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紙の本
日本に生まれてよかったかも、と感じる
2003/10/22 18:11
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紅豆 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こたつや布団の中でうとうととしながら、おばあちゃんに話してもらった昔話。
そんな印象をもっています。
話の内容よりも、「話してもらう」ということ自体がうれしい、そんな優しい世界を感じました。
不思議で、得体が知れなくて、少し恐ろしくて、
でも受け入れる。
だからといって博愛主義なわけではない。
主人公のギンコは、「人の子を殺す蟲」を殺そうとした時、「お前たちは悪くない。俺だって悪くない。生きていくためだ」というようなことを言います。
蟲も「なら、仕方ない」と応えました。
「殺す」ということに悩みまくったり、逆に暴力性を過剰にアピールする漫画や映画が多い中、このドライさはかえって新鮮でした。
そしてそれがかえって、「生きる」ことを表しているような気がしました。
違うものたちが同じ場所で生きるのは、難しい。
でも、それでも生きていく。
優しいのに、心にゆっくり響く、そんなお話です。
紙の本
配慮すべき静かな隣人
2008/12/14 17:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:potman - この投稿者のレビュー一覧を見る
髪型や服装からすると、大正あたりだろうか。まあ、現実世界という訳でもないから、時代を決める意味もないだろうけど。
「人間を筆頭とする物理世界と、自然の理とか集合無意識とでも言うような霊的世界を繋ぐ半精半生物の蟲に関わる蟲師であるギンコの旅の物語」結構壮大だよ、な。
良いなあ、と思ったのは、この文明化に突き進む現代社会に対する警鐘を感じさせる押しつけがましさがほとんど感じられないこと。個人レベルで、踏み込みすぎるとヤバイという話はあるけど、自然をないがしろにするといつかしっぺ返しを食らうぜ、というような説教臭さがない。
配慮すべき隣人という感じで、そのおかげで、蟲たちに俗っぽさが出ずに神秘を湛えていさせられたのではないかと思う。
気分良く心を遊ばせることの出来る、良い物語でございました。
紙の本
“生きて”いるお伽話
2002/03/01 23:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yam-cha - この投稿者のレビュー一覧を見る
柔らかい有機的な線で描かれた、人物、着衣、家屋、木々、生活風景、そうした「日常」の情景の的確な描写。その中に蠢く異形の「蟲」たちの造型。何処から来て何処に行くのかも知れぬ「蟲師」ギンコ(おそらく銀狐の音)の拾い歩く「蟲」の物語。
「蟲」とは、生命の大元に近いモノ、昆虫でもなく植物でもなく、もっと、根源に近い、ナニカ。それはそこにいる、確かにいるが、それを見る事が出来る者とそうでない者がある。本当は、皆、それを見る力を持っているはずのもの—それが、「蟲」。採り様によっては自然そのものとも受け取れるのかも知れない、が、その解釈はあまりしたくない。「蟲」は「蟲」として存在するもの、なのである。
「蟲師」とは「蟲」に取り憑かれた人のもとを訪れ、その災いを取り除く事を生業とする者たち。だが、ギンコは蟲師の中でも異端の存在のようだ。彼は、蟲と共存する事を望んでいるように見受けられる。取り憑いた蟲の所為で、恐ろしい事態を引き起こしてしまった男に、ギンコは呟く。
「お前に罪などないさ。蟲にも罪などない。互いにその生を遂行していただけだ。誰にも罪などないんだ」
少し変わった味付けの昔話のようなストーリィと、蟲の造型や設定、ギンコの立場は…こ、この喩えは極力使いたくはなかったのだがッ…某宮崎駿作品のような色合いです。
が、宮崎作品とは決定的に違う。何が違うって、ギンコはなにも「目的」を持っていない。なにも「拠り所」を持っていない。ただ「己」が在るだけ、の存在。だからこそ、彼はリベラルでニュートラルに成り得る。
淡々とした語り口ながら、物語はかなり深いところを抉ってくる。“人”の幸せとは何なのか、今自分が“そう”と信じているものは、本当に“そう”なのか、“行って”しまった方が幸せなのか“留まって”苦しむのが人間なのか。ギンコは「留まれ」と呼び掛ける。だが無理矢理にそうさせはしない。選ぶのは、自分自身、なんだから。
ギンコのヌケた態度がいい。銜え煙草(本当は煙草ではないのだが)もシケモクっぽいのがイカす。全ての登場人物が各々に生きていて各々に闇を抱えている、その生々しさがきちんと伝わってくる。最初にも書いたが、日常風景の描写の的確さと、それらの登場人物の所為で、「日常に投げ込まれた“非日常”」もしくは「日常の裏側に在る“真実”」の怖さが引き立つ。
「柔らかい角」の、“聞こえぬはずの音”の絵が秀逸。「筆の海」の蟲封じも奇抜で面白い。非常に怖い話もある、あまりにも哀しい話もある。激情さえも淡々とした筆致で描かれる、その所為でそれはより一層こちらの心に入り込んでくる。物語自体は荒唐無稽なのにも関わらず、すんなりとその中に入って行っている自分に驚いたくらいだ。この物語自体が、作者の生み出した「蟲」なんではなかろうか、と思う程である。
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