紙の本
弱さを許し、苦しみながら生きてゆく術を知る。
2003/01/05 22:23
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:花代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
田口ランディさんのメールで本書を知り、購入。北海道・襟裳岬に近い浦河町の、精神科病棟を退院した人たちが集う「べてるの家」での、地道な社会復帰への足取りの様子が、ある意味コミカルに描かれている。自分たちが突き放されたはずの「会社」「商売」を、自分たちで興すことによって、清く正しいボランティア精神とは全く異なる、現世のゴタゴタ・もやもやに七転八倒し、生き難さに向き合い、そして生きてゆく。病気(幻覚や妄想、おかしな行動)を抱えながら、仲間との「ミーティング」によって、乗り越えてゆく。というか、「乗り越えようとしない」ことによって、その苦しみを乗り越えてゆく物語である。
精神を病んでいる人は、人とのコミュニケーションに大きな障害のある人だが、多かれ少なかれ、私たちも人とのコミュニケーションに悩み、疲れている。そのときに、自分自身のその悩み(嫌悪や妬み)を打ち消し自己否定にはまるのではなく、いったんその自分を認めて(許して)、仕方ないと割り切ってしまえば、その悩みとどう付き合っていけばよいかを考えることができる。
自分が万事順調なら右上がりの前向きさでもってドンドン突き進めばよいが、うっかりすると人にも押しつけがちである。「あんなウジウジ悩まずに前向きに生きればよいのに」「あんなドンくさい人は放っておけばよいのに」なぞと、自分の価値観でお説教なぞする人が多いが、全くもって「大きなお世話」、しかも、それを本人が全く気づいていないから始末が悪い。
自分と人の弱さを、否定するのではなく、許して、その弱さに苦しみながら生きてゆく術を身につけたい。
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自分のありのままを受け入れること・・・とても難しいことだけれど、この本を読むとそれがとても大事なことなのだと思うことができます。分厚い本だけど、読み応えはばっちり。
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右肩下がりの援助論。社会復帰を促さない援助論。自分が意外と固定観念にとらわれていることに気付かされる。援助者と被援助者の間に垣根はなく、混ざって一緒に生活するものなのだと思える。
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純粋な人、自分を曲げられない人ほど、心折れる世の中だもんね。当事者による研究は世界に発信していける貴重な記録だと思います。
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[ 内容 ]
浦河べてるの家は、精神障害をかかえた人たちの有限会社・社会福祉法人である。
昇っていく生き方はもうやめた。
リハビリなんて諦めた。
病気の御旗を振りながら、べてるは今日も明日も降りてゆく。
苦労と出会うために「商売」を。
悩みをとりもどすために「経験」を。
「弱さ」と「語り」をキーワードにした、右肩下がりの援助論。
[ 目次 ]
「べてるの家」ってこんなところ(今日も、明日も、あさっても―べてるはいつも問題だらけ;べてるの家の歩みから―坂道を転がり落ちた一〇年がくれた「出会い」)
2 苦労をとりもどす(地域のためにできること―「社会復帰」という切り口の貧相;苦労をとりもどす―だから私たちは商売をする ほか)
3 病気を生きる(三度の飯よりミーティング―話し合いは支え合い;幻聴から「幻聴さん」へ―だんだん“いい奴”になってくる ほか)
4 関係という力(弱さを絆に―「弱さ」は触媒であり稀少金属である;それで「順調!」―失敗、迷惑、苦労もOK ほか)
5 インタビュー(社会復帰ってなんですか?;病気ってなんですか?)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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読みやすかった。浦河に住んだら障害を持っていても住みやすいだろうけど、住み慣れてしまったら他の町に住むことはできなくなるだろうなと思う。
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発想の転換で、これまで人は楽になれるのか。
統合失調症の人のための支援施設、べてるの家。
そこでの取り組み、そして集まってくる人を紹介した本。
深刻なのに、ユーモラス
支援されるはずなのに、別の人を支援している
スタンダードを目指して、無理してがんばらなくてもいいことが、
どの章からも伝わってくる一冊。
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「失った苦労の醍醐味を取り戻す」
向谷地さんのソーシャルワーカーとしての理念。
そのためにべてるは商売を始めた。
「努力の末に病気や障害を『克服』し『健常者』の社会に復帰する」という物語に切り捨てられた人たちが、新しい価値観をもって現実の中に飛び込んでゆく。
「利益のないところを大切に」
べてるの会社としての理念。
利益、利益と追求して人間を粗末にするのではなく、利益のないところを大切にすることが会社の利益につながる。
「降りていく」会社。
今日も明日もあさっても、べてるは順調に「問題」だらけ!
「障害」について、「社会」について考えるときに、留意しておきたいことがたくさん詰まった一冊。
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【読書】北海道浦河町にある社会福祉法人浦河べてるの家。主に精神障害を抱えた17歳から70歳代までの100人以上の当事者が昆布の産地直送事業や紙おむつの宅配事業など、多種多様な活動をしている。えにし屋代表清水氏のコラムにあるように、べてるの家では、日々問題ばかりで多くの葛藤や悩みを抱えながらも、ユーモアに溢れ、互いを支え、絆を深めあっている。べてるの家にいる障害者の方々は想像もしなかった精神病院への入院を経験し、 自分の運命に悩みながらも、自分の人生は意味あるものだと見出している。役人として最近思うのは、やはり感覚論として納得するだけではなく、抽象化をして、様々な方策を考え、少しでも今の現状の政策の改善につなげること。それこそが役人に求められている。予算措置でできるのか、法改正でやるか、政省令か、運用か。まだまだ勉強することは多い。
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北海道浦河にある商人集団べてるの家の本(実話)です。障害者である彼らが真剣にぶつかりあいながら商売に取り組む姿は、覆面を被って生活している私達の方こそ、何かおかしなものあるのではないかと思わせてくれます。
障害者と申しますと、過保護に腫れ物に触るといった有り難迷惑な態度をとりがちですが、これを読むと客観的に自分達の態度を見つめなおし反省し変われるかと存じます。
楽しく非常に勉強になりました。この本と出会えて本当に良かったです。
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著者名が「浦河べてるの家」とあるにもかかわらず、向谷地さんだけが書いた本だと思っていた。それは自分の、社会が精神障害者に偏見を持っているという偏見の表れだなって思いました。当事者も言葉を持っている、持てるようになるってことを大切にするっていうのが、べてるの特色なんですね。
単に理論だけの本ではなく、そういう理論ができてきた過程を、楽しいエピソードとして読めるのが面白い本だと思います。
ほぼ引きこもりとして感じてきたことですが、社会復帰というのは、多く「正社員になること」を意味しますよね。その「社会」には健康な正社員しかいない。本当は、引きこもりだって精神障害者だって含んで社会なのではないか。
それなのに、多くの人が何の疑いもなく「社会復帰」と言ってきますし、自分に対しても「社会復帰しなければ」と思ってしまう。口では「こんな社会に適応できるやつの気が知れない」って言いながら劣等感でいっぱいだった。
この本を読んで「自分は本当はこういう苦労をしたかったんだ」って気づけたように思います。
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かくあるべし、
な精神障がい者への関わりかたから遠く離れた場所で書かれた本。
精神病で町おこし
弱さの情報公開
安心してサボれる会社づくり
幻覚&妄想大会
などなど
面白いけど肩の力抜きすぎじゃないかと思っても
年商一億円としっかり成功させている。
頭と心が固くなってると思うときに読み返したい本です。
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以前から、存在は知っていたが、パラパラ読みで統合失調症の人たちの話と知り、読まずにいた。ちなみに私はうつ病を患った。
暇つぶしに図書館で手に取り、そのまま借り出して、一気読みした。
あらゆる精神障害に悩む人、職場や家庭で悩みを抱えている人、生き方に悩みを抱えている人にお勧めしたいと思う。
今の社会に静かに「No!」を突きつけ、別の社会のあり方を模索し、創り、実践している人たちの記録と思想が描かれていると思う。
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予想以上に、エキセントリックな場所でした。べてるの家。
なかなか理解に苦しむ世界観。こんな場所はほかにないなあ。
でも、ここにいれば、ほんとうにどんな人間でも認めてくれそう。
こうやって弱さを認めてくれるような場って、だれにとっても必要ですね。
勉強になりました。
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読んでてビリビリきた。
詳細なレビューをブログに書きました。
http://ontheground2.tumblr.com/post/68331129443