紙の本
武闘派少女の活劇、と言うよりは……
2002/08/02 01:08
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投稿者:三鏡 智史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国の「忍者」とも言える少女、十三妹を主人公とした小説。
さぞ痛快な活劇を繰り広げてくれる……と思いきや、
実はその旦那である書生青年の登場の方が遥かに長い。
この旦那は無罪の罪で苦しむ身内のために長旅に出かけるのだが、
慣れない旅をするばかりにあちこちで苦難に襲われる。
そして十三妹はそれを陰から手助けするというのが大まかな粗筋である。
「忍者」的な主人公だけに派手な活躍をしないのは理に適っているかもしれないが、
しかしあまりに彼女の印象は薄い。
彼女に密かに恋焦がれながらも敵対するライバルといった登場人物はいるが、
どうもその設定を生かしきれていない気がしてならない。
一読した限りでは青白い書生青年の成長物語といった感を受ける。
「切れる妻を持った情けない旦那の憂鬱」といったものが根底に流れる
テーマとしてあるようで、その辺りの描写は見事である。
受験勉強ばかりしてきた男が世間の荒波に揉まれつつ、
切れものの妻を持った事で思い悩む小説と言うべきか。
少なくとも扉絵の少女の物語と思って読むと肩透かしをくらうだろう。
この小説の主人公は彼女ではなく、その旦那の方である。
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田中芳樹の解説によれば、中国の傑作古典文学「児女英雄伝」と「三侠五義」をミックスしたパスティーシュ。武侠小説というから金庸のような出来を期待したのだが、案に相違、筋も新聞連載小説らしく散漫で、迫力もなく、キャラクター造詣も一貫しない。日本における中国武侠小説の先駆であったという点を考慮に入れても、現代の観賞に絶える作品ではない。はっきり言って、田中芳樹の解説が一番の読み所だった。児女英雄伝と西廂記は読みたくなったぞ。
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キャラクターはまぁ良いとして。
なんか物足りないんだよなぁ。。。
それぞれ元となっている「児女英雄伝」「三侠五義」を読んでいればまた違った面白さが出てくるのでしょうね。
というわけで、上記2作品を読みたくなった、その足掛かりとしては良かったかな?と。
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武田泰淳による中国古典文学のパスティーシュ・・・言うなればホームズVSルパンみたいな作品で、時代の異なる別々の古典の有名登場人物達がお互いにかすかな恋心を抱いたり闘ったり、当然の如くキャラが立っていて楽しい作品。
表紙のイラストも漫画っぽいが、内容もそのままアニメにしてもよさそうな感じ。続編の構想があったらしいが、結局書かれなかったそうで残念。
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面白かった。
でも「もう一回読みたい!」と思わなかったと言えば嘘になる。
元ネタの古典知識があれば面白いんだろうなぁ。
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武田泰淳の十三妹を読みました。中国の女傑十三妹(シイサンメイ)の物語を講談のような語り口で語った小説でした。美人の忍者十三妹と富豪の息子のぼんぼん安公子、忍者の白玉堂こと錦毛鼠が登場する清の時代の中国の物語でした。手に汗握る物語なのかも知れませんが、講談調で語られるのであまり感情移入は出来ませんでした。やはり40年以上前の小説だからでしょうか。
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強い女性というのは魅力的であるが、本作も、その魅力が存分に発揮されていたと思う。
十三妹に魅せられて、すぐに読んでしまった。
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本場の武侠小説が読みたくなってきた!
三侠五義、児女英雄伝も。
図書館と本棚探って読み返そう。
ちなみに、この本、後半の一部ページが文字ポイント小さいんだけど何でかな?
田中芳樹の注釈も味がありました。
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武芸百般に通じ頭脳明晰、しかも美貌の持ち主という文句の付けどころが無い女性、何玉鳳。
その実態は、過去に何個もの男の首を落としてきた伝説の忍者十三妹。
今では科挙合格を目指す美男の坊ちゃん安公子の第二夫人。
平凡な人妻の生活を満喫する…間もなく、方々で厄介ごとに巻き込まれる夫を毎回影から甲斐甲斐しく助ける日々。
更には彼女と浅からぬ因縁を持つ好敵手・白玉堂も登場し、風雲まさに急を告ぐ!!
アクション、のち時々昼メロ(未遂?)。
中国の古典小説に取材しつつも独自の世界が展開される、1966年に刊行された中国武侠小説の先駆的作品。
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約50年前に、中国の3つの古典をミックスして書かれたラノベの先駆的な?作品。
十三妹という美少女女傑(人の首を刎ねるの楽勝)が、夫である安公子という頼りない坊ちゃんを陰ながら助け、ひいては国家の闇に暗躍するストーリー。
十三妹の能力ならば華々しいアクションが多々あってもいいはずが、それ程見せ場がないのは惜しい。一応話は完結してるっぽいが、闇の世界のライバル白玉堂と十三妹、安公子の三角関係や第1夫人と第2夫人(十三妹)との関係とか、もっと膨らませられる余地はありそうなのに、続きがないとか色々残念だが面白かった。
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中国の武侠小説を題材に取って、自由にリライトした作品です。
主人公は、「十三妹」(シーサンメイ)こと何玉鳳。彼女は中国全土に名前の知られた女忍者ですが、現在は科挙試験の合格をめざす安公子の第二夫人の座についています。そんな彼女たちの暮らす家に、「錦毛鼠」こと白玉堂という賊が忍び入り、十三妹にメッセージをのこしていきます。十三妹と錦毛鼠とのあいだには、過去に因縁があった模様で、十三妹はすこし頼りない夫の安公子を影から見守りつつ、錦毛鼠とわたりあっていきます。
解説は、『銀河英雄伝説』シリーズの田中芳樹が執筆しており、本作が新聞連載されていた小学生時代、熱心に読みふけった思い出が語られています。現在のライトノベルにまで連なる戦うヒロインものの小説の系譜を、ここにたどることができるのではないかというような想像をしたくなります。
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中国の女剣士が主人公。中国古典のキャラを使って日本人が書いたものらしい。主人公の十三妹が何を考えてるのかイマイチわからない・・・というのは夫である安公子と読者が共有するところか。そんな夫ですら理解しない十三妹の理解者なのか敵なのかよくわからない白玉堂がいい。女性憎悪を拗らせて若干ホモだけど。昭和41年作だそうでちょっと驚く表現があった。続きを書くつもりだったようだが作者はもうなくなっているのが残念。今だったらもっとウケただろうに。そして薄い本が出まくったろうなー。
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昔流の言い方ですれば「娯楽小説」
現代的言い方は「日本人によって書かれた中国三大古典のバスティーシュてきリライト作品」
だそう
中国の古典からとった「中国版女忍者の妻が、か弱き夫を助けるの巻」
1966年の新聞小説で、この文庫本も2001年に再録
だからか今頃読んだ私が悪いのか、その後の日本の作品に似たのがあって
わたしも少しく読んでいるので、既視感に襲われた
例えば
これってTV時代ドラマ「妻はくのいち」を見たものにとっては焼き直し感
あの市川染五郎さんがはまり役でその印象を振り払うことが出来ない
浅田次郎さんの『蒼穹の昴』に描かれる科挙試験時のすさまじき戦いぶりがそっくり
とはいえ
昔者のわたしはこっちが本家だと応援したくなる
武田泰淳さんは『森と湖のまつり』を若いころ読んで、
北海道、アイヌ民族を書き込んであって、印象深く好もしく思っていたのよ
このような娯楽本も手掛けていらしたんだなあ
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こういう場面転換や状況説明って面白いなあ、と思った箇所が幾つかあったのが印象的だった。
例えれば、いつぞやの歴史ドラマで話題になったナレ死や40秒関ヶ原のような。
わりと重大なことが起きたにも関わらず、それに紙数を割かずにサラッと流す。
熱血活劇っぽい内容になりそうなところ、さくさく読めるのはこうした描き方故かも。
で、さくさく読めるし展開も面白いのだけど、武俠小説ってこんな感じだっけ?…とも思う。
いや、武俠な人が出てくるから武俠小説ではあるんだけど。
金庸の『書剣恩仇録』や『雪山飛狐』ほか短編を読んだことがあるけど、それに比べるとかなり大人しいストーリー。
血わき肉おどる、江湖の好漢と悪人が超人的技をつくして戦う!というものではない。
幾度か作中で使われる「忍者」。忍者小説といったほうが適しているのではと思う。
とはいえ、その金庸作品も50年代半ばから70年代はじめに書かれているので、時代的にはこの作品と重なる。
日中双方で、同じ時期に、どう武俠小説が描かれたのか、比べてみるのも面白いかも。
余談だが、田中芳樹氏による解説で、『児女英雄伝』のコミックが潮出版から出ていると書いてあるが、
これは『銀河鉄道999』で知られる松本零士による作品。
あくまで『児女英雄伝』を元にしたもので、原作コミカライズではない。
加えて、後年『銀河鉄道999』の続編シナリオに組み込まれ、十三妹は松本零士作品のキャラの刀を継承、銀河鉄道を守る女丈夫となっている。(もとよりそれを意図とした敵や舞台設定にもみえる)
999を含む、複数のものが共通世界にあるという松本零士作品の一部という内容なので注意のこと。
(松本零士作品として読む分にはまあまあ。同年の999のように問題が解決することも進展することもない、思わせ振りなシーンだけで終わる。十三妹、いいキャラになりそうなんだけど…。残念ながら99年に出た二巻を最後に未完)
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泰淳の描きっぷりが楽しい中国歴史小説
『児女英雄伝』、『三侠五義』、『儒林外史』をミックスにまとめあげられているもので是非元ネタも読んでみたい
田中芳樹の解説が分かりやすくてその通りなんだけど、泰淳が十三妹の心の描写がわざと書いてないから安公子をどうして守り続けているのかとか安公子に対して何を思っているのか分かんないのも面白い
逆に錦毛鼠に対しての方が感情が揺れ動いていて読んでてドキドキしてしまうのも面白い
続篇が結局書かれないままだったのが悔しいけどこの終わり方はこれで良いとも思う