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面白い。
一口にSFと言っても色々なのがあるが、この作品はわたしの好みにぴったり。
キャラクターに割り当てられた役割があるとか、倒錯気味の恋愛感情、そもそものベースに複雑な男女関係が織り込んである設定。
どれも好きだ。
この作品の前半に散りばめられた伏線は、ほぼ全て回収されたように感じるけど、続編では天使について詳しく分かるのかな。
楽しみだ。
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<永遠の夏休み>と題された仮想リゾートのAIたち…でまったりした始まりからは想像つかない後半。早く読みたいのと読みたくないのとでぞわりとした。人間の嗜虐性と悪趣味を満たすための苦痛に満ちた区界…あとがきに「残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」とあるけど全くその通り。次作も読みましょう…
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本を閉じるとき、いま私は、望んで、この作品世界の「長い夏休み」をぶち壊しにしたんだな、という気持ちになる。物語を進めたのはジュールであり、その前に読み手であるわたしであるような。
わたし=読者は誰にでも感情移入ができるし、自己を重ねることができる。主人公として据えられたジュール(老ジュール、あるいは「父」をハックしたジュール)にも、海岸に押し寄せたランゴーニ・蜘蛛たちにも、世界で残虐を尽くしたゲストたちにも、はたまたそれぞれの視点を紡ぐ登場人物たちにも。その一方でAIたちは人、ゲスト、プレイヤー、の手を離れた楽園で暮らしていたのであって、わたしたちが同一化することを拒んでいるようにも思える。「物語の登場人物は一ページめが捲られたその瞬間に、記憶を持つ。過去を所有する」の文が印象深い。
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SF。VR。アクション。
あとがき通り、清新で残酷で美しい。
想像が追いつかない場面も多々あったが、とても魅力的な世界観だった。
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ザ・格調高いSFという感じで、好きな方は大満足できるのではと。
人間のゲストが訪れることがなくなって、AIだけが1000年もの時間を送っていた夏の街を模した仮想リゾートを謎のプログラムが襲うという筋書きなのですが、構成が緻密で唸らされました。
謎が多いので全ては明かされないのかなと思ったけれど、(次巻に続くところはさておき)伏線を結構しっかり回収し、かつ丁寧に種明かしの説明をしている印象でなんだか意外に親切だなぁと感じました。
序盤の夏の美しい情景描写と中盤以降の絶望感やグロテスクな描写のコントラストが圧巻。
少々登場人物が多く、キャラがイマイチ認識できてない中で会話が交わされて誰のセリフかちょい混乱しましたが、総じて文章は読みやすかったです。
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残虐な描写がこの作品にはある。色々な本を読むと残酷な描写の場面のある本に出会う、その場面を読んでいる時に私は力が少し抜けてしまう。痛みを感じるということなのだろうか。時には読むのを止めようかという描写に合うこともあるが、この作品に関しては力が抜けなかった。文章の力か、または、AIにたいしての暴力という知識があったからかは分からない。夏の区画に来る変態ゲストと同じように暴力に痛みを感じなかった。読者というゲストになっていたんではないかと錯覚した。まあ言い過ぎたが、それくらいのめり込めるおもしろい作品だ。あと電脳コイルのメタタグはグラスアイから発想を得たんだろうなと感じた。
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AIの忘れられた世界の崩壊と新たなる展望の予兆.空間も時間も複雑に絡まりあって,過去が未来に未来が過去にたやすく置き換わる.記憶の塗り替えや改竄がゲームのようで,登場しない人間と天使の存在の意味がまだ明らかにされていない.蜘蛛やランゴーニなる4人のAIとの闘いの後中途半端に投げ出されたこの物語は,残虐でありながら硝視体の透明感もあってとても美しい.
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SFマガジンのシリーズ最新作連載を読んで、これはすごい!と慌てて1作目を読んだ。
AI的スプラッターホラー。
身体がない分、残酷さと苦痛、視覚的な美しさが際立つ。
超強いアンヌが最高に好み。私の中のアンヌは前半でリフレインしている。
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「零號琴」で衝撃を受けて、飛浩隆氏の作品を遡って読み始めましたが、そういえばこちらの「廃園の天使」三部作の第一部を読んでなかったことを思い出し、読んでみました。全編通じて耽美で残虐で、あまりに文学的な世界観に圧倒され、これが長編デビュー作とはあらためて驚愕です。作品中の空気感というか質感がまとわりつくような表現は、SFこそが現代の純文学だという思いをあらためて感じました。現在連載中だという第三部の刊行が待ち遠しいです。