紙の本
目覚めても目覚めてもまだ悪夢の中に居るような
2004/06/09 08:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:べあとりーちぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初のページを開いた時から、きっと誰でも漠然とした違和感を覚えるだろう。どこかが、何かが、フツウの本と違う。その感覚は正しい。すでにそこから、本書の仕掛けは動き始めているのである。
主人公は「私」。婚約者の父親である作家・藤井陽造が変死し、彼の残した謎の言葉「メドゥサを見た」について調べるうちに未発表の原稿の存在に行き当たる。遺品の創作ノートから石海という土地が深く関係していると知った「私」は、調査を続けるうち、次第に不可思議な出来事に巻き込まれていく…。
ストーリーについてこれ以上詳しく触れることはできない。物語そのものが、小説の作りそのものが、本書に張り巡らされた一種のトリックの鍵になっているからである。生前の藤井陽造が語った「人は平均して何人の死に関わるのか」という意味深な言葉、食い違う記憶、消えてしまった1日。眩暈に似た感覚の中で読み進め、すべての謎が解き明かされるかと固唾を呑んだ瞬間、どんでん返しのように読者は迷宮に突き落とされる。あとは夢と現の狭間をさ迷い歩くばかり。
全体の雰囲気としては、岡嶋二人名義の『クラインの壺』と通じるものがある。『クラインの壺』が好きな人なら、間違いなく本書も気に入るはずだ。本書はある意味さらにパワーアップしているので、うっかりすると乗り物酔いを起こすかもしれないが。
実はこの『メドゥサ、鏡をごらん』を読むのは今回が初めてではない。講談社刊行のノベルスで、間違いなく過去に読んだことがあるはずなのである。それがどういう訳かストーリーをさっぱり覚えていない。これほどキョーレツな物語もそうはないというのに。
何年か前ノベルスを購入して読み、大変に怖い思いを味わった。あんまり怖かったので本を手元に置いておくのが辛くなり、知人に譲り渡したのだ。その時の「怖かった」という感情だけが残り、ストーリーのディテールは記憶から消されたらしい。
そういう訳で今回再読した時は、ページをめくる端から「あ、ここは確かに読んだことがある」と追体験する奇妙な感覚と、それなのにラストがどうだったのかさっぱり覚えていない(ある朧気な予測は感じつつも)…という、実に内容に相応しい不安定な気分でいっぱいだった。うっかりナイトキャップとして読んだら、夜中に汗びっしょりで飛び起きるほど怖い夢を見た。
井上夢人氏の十八番であるところの「自分は本当に自分なのか」、「自分の体験は正真正銘の現実なのか」が無闇と効いている本書。筆者のように、自我の足元がグラついている人間にはタブーだったかもしれない。特に寝しなには。
一息入れて寝直す時、確かに記憶通りノベルスは誰かに譲ったことをどうしても確認せずには居られなくなり、つい本棚漁りをしてしまった。あげたはずのノベルスがもしも棚に収まっていたら絶叫モノだぞ、やめろ! とアタマの中でもうひとりの自分が窘めているのだが、どうにも衝動が抑えられなかった。
この件に関しての記憶は確かで、本棚の井上夢人コーナーに『メドゥサ、鏡をごらん』のノベルスはなかった。それでやっと人心地ついてベッドに戻ったのだが、到底安眠どころではない。おかげで翌日は寝不足である。
まったくもって自業自得なのだが、それにしてもこういう怖さを書かせたら井上夢人氏は天下一品である。そして死ぬほど怖い思いをしつつも、また読みたくなっちゃうのが始末に負えないのだ。足元が崩れるような感覚を味わいたかったらぜひ読むべし。ただしくれぐれもご注意を。寝る前だけは避けた方が身のためです(セツジツ)。
投稿元:
レビューを見る
怖いです。何となく怖いです。現実に起きたらどうなるだろう?周りからどう見られるか怖いものです。始まりは「作家、藤井陽造はコンクリートを満たした木枠の中に全身を塗り固めて絶命していた」事から始まります。どうして、そんな死に方をしないといけないのか。その謎のところに「メドゥサを見た」と言うメモが遺体のそばに残されていたのです。この謎を解くために、藤井の娘とその婚約者がある原稿を探し始めると、、、、、いくつかのおかしな点が、、そのうち恐怖に。最後まで謎は分からないままでしたが(細かい点では不明な点はいまだに多いですが)、それに増した怖さで、ミステリーよりもホラー小説のほうが合っているかも。久しぶりに一気に読める作品でした。
2002.12.30
投稿元:
レビューを見る
最近、ハマり気味の井上夢人の作品です。
彼女の父であり、作家の不審な死の謎を探し出す主人公の、恐怖の連鎖。自分が誰で、いまがいつで、ここがどこなのか。戦慄のホラー。
「とにかく恐い。リングより恐い。」らしいですよぉ。
投稿元:
レビューを見る
心底怖いと思った。
読み終わった後に鏡を見るのが怖くなる作品。
作家・藤井陽造は自宅のガレージでコンクリートを満たした木枠の中に全身をセメントで塗り固め絶命しており、遺体の傍には「メドゥサを見た」というメモの入った薬瓶が残されていた。
事実と夢がぐるぐると反転しあいながら何が本当なのか解らなくなってしまう。
井上夢人は、岡嶋二人が独立して二人になりその片割れである。
投稿元:
レビューを見る
読んでいるこっちが、ふと気づく。
自分の立っている場所のなんと不安定なことか!二度と読みたくないけれどあえて五つ星。
投稿元:
レビューを見る
作家が自分をコンクリート詰めにして自殺した。
娘の婚約者が謎を解くために作者の最後の原稿を探し始めるが・・・。
引き込まれました。
どうなるんだ〜どうなるんだぁぁ〜〜と最後まで読んだら・・・「ほぇ??」
こういうラストかぁ〜。
夢の中の話みたいだ・・・。
投稿元:
レビューを見る
ちょっとずつ迫り来るホラー的要素がソワソワと。そして衝撃へ。あの子が何を望んだのか分からない。そしてやるせない。
投稿元:
レビューを見る
『メドゥサを見た』という意味不明な言葉を残し、作家・藤井陽造はコンクリート詰めになって自宅のガレージで死んでいた。警察には自殺として処理されたが、その娘である菜名子とその婚約者はその死を不審に思い、また、陽造の書きかけの原稿を探すために真相を追う。
途中で起こる不思議な時間軸の謎が気になって、一気に読んでしまった。が、結末からするとそれは完全に説明されるものではなく・・・。物語としてはおもしろかったけど、この謎にもトリックがあるのだろうと読んでいたので、そこは残念だった。しかしこの婚約者にとってこの物語は悲劇でしかなく、本当に気の毒(^^;最後、この連鎖を自分で終わりにしようとするところに好感がもてただけになぁ。
投稿元:
レビューを見る
最近ホラーは、オチとか理由がよくわからないので、あまり評価はよくなかったり。
怖いと言うよりも切ない気がする。
何とかして欲しいような
投稿元:
レビューを見る
作家・藤井陽造は、コンクリートを満たした木枠の中に全身を塗り固めて絶命していた。傍らには自筆で〈メドゥサを見た〉と記したメモが遺されており、娘とその婚約者は、異様な死の謎を解くため、藤井が死ぬ直前に書いていた原稿を探し始める。だが、何かがおかしい。次第に高まる恐怖。そして連鎖する怪死!
投稿元:
レビューを見る
こういう活字マジック(笑)を有効に使った作品は好き。活字だからこそもたらせる酩酊感。森博嗣とかみたいに最後を曖昧にするだけじゃなくて陶酔するような物語感は耽美ぽくて好きです。
投稿元:
レビューを見る
作家・藤井陽造は、コンクリートを満たした木枠の中に全身を塗り固めて絶命していた。傍らには自筆で「メドゥサを見た」と記したメモが遺されており、娘とその婚約者は、異様な死の謎を解くため、藤井が死ぬ直前に書いていた原稿を探し始める。だが、何かがおかしい。次第に高まる恐怖。そして連鎖する怪死―――――
投稿元:
レビューを見る
すごく怖くて、すごく面白かったです!ジャンルとしてはホラーになるのかな?ミステリー風味のホラーといった感じ。本当に怖いんだけれど、読み始めると続きが気になって気になって、止められずに一気読み。
途中でフォント変える手法も面白かったのですが、驚いたのが伏線の張り方。これがあまりにも巧妙で、その事実にラストまで全く気付きませんでした。数々の謎は最後まで解明されず、謎のまま残ります。でも、それがまた更なる恐怖を誘うというか、読み終わった後も引き摺るんですよね。
後味は悪い方だと思いますが、個人的にこういう終わり方は結構、好きだったりします。
投稿元:
レビューを見る
予備知識がなかったので、これはどこに進むのかと思いながら楽しく読めた。でもなぁ、なんかすっきりしない。好き嫌いがわかれるところか。まぁ、不思議な小説です。
投稿元:
レビューを見る
この人の文章、簡潔で伏線の張り方がうまくていつも面白い。ファンタジーな方向性のミステリー。
お〜こんなふうにオトしてくるとは思わなかった・・・。