紙の本
TEENS小説はリアリズムを志向できない
2004/06/17 06:59
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:13オミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんて言うのかなあ、いつも青春小説読んで思うんだけど、17歳以下ってほんとにこんなこと考えてんのかなあって。こんなに理知的であったはずがなかろうって。表現力も人間観察力も全くないんじゃなかったかって。作家は青春小説に関しては、もっとリアリズムを志向すべきだろうって。30代の思考で10代のころを描くのは邪道なんだなあ。だって、恋も死も「あの子とえっちしたい」「ぜったい死にたくない」という思考しかなかった気がするのはあたしが馬鹿だから。
「洪水のあとに」の那由多の章で、ちょっと付き合った薫から連絡がなくなる。と言っても、那由多の方から着信拒否しているので仕方がない。で、那由多は「安心もしたし、その程度のものかと拍子抜けもした。…薫は私を好きだと言ったし、私も薫を嫌いではなかったが、でもそれだけでは一緒にいるには足りないものがあるのだろう。」と言う考え。そして、もっと食い下がるための何かが、私たちの間には生まれなかったんだなあ、と結論づける。これ身につまされます。
「地下を照らす光」の淑子の章で、学校の先生と付き合っているが嫌われているんじゃないかと疑い始める。そこから周囲との人間関係に思考は波及し「私は一人だ。土曜日の午後、委員会のあいだじゅう、私はそんなことを思っていた。誰も私を一番にはしない。先生も、なゆちゃんも中谷さんも。」と考える。これも身につまされます。
「廃園の花守りは唄う」の翠の章で、レズ思考?にどっぷりと浸りながらいわゆるマーフィーの法則を夢想する。「周囲につられるものなのか、人の動きにはなぜか波がある。だれ一人としてレジに本を持ってこないかと思うと、急に多くの人がレジに殺到してくるときもある。潮の満ち引きみたいで不思議だ。でも理解できない。」買うものが決まっていれば空いているときにさっさと会計を済ませればいいのに。レジが混んでいたら少し時間を潰せばいいのに。と批判の目を向ける。
この中で最もいじめたくて可愛がりたいのはやっぱ翠かなあ。理性だけで物事を判断するタイプだけど、はまったらどこまでも行くって感じだからねえ。かなり美形らしいし。
この3人が22歳になったときの状態と思考を書いてほしい。知識が増えることで、何が変わって何が変わらないかを描いてほしいです。
紙の本
「記号でも消費物でもない」女子高生の心と行動を描ききるフェミニズム小説の誕生
2002/03/23 17:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佛頂面 - この投稿者のレビュー一覧を見る
那由多、淑子、翠という3人の女子高生を語り手として、物語を展開していくという手法が新鮮である。しかも、物語は、それぞれの主人公の性格付けと見事なまでに対応した文体によって語り変えられており、三浦しをんという作家の才能の豊かさを、今までの作品以上に実感させてくれる。
伝統のあるカトリック系女子校の雰囲気が、この物語にはぴったりである。現代に生きる少女たちの心と行動が、メディアや軽薄な社会学者らによって誇張され商品化された女子高生とはまったく別な、ホントウの生き物として息づいている。幼いころに受けた傷が激情となってほとばしり出てしまう那由多の衝撃的な行動、心から男を愛してしまったお嬢様・淑子の揺れる心と最後の決断、冷静に理知的におのれを抑制する翠の消すことのできない羊水への記憶、オムニバス的に展開する3人の少女たちの語りに引きずり込まれ、少女たちの心と行動にシンクロしていく……。
これはとても心地よいことであり、男としては同時に異和をも体験することになる。ハッピーエンドではないが後味はけっして悪くはない。3人ともしっかりと大人になってゆくはずだと思わせてくれる。その余韻もいい。消費されない女子高生を描くために、これはとても大切なことだろう。真のフェミニズム小説の誕生を、素直に喜びたいと思う。
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幼い頃に受けた性的いたずらによるトラウマを抱える那由多、教師との不倫に悩む淑子、那由多にひそかな思いを寄せる翠。カトリック系女子高に通う17歳の3人の少女たちが織りなす心理&青春小説
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最初に一つ良いですか、あたしは私立の女子校なんかに通えるような家庭環境ではなかったので、解んないんだけど、「カトリック系」と「ミッション系」ってのは、同じ意味なんですか。というわけで、そーゆう中高一貫の女子校に通う少女3人を巡る、それぞれの視点から描いたオムニバス小説。一話目『洪水のあとに』は那由多の視点から。二話目『地下を照らす光』は淑子の視点から。三話目『廃園の花守りは唄う』は翠の視点から。
それぞれ個性のあるキャラクターだと思う。ただ、こう書くと三人は特別な関係のある友達同士のように見えるけれど、普通とはちょっと違う交友関係にある三人である。那由多は幼い頃に見ず知らずの男性から触られた経験があり、またそれをハッキリと、「イヤなことをされた」と記憶していて、その傷を癒すことのできないでいる。母が死に、父と弟との3人暮らしで、自分のそうした経験を、話せる相手も居ない。それが恥ずかしいことで、まるで自分が悪いことをしているかのように、誰にも相談出来ず、誰からも助けて貰えず、どうすればいいのか解らない。そんな想いを抱えたまま、肉体は大人の女性になり、平均以上に美しく育った那由多なだけに、そういった男性の視線からも逃れる術を持てないで居た。自分は悪くない、悪いのはあいつらだ、そいうハッキリと誰かに言って欲しくて、誰か助けて欲しくて…。
淑子は国語の男性教師を好きにあり、積極的に気持ちを伝えた結果、関係を持つようになった。好きで好きでたまらない、先生が居なければ、意味がない…女子校という閉ざされた空間と、裕福な家庭に育ったもの特有の規則に縛られた生活の中で、淑子にとってはそれが自分の全てとなっていた。でも、淑子だって単なる恋する子供といえる年齢は問うに過ぎ、大人と同じように現実を見聞きし、周りの大人が子供扱いするほど世間知らずでもなかった。先生が自分を本気で相手にしているわけではない、ということは認めたくないと思いつつも、それが現実だとも認識している。
翠の、体の弱い母が、自分より前に宿した兄は、存在しない。兄が生まれなかったから、自分が生まれているのだと、存在しない兄への思いをいつまでも引きずる翠。翠にとって唯一心を許せる相手、那由多とタダの友人とは言い難い、不思議な関係。けれども実際、過去から今へと至る童話とかに登場するお姫さまを見ると、100年寝たきりのお姫さまもいれば、自ら魔女へと闘いを挑んで勝利するお姫さまだっていたりと結構さまざま。人が典型と思っているのは実はそれほど典型ではなくて、むしろそういった典型に押しこめようとする人の(お姫さまの場合は男の)意識が無理矢理に作り出した幻想でしかない。世の中はいろいろな人たちに溢れていて、決して典型には収まらない。女子高小説や女子高マンガ、と聞けば思い浮かぶ典型がある。友情があって嫉妬があって同級生との恋があって教師との愛があって……といった学園生活によくあるエピソードの中から、醸成され深まる仲間たちとの絆に読んで納得してしまう、といった内容がそれ。読む方もそんな典型が生むカタルシスに、気持ちをホッとさせようとするところがある。
あたしはこういうオムニバス形式で作られている話がスゴく好きだ。何故かというと、全く同じ時間軸で、別々の人間がそれぞれ進行形で何かをやっている、というその、リアルな情景描写が好きなのだ。まぁそれがリアルかどうかは解んないけど、でもあたしには、それが「現実だよね」と納得する想いがある。主人公がいて、脇役がいて、それぞれがそれぞれ、当然重要な役目を果たしているのだろうけれど、誰か一人からの視点で物語が描かれて、進んでいってしまうというのは、面白味と説得力に欠ける気がする。この話に関しては時間軸そのものは同じではなく、多分、それぞれが微妙にずれて時間は経過しているのだけど、でも、各人の立場からそれぞれの気持ちを読めるというのは、面白いと思うのだ。最近はよくある形式だけどもね。
那由多は、適度の社会性を持ち、怪しまれない程度に友を得て、学校生活を送る。淑子は、最も一般的、常識的な年相応の女子高生として描かれ、やはりそれ相応の悩みしか持ち合わせていない、本当に普通の女子高生であり、また本人も那由多や翠のような独特の、異才や魅力を放つ程の人間でない事を知り、疎外感と苛立ちと嫉妬を隠している。翠は、まさに寡黙でニヒリスト、完全に自分と社会との壁を生成し自分の内側に入る事を許した唯一の存在が、那由多でもあるのだが、しかしその、排他振りは常軌を逸しており、この年頃の女の子としては異様な強さを持っている。
それぞれが、それぞれに持つ魅力が、三人を辛うじてつなぎ止めているのだろうが、そこにある関係は、あたしはとても薄っぺらいモノに見える。これが、登場人物が粋と那由多のみだったのなら、2人の強い絆を読みとることが出来たのだけど、ここには、淑子が居る。むしろ、なぜ那由多と翠という2人の強烈な個性の間に、淑子という、ごくごく普通の女の子が加わるという設定が興味を引く。淑子は那由多のことを「なゆちゃん」と呼ぶが、翠のことは名字にさん付けである。翠は那由多のことを「那由多」よ呼ぶが、淑子のことはやはり名字にさん付けである。そして那由多は淑子を「淑子」翠を「翠」と呼び、淑子と翠の関係をつなぎ止める立場にある。そういった三人の関係も、なるほどな、と思わせる設定だ。
ただし、冒頭にも書いたように、あたしはミッション系とかカトリック系とかいう意味も理解出来ていない、つまり私立の女子校というものを知らない為、この登場人物のような人間が本当にいるのか?という疑問をぬぐい去れない。色々女子校の物語を読んでいるが、大抵ミッション系の高校ばかりで、世の中の女子校とは皆ミッション系なんだな、と勘違いしそうになるけど。実際の所、小説で描かれやすい「美しい同性愛」や「ハンサムで若い男性教師」や「ハッとするような美しい人」は、いるのか?そんなのさ、高校生位の女の子の種類なんて、共学に居る女の子とさして変わりないのではないか?あたしの行っていた高校は普通かではなかったので、女子の率の高いクラスだったのだけど、そんな漫画みたい女の子は居なかったぞ。
ただ、日常生活で異性を意識しない環境にある女子というのは、興味があるけれど。著者もミッション系の女子校出身みたいだし、すごく興味はあるよ、やっぱり。異性を意識しないでいる期間の長い女子と、思��期に普通に異性を意識させられて育った女子との差が、知りたいところである。このむずかしい年頃の少女達について、たった3パターンだけだとしても、こういう子らがいる、という事に目を向けられて良かった。個人的には、那由多の、綺麗や翠の綺麗すぎる所とか、わざとらしいなって思ってしまうし、淑子の恋愛も教科書的で詰まらないと思ったけど、この年頃の女子にはホントにワクワクさせられるなとつくづく思う。那由多が男性を差別しているところも、翠が那由多に特別な感情を持っていることも、確かにそれは年頃の女子らしい特徴であり、やっぱり興味深い。多分淑子は心配なく成長して、心配なく適度な幸せを手にするだろう。でも那由多はどうなるんだろう?翠は?いや、きっと淑子同様、心配する必要もなく、仕事でもしつつ恋愛でもしつつ結婚して綺麗で個性的な子供を産んで、自分と同じような生き物をまた生み出すんだろう、とは思うけど。
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ミッション系の女子高に通う三人の女生徒の物語。それぞれが複雑な感情を持っていて、それをあけすけにぶつけるでもなく、淡々と、しかし結構したたかに過ごしていく。語り手が那由多→淑子→翠という順番も肝心。
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青春の少女たちの気持ちを、とても新鮮に描いていて
さすがだな〜と思いますね。
話はどっちかと言うと、ドロドロしてるんですが
那由多と翠が新鮮な風を送り込んでくれているので
苦らくもなりすぎず、話は進みます。
読み終えた後に、この続きが読みたくなる・・・・そんなお話でした。
私は面白かったです。
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文学的な少女漫画っていう感じです。カトリック系の学校に通ってる3人の少女の話。3人目の子の話がイマイチ掴みにくかったのが残念。
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友情の三すくみ状態。
登場人物達の境遇とは全くダブる事はないのだが、思春期の友人関係のもつれをリアルに描いているなと関心する。特に女性。心当たりのある方は多いのでは?
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百合のにおいがぷんぷんする(作者もきっと確信犯だろうけど)お話。カトリック系女子校生3人の心を描く。ただ雰囲気以外はイマイチわからず・・・
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自分勝手な言い分がさすがにおかしくて、私は一人で笑った。そこまで薫に、いや、自分以外の人間に求めるのは異常だ。私は異常だ。自分のクローンと恋をするしかない人間だ。
(P.21)
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三浦しをんを「へっ」って思っていた自分のばか!と反省した本。いや、おもしろかった!女の子だけのギュッとした濃いけど繋がりは希薄な小説。淑子の話がいちばんよい。危機感があって。翠の話はもっと翠がギリギリだとよかったのに(そういうキャラじゃないが)
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私は高校時代、那由多のようなトラウマも無かったし、淑子のような恋もしていなかったし、翠のような思いを抱いたことも無かったので感情移入とまではいきませんでしたが、彼女たちの思いは分かるような気がします。何となく、ですけど。
3人の少女たちはそれぞれ悩みを抱えていて、決して明るい物語とは言えないんですが、とても瑞々しい物語ではないでしょうか。欲を言えば彼女たちのその後が読みたかったです(巻末にちょこっと“おまけ”のようなものは載っていますが…)。3人の悩みは解決しているようで、実はしていない訳ですし…あぁ、でもその点は読者の想像にお任せ、なのかしら。
舞台はカトリック系の女子高。そして、このタイトル。タイトルは三浦氏がつけたものではないそうですが、すごくピッタリだと思います。読んでいるうちに本当に彼女たちの秘密の花園へと足を踏み入れてしまったかのような気分になりました。
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思春期の女の子の小説、ときたら痛くて読めないだろうか、と思いつつそうでもなく。性愛の要素が入ってもそれほど生臭くないのが有り難い、とても。三浦しをんの小説に対して、人間の書き込みが足らないとかそんなきれい事で済まないだろ、という批判を見たことあるけど、この人はそれくらいでいいよ、と思う…のだけど…甘いのかな。
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カトリック系女子高に通う3人の女の子のお話。何か洪水のようなものがせまってくるような気がする那由多、教師と付き合い終わりを恐れる淑子、存在しない兄に語りかける翠。語り手は変わってゆくが、話は繋がっている。どの話にも切れ掛かった糸のような危うさを感じた。それが17歳・女子高生なのかもしれない。
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女子高生の思春期の危うい雰囲気がばっちりでている。トラウマ、禁断の恋、同性への思い。この年代だからこそ秘密の花園と言える雰囲気がすき。