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本に囲まれて育った著者による児童文学短編集。
静かで豊かな語り口です。
『ムギと王さま』
”わたし”がその村に行ったとき、村の人たちがたいそう可愛がっている「村のあほう」と呼ばれる若者がおりました。ふだんはただ畑に座って笑っているだけですが、なにかの拍子でとめどなく話をしつづけるのです。
そして”わたし”が畑にいたときに、彼はお話を始めたのです。
それは彼が昔むかしエジプトにいたころの話でした。彼は自分のお父さんのムギ畑をとても好きでした。しかしそこへ通りかかったエジプトの王さまは、自分こそがこの国一番の金持ちだということを示すためにそのムギ畑を焼いてしまったのです。
彼は焼け残った数粒のムギを蒔きました。やがて王さまが死んだとき、彼のムギも王さまの捧げものとして一緒に埋められたのです。
長い年月が経ち、エジプトの王さまのお墓が発掘されたときにも彼のムギはまだ残っていました。
若者は言います。あの時の種から蒔いたムギが、いまこの畑で実っている。ほら、ほかのどの穂よりも高く、どの穂よりも輝いて。
###これこそ豊かな精神の語りというような物語。
このようにその場でその相手に語れる人を”語り部”というのでしょう。
『月がほしいと王女さまが泣いた』
小さな王女さまはベッドから抜け出して空を見ていたのです。そしてきれいなお月さまを見てほしいと思ったのです。しかし月は手に届きません。そして王女さまはしくしくと泣きました。
その様子を見た昼と夜の動物は、王女様に付きを上げるべきだと仲間に声をかけました。
翌朝お城は、王女さまが誘拐されたと大騒動です。
料理番は料理をやめ、それにならって女たちが仕事をやめ、だから男たちも仕事をやめ、その様子を見た近所の国は戦争の準備をして、そして昼と夜も役目を放棄してしまったのです。
この騒動は王女さまが戻って収まったのですけどね。
『ヤング・ケート』
まだケートが若い娘で女中をしていたころ、ケートを雇っていた家では危険だからと外出を禁止していたのです。
川には『川の王さま』がいるし、牧場には『みどりの女』がいるし、森には『おどる若衆』がいます。
やがてケートが自分の家を持つときに、彼らの全員にあったけれど、それはとても楽しく気の合う人たちでした。
だからケートは自分の子どもたちには外出を勧めて育てたんです。
『名のない花』
小さな娘の見つけたきれいなお花。だれもその名前を知りません。
花は両親から、農場管理人の手に、それから学者さんの手に渡ってしまいました。
そのまま名前のない花は忘れられてしまいました。
でも娘さんは、大きくなってからも決してその花がどんなに綺麗だったかを忘れませんでしたよ。
『金魚』
小さな金魚が海の中で嘆きます。だって自分は月と結婚できなくて、太陽より偉くなれなくて、世界が自分のものにならないのですから。
それを聞いた海のネプチューン王は笑っていいます、それではお前の望みを叶えてやろう。
小さな金魚は、その小ささにふさわしい小さな世界で、その小ささにふさわしい小さな幸せを叶えました。それを見てネプチューン王は笑ったということです。
『レモン色の子犬』
殿さまの木こりのジョーが持っていたのは、母親の形見の指輪と、父親が作った椅子と、最後の小銭と取り替えたレモン色の子犬だけでした。
そのころお城では王女さまが、どうしてもほしいものが有ると泣いていたのです。
ジョーにはわかりました。その望みを自分がきっと叶えられることを。
『貧しい島の奇跡』
たいそう貧しい島がありました。その島の宝物は美しい一株の薔薇の花でした。
ある時女王様がその貧しい島を訪ねてくることになりました。
島ではこの美しいバラを見てもらおうと思いました。
しかしそのバラは、女王様のために別のことに使われたのです。
島には宝物がなくなってしまいました。
しかし何年か経ち、島が洪水に襲われたときに、女王様はその島に自分に示した心遣に対して奇跡で応えたのでした。
『モモの木をたすけた女の子』
マリエッタは自分のモモの木をとても大事にして、まるで友達のように思っていました。
マリエッタにはモモの木の声が聞こえたし、モモの木の話す山の様子も知ることができたのです。
やがて山が噴火し、恐ろしい火が村に向かってきます。
マリエッタは自分のモモにさよならのキスをしに戻ります。そしてモモの木の声を聞いたのです。
『西ノ森』
アクセク王の若い王さまに、そろそろお妃さまを迎えるころになりました。
王さまは詩を書いたのに、女中のシライナがそれをどこかにやってしまったのです!
お妃さまを迎えるために、北、南、東の国に行く王さまですが、どうにもこうにも当てはまらないのです。
そして壁で隔たった西の国に行ってみることにしました…。
『手まわしオルガン』
くらい道をゆく旅人の耳にはいった手まわしオルガンの音楽。
旅人はうれしくなりました、そして一緒に踊りました。
オルガン弾きは言います。オルガンはどこでも弾けるし、踊り手だってどこだっているもんさ。
そう、森の中は、上から下まで音楽と踊りでいっぱいになりました。
『巨人と小人』
知恵も心も持たない巨人は世界を割るだけの力を持っていました。
考える力と心を持つ小さな小人は世界を作り変えるだけの知恵を持っていました。
天使たちは彼らが一緒になることを恐れていたのです。
しかしその日が来てしまったのです…。
『小さな仕立て屋さん』
王さまのお妃選びが行われます。
ドレスを仕立てた仕立て屋さんは、モデルとして自分がドレスを着てみせます。
王さまの従卒の若者は、仕立て屋さんにダンスを申し込むのでした。
『おくさまの部屋』
「ああ、ああ、私はこの部屋に飽きてしまった!」次々に望みを変える若い奥さん。妖精さんは最後に彼女に自分の言葉の意味を分からせるのでした。
『七ばんめの王女』
お妃さまは王さまにたいそう大事にされていました。大事にされすぎて、御殿から出してもらえなかったのです。
お妃さまはやがて七人の王���さまを産みました。
王さまは「一番神の長い娘を跡継ぎにする」と言ったのです。
お妃さまは、最後に産まれた王女さまだけは、自分の手で自分の本当に欲しかったものを手に入れられるように育てたのでした。
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「ムギと王様」
エリナー・ファージョンのこの短編集のなかにクリスマスの話窯一つあります。
「ガラスのクジャク」
……。
お金持ちのおばさんが、高そうなガラスの飾りがいっぱい吊るしてあるクリスマスツリーをいきなりくれる……。一番はじめに「うわぁ!」といった子にあげようと思ってね、といって……。
で、クリスマスプレゼントもなかったその貧しい女の子は路地中の子を呼んでパーティをするのです。
そうして飾りを一つずつわけてやる……。
稀代のストーリーテラーだったファージョンの面目躍如たる短編で、奇妙で深い味わいの作品です。
子どもにではなく(物語読みは別にして)大人がこっそり読む話です。
2020/12/16 更新
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あなたも小部屋で物語を読み耽った日を思い出す。
子どもの頃に読んだものの再読。気に入ったお話は覚えていた。それまでに読んでいたグリムやペローの童話と少し違った着地点だったことが印象的で、その印象は今でも変わらない。しかし、今ならばもっと新しい童話が出てくるのではないかと思う。それはきっと本の小部屋でファージョンを読み耽った人が生み出すのだ。
「西ノ森」ちょっとヘタレキャラの若い王さまと、気の強い小間使いのシライナのやりとりが楽しい。思ったことが素直に出てしまった王さまの詩でくすりと笑ってしまう。とても失礼なことを言っているけれど、戦争にはならないところが、またひとつのおとぎ話。
「小さな仕立屋さん」腕の良い仕立屋のロタは若い王さまのお妃選びの仮面舞踏会に出席することになった令嬢たちのドレスを作る。令嬢にドレスの説明をするために、そのドレスを着て王家の馬車に乗る。控えの間で若い従僕と仲良くなり一緒に踊ったロタだったが——。こういうお話は王さまが従僕に変装していたというのが定石だが、従僕は従僕であった。そこがまた味わい深い。
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「幼い日々、古い小部屋で読みふけった本の思い出-それは作者に幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました。この巻には、表題作のほか「レモン色の子犬」「小さな仕立屋さん」「七ばんめの王女」など、14編を収めます。小学5・6年以上。」