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紙の本
読書のたのしみのたのしみ
2002/11/27 01:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とんきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波文庫フェアのための冊子「読書のすすめ」というのがある。これは毎年春頃、書店に行くと無料でもらうことができる、非常に面白い冊子である。これを私が好きな理由は、岩波文庫を紹介していながらも、“岩波文庫のすばらしさ”ではなく、“本というもののすばらしさ”を語っているからだ。そのくせ岩波文庫をむしょうに読みたい気持ちに駆り立てられる。この冊子の三冊分が文庫本として収録されたのが本書である。
本書では25名の知識人たちが、自分と“本”との出会いや本への思いを語る。それはある人にとっては人生を変えてしまうきっかけになり、またある人にとっては心の糧になったりする。読書には十人十色のスタイルがあり、また人がその本と出会う時期や状況によって、それはさまざまに違った体験となる。彼らは、特定の本に対する思いだけでなく、“読書に対する考え方”をも語ってくれている。そのそれぞれが、深くてすばらしい文章だと思う。
例えば、米原万里さんの話。彼女は今、ロシア語の翻訳やエッセイなどで大活躍されている。9つのとき親の仕事の都合でチェコに移り住んだ。学校では全ての授業がロシア語で、全くわからなかったという。あるとき「箱根用水」と漢字でタイトルの書かれた本に出会う。中身はロシア語だが、彼女はその本に引きずり込まれ“それがロシア語で書かれていることなどすっかり忘れて”読みすすめていく。それで、ロシア語の本を読めるようになり、ロシア語作家の作品をつぎつぎと読んでいくことになる。そして中学生で日本に帰ってくると、“日本のことをよく知らないという惨めな気持ち”から、“日本の文学作品を読破しよう”と決める。「今昔物語」や「(与謝野晶子訳)源氏物語」、「南総里見八犬伝」や「好色一代男」まで。日本の学生は受験のためにタイトルや作者名は正確に知っていても、中身は読んでいない。米原さんはそのことが“打ちのめされるような大ショック”だった。彼女の2ヶ国語の多読体験が、今の通訳としての仕事につながっている。そういう話を聞くと(読むと)私も日本の文学作品たくさん読まなくちゃ、と思う。
人が読書について書いている本を読むのが好きな私にとっては、ミラクル級の面白さだった。こういうものを読むと、むしょうに勉強したい気持ちにかられ(そのわりには、してないけど)、お金や地位や名誉を得ることが私の本当にほしいものではないということがよくわかる。私はただ精神的に豊かになりたかったのだ(つまりは、学者になりたかったのだろうと思う)。知的好奇心をゆさぶられ、こういう本があるからこそ私は生きていけるのだという気持ちになる。
きっとこういうサイトをご覧になっている方は読書好きな人が多いと思うのでオススメ。
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