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この時代に想うテロへの眼差し みんなのレビュー
- スーザン・ソンタグ (著), 木幡 和枝 (訳)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:NTT出版
- 発行年月:2002.2
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紙の本
「911」の前と後。ソンタグの胸中で揺れ動くものと不動のもの。
2002/02/15 01:32
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投稿者:小林浩 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家の仕事とは、「つねに複合的で曖昧な現実をまっとうに扱う」ことであり、「常套的な言辞や単純化と闘う」ことだ、とソンタグは序文で述べている。その気概が、「911」前後の時事的なテクストをまとめた日本独自のエッセイ集である本書には、あふれている。第一部では、「911」以後にニューヨーク、ドイツ、イタリアの各新聞に寄稿したテクストが集められており、第二部では、有名なボスニア内戦論(1993年)、大江健三郎との往復書簡(1999年)、戦争と写真をめぐるアムネスティ講演(2001年)、エルサレム賞受賞講演(2001年)が収録されている。もともとは数年前から編集企画が進められていたが、「911」を境に作業を急いだとのこと。時宜を得た出版であり、テロ事件関連の類書と比べてもソンタグの批評の特異な位置は、必読に値する。
特記すべきことのひとつは、彼女自身が言うように「911」以後の発言には「変わらない印象」と「何段階か揺れた悲嘆」が見られるという点である。事件から二日後の第一のテクストには、アメリカの世論や政治家の発言に対する明らかな不快感が読み取れる。ソンタグはこの一文によって国内で激しい非難に晒されるわけだが、一週間後の発言では、直裁的な反政府色よりも反テロの意識が前面に出始める。数週間後の発言においては、国内の画一的な世論や政府の対応を鋭く批評しつつ、報復や全面戦争は馬鹿げているが、軍事的な反テロ作戦は必要である、と説く。本書におけるその都度の彼女の立場はともすると複雑に見えるが、基本的に明快であり、一貫してもいる。現実に向き合うその真摯さには学ぶべきことが多い。本書は時系列に添って第二部から読み始めるのがいいだろう。
※併読をお奨めします→サイード『戦争とプロパガンダ』、チョムスキー『9.11』『「ならず者国家」と新たな戦争』
※ここ十年間の様々な戦争と世界情勢を振り返るために→毎日ムック『新たな戦争』
人文・社会・ノンフィクションレジ前コーナー2月12日分より
(小林浩/人文書コーディネーター・「本」のメルマガ編集同人)
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