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喪失を確かめていくような旅。
恋人の、自分が知らなかった面を一つひとつ知っていく旅。
相手が死んでしまってからその行程を辿るのは、
とても残酷なことなんじゃないかと感じる。
それでも、静かに確かに足を進める涼子と一緒に、
最後のページまで辿りつかずにはいられない。
ひりひりとする、その余韻は長い。
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何が事実で何が嘘なのか、
事実を積み上げればそれが正しくその人なのか、他人の中で形成されたイメージをその人と言って正しいのか、
主人公は、謎解きのような、証拠探しのような旅をするけれど、しかし読者には何の答えも提示されない。
掴みどころの無い作品、透明で冷たい世界の物語、その中に、ふと織り交ぜられる、血の通ったルーキーとの記憶が、ふいに温かくて胸を打つ。静かに。
美しい鼻も。優雅に動く手も。ムード、オーラとしての香りも。彼が死んだ日に凍りついてしまった全てを、ゆっくりと溶かして、再び耳の後ろに一滴。まとえるようになるまでの記録。
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亡き調香師だった彼が残した香りのイメージを辿っていく物語。香りを文学で表現するのってとっても冒険だったでしょうに、ちゃんとイメージさせてもらえます。素晴らしい。いくつか読んだ小川さんの作品は、どれも予定調和をよしとしない、”たゆたう”感が独特です。
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再読。
小川洋子はじんとする。結末云々というよりは(実際この作品もうまく汲み取れない部分はあるし)、行間を読ませる作品。空気感に酔う感じかな。
ちょっとミステリー調。でも、一度や二度じゃ分からないものを感じる。解けない、というよりも、解かせない。完璧な答えは求められていない。
水溜まりに広がる丸い波のような、静謐さ。やはり、この人の言葉が好きだ。
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んー。。
すごい静な作品だなぁと思いました。
穏やかにスラスラって進む感じ。
博士の愛した数式みたいに数学を扱ったところもあるけど、
あの時ほど数字の持つロマンに感動したりはしなかったなぁ。
内容と書き方の違いだとは思いますが。。
静かな大人の本ってイメージです。
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不安になる作品であった。突然、恋人が自殺し、主人公は彼の生きた軌跡を追うことにするが、それは彼女が知らない顔ばかりであった。相手によりさまざまな顔を持つがただ「ルーキー」という呼び名だけは変わらない。人の人生をもじり作った履歴書。彼はなぜ死を選んでしまったのであろか。
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女性向きかなあ。 香水をつけたこともなければ、花の種類も10もいえないオジサンが読むには、イメージが沸き難く、魅力半減。 結局主人公はなんで死んじゃったのか。。。謎なままというのもちょっと納得できない。 数学を美しく絡める展開は著者ならではでよい。
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「嗅ぐ」のが好きな私には、ぴったりの小説だった。
香りの表現がどれも素敵で、小説だというのにイメージがつきやすいのが不思議。
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調香師だった恋人の突然の死。主人公は彼の過去を訪ねて様々な場所をさまよう。スケート場、図書館、恋人のかつての家、そしてチェコ・・・。
回想と現在、記憶と幻想、現実と夢、その境目が分からなくなりそうな、感覚だけが研ぎ澄まされていくかのような、そんな物語。
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しばらくご無沙汰だった小川洋子の作品。
彼女の作品は、本当に静けさで溢れている。
文体がそうさせるのだろうが、とても自然だ。
物語がしっとりと、それでいて優雅にたゆたうような感じ。
途中まで眠れない時に無音の部屋で読んだので言葉が自然と入ってきたが途中から音楽を聴いたり、電車の中で読んだら気分が削がれてしまった。
やはり、彼女の作品を読むには無音の暗闇が必要だ。
作品は、恋人の自殺を受けていろいろと細かく調べてゆく。
それまで知っていたと思っていた恋人の特技や経歴さえ知らなかった主人公が、たどってゆく。
孔雀、記憶、数学、スケート。
謎解きのような小説だった。
でも、あっさりしすぎていて後味が悪い。
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洋子さんは文章がうまい そして文が短くて読みやすい
「プラハへ亡き夫の足跡を探しに行くシーン」
洋子さんはヨーロッパへは何度も行っておられるようだけど、
今回のように、間違って、日本語が通じないながらも人柄のいい通訳さんのお世話になったことがあったのかもしれない。 そういう時の不自由さや 些細なことでも分かり合えたときのうれしさなど 実体験が元になっている? たぶん
気に入った文章(無いということが在るという表現)
・・・・・長い旅をしてきたのに、博之のいなくなった空洞は相変わらずそこにあった。じっとして動かず、息をひそめ、圧倒的な不在を水のようにたたえていた。・・・・・
この本にも分類や博物館がたびたび登場するが ヒットした博士の愛した数式を思わせる箇所を発見
・・・・・Σ、∞、log・・・・・。広告の裏には見慣れない記号が並んでいた。
「数式ってきれいだわ。神秘的なレースの模様みたい。」・・・・・
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調香師だった恋人の弘之が自殺…。それは“私”のために“記憶の泉”という香水をプレゼントしてくれた翌日だった。なぜ彼は死ななければならなかったのか。その答えを見つけるため、“私”は弘之の過去を遡る。
作者の作品にはいつも“極端”な人々が出てくる。その“極端”なところが、痛々しさであったりせつなさであったりをこちらに伝えてくる。
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正直小川洋子だなーという以上の感想は持てないんだけれど、この頃から(いやきっともっと前からだ)彼女が数学というものに高い関心を寄せていたのがよくわかる。
正しさを恐れるルーキーは、死んでしまった。それでも彼が調香師として生み出した香りは、生き残る。しかしいつしか、その香りさえも、どこかに消え失せるのだ。消えるからこそ、美しいのだ。
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小川洋子さんの作品だなー。としみじみ。
綺麗で静かで染み入ってくる文章と悲しみと。
最愛の恋人が突然自殺してしまって
大切なものを何もかも失ってしまった気持ちになって
どうしていいのか分からない。
少しでも繋がっていたくて
少しでも納得できる何かを確かめたくて
静かに強く哀しく足掻く。
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自ら作った香水をプレゼントした翌日、何の前触れもなく命を絶った恋人。
天涯孤独と聞いていたはずが、彼の弟が現れ、いくつかの嘘が明らかになり、死者をたずねる謎解きが始まる。
調香師と聞くと、CREEDやペンハリガンの香水を生み出す職人のイメージなんやけども。弘之はスケートの名手、数学の天才…と全く違った顔も持っていて…。
殊更に感情を刺激しようとする表現はなく、淡々と透明な文体なのに時折泣きそうになる悲しい物語。