紙の本
臆面の無さと職人技の第一人者特製の銀河万華鏡が見せてくれる極彩色の景観。
2002/07/22 06:17
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投稿者:螺旋式 - この投稿者のレビュー一覧を見る
栄華を極めたワールドウエッブが、盛者必滅の理をあらわしてから300年後。銀河は『パスク』カソリック教団の統治するところとなっていた。というのが超面白SF巨編「ハイペリオン」シリーズ全4部作第3弾の設定。
エェッ! いきなり300年後なんて言われてもぉ、あの人やあの人はどうなったん、テクノコアの謎は、野蛮なアウスターは一体どうしたん、という一読者の思惑は思惑として、とにかくワールドウエッブは崩壊したのだし、その後の混乱期に聖なる力で台頭した『パスク』カソリック教団は銀河に安定と秩序をもたらし、今や絶対的な支配力をもって君臨しているのだという。
なるほど、状況は飲み込めた。で、それが何か?
新世界に冷ややかな目を向ける守旧派の、ノリの悪さを見透かすように、今回もまた強引な仕掛けとネタで読者をたぶらかしにかかるダン・シモンズのえげつなさは、『時の墓標』を活性化させて300年の少女を送り出すくらい朝飯前。これを皮切りに繰り出される超絶理論のあの手この手が、大いなる意志に導かれた少女の、銀河を股にかけた驚異の旅と、「大天使級急使船ラファエル」(しかし、なんてすばらしいネーミングと翻訳のセンスだ)なんぞの優雅な船名に似ぬ、おぞましくも痛々しい再生装置での消耗を繰り返す追跡者たちの道行きを華やかに盛りあげる。
臆面の無さと職人技の第一人者ダン・シモンズ特製の極彩色万華鏡の楽しさ面白さ。
銀河を貫く一筋の河に繰り広げられる追っかけの一大スペクタクルは多彩なSF的意匠に彩られながらスリリングに展開するが、ハックルベリーとトムの冒険行をなぞる少年少女の明るさと、いかにも大人の屈折を見せる追跡者の苦悩とが対象的に配置されて、追っかけに終始一貫した大活劇に心理的な奥行きを与えている。
理屈抜きに楽しませながら、起承転結の例え通り物語の行方を転じ、読者の興味を次作へと強烈に方向付けてくれる。次は「エンディミオンの覚醒」だということで、かくなる上は胸のすくような次作の結末を大いに期待してしまうのだった。
"螺旋式","http://member.nifty.ne.jp/RASEN/endimion.html"
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前作のハイペリオンの没落から一気に300年の時が経っています。(「えー・・・300年前の皆の頑張りはなんだったんだろう」とショックを受けなくもない世界になっていり・・・)
前作の主人公の一人、ブローン・レイミアの娘アイネイアーとハイペリオン出身のエンディミオン、そして4部で正体のわかるA・Tベティックの3人がいくつかの惑星を巡るというオズの魔法使いになぞらえているらしいストーリー。
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銀河連邦が崩壊して数百年後の世界。あらたにカトリック教会『パクス』が銀河連邦を支配していた。
青年エンディミオンは巡礼の一人であったサイリーナスよりアイネイアーを護るように依頼される。
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主要人物が、女の子と語り手たる男性というのは、感情移入がしやすい
シュライク、味方になったの?
話の組み立て方ががらりと変わって、使命をもち逃げる美少女と彼女をつれて道案内をする男、そして忠義きわまりない使用人、そして魔法の絨毯を使ってテテュス川を下る! エンターテイメントとはこういうことか
デ・ソヤ神父大佐、役割的には敵なんだけれどもなんでこんなに素敵かな!
人を死なせない聖十字架が、こんなふうに使われる道具とは… 量子化するたびに死亡しながら、逃げるアイネイアーとエンディミオンを追い続ける神父大佐、ちょ、素敵すぎ
SF的ガジェットの勝利
感想を書き留める時、上下まとめて書いていたみたい
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ハイペリオンシリーズの正当な続編です。
入れ子構造の前作シリーズと異なり、主人公達に注目が集まっていて、今回は冒険物、といった具合です。
前作のその後の世界は、「没落」からはちょっと想像がつかない方向に行っていましたが、その世界観が面白いです。
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ハイペリオンからの続編。恋愛要素が入ってくるので苦手な人もいるかも。冒険色が強くなり、常に逃亡者、ハラハラする。
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久しぶりに再読。古いのではないかと危惧していたが、時間を経て尚、輝きは失っていない。また通巻で読みなおしたくなった。
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「ハイペリオンの没落」後の世界を描いています。数百年経っているので、登場人物はほぼ一新されています。
でも小説世界の奥深さ、思想の深さはハイペリオンから引き続きで、ダンシモンズの才能に舌を巻きました。
下巻途中まで読んで分かったのですが、この物語は「カラマーゾフの兄弟」で、物語の物語として出てくる、「キリストが再度現れたときの、聖職者達の振る舞い」をモチーフにしています。
それをSFにまで昇華させた技量はすばらしい。下巻の半分ぐらい読んで、やっと気づきました。
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http://shinshu.fm/MHz/67.61/archives/0000306323.html
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「エンディミオン」ダン・シモンズ/酒井昭伸 訳
SF叙事詩。赤銅色。
ハイペリオンシリーズ第3作。
前2作から300年余を経過した人類社会。
<ウェブ>の崩壊と共に自由社会が放棄され、往時の没落から一転、キリスト教会パクスが人類を統べている。
かつての最後の巡礼たちの物語は、禁書『詩篇』として読み継がれ、旧<ウェブ>の諸惑星は恒星間距離を隔てて生き延びていた。
シリーズ後半戦は、3人(と1人)の冒険譚として幕を開けます。
新たな世界の萌芽となる少女;アイネイアー、床屋で髪を切るヒーロー;ロール・エンディミオン、素晴らしき友人;アンドロイド・ベティック、小憎らしい独立A.I.;「宇宙船」。これを追うのがパクスの鉄の意志;フェデリコ・デ・ソヤ神父大佐。
もう、これだけでいかにもワクワクしてくる痛快無比のSFアドベンチャーの予感ですが、さらに前2作で明らかになった秘密を下敷きに敷き広げられる謎、惑星世界、宇宙の行く末が、ページを繰る手を止まらせません。
『ハイペリオン』の6つの巡礼の物語が多ジャンルにわたる映画を見ているようなものだったとしたら、『エンディミオン』の惑星巡りの物語は古今東西のSFを選りすぐって読んでいるようなもの。
そして要所に織り込まれる不穏な伏線…。
『エンディミオンの覚醒』の怒濤のエンディングまで一気読みです。
再読。(5)
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エンディミオンシリーズの感想として。ハイぺリオンシリーズより宗教/思想の色が濃い。完結はしたけれど、微妙だと思ってしまった。物語にでてくる沢山の惑星の設定、描写は面白い。
※1は素数じゃない。
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新刊の単行本でも買いたくなる面白さ
表紙 7点生籟 範義 酒井 昭伸訳
展開 8点1996年著作
文章 8点
内容 810点
合計 833点
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『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』に続くシリーズ第三弾。前作から約300年、青年と少女の冒険が始まる。
ズバリ前作より読みやすい。親しみやすい若き主人公と、秘密を持った少女、従順で優秀なアンドロイド、有能だがおちゃめなしゃべる宇宙船など、魅力あるメンバーで繰り広げられる冒険活劇。
さらに、彼らを追跡するデ・ソヤ神父大佐とその部下たちも敵ながら好感がもてる上、その心熱き闘いの様子が主人公たちの冒険と交互に描かれていく。文章量的にもダブル主人公制といっていいだろう。
両者の距離が次第に縮まっていく逃亡劇と追跡劇のなかで、前作までの濃密な世界観が掘り下げられていき、新たな謎が浮かび上がる。もちろん前作の人物やその痕跡が登場したりもする。本作のストーリー自体は一本道で読みやすいが、過去作で積み上げられてきた土台がさらにその面白さを増し深めているため、ここまで読んできてよかったと心底思った。
絶望的な危機を間一髪で乗り越え続ける主人公たち。果たしてその行方はいかに。そしてヒロインにまつわる謎とは……?先が気になりすぎるSFアドベンチャー。