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最愛の人との出会い、楽しい日々の思い出、
そして末期の癌に侵され南仏・ニースでの最後の日々をつづった
回顧録のような小説。
これだけ聞くと「お涙頂戴もの」のように聞こえるけれど、
そうは感じさせないきれいで透明感のある作品。
主人公のココロと比喩している観葉植物・アジアンタム。
それは「憂鬱」なんだけど、永遠ではなくいつか過ぎ去る。
でも、
「憂鬱な時」ってどよ〜んと暗くなるのではなく
そんなときでないと感じらればいもの、
そんなときだからこそ感じられるもの、
その時でしか掴むことが出来ないものを掴むための
大切な時間であり前向きな時間。
今読んで良かった。
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アジアンタムはシダ科の観葉植物。涼しげにハート型の葉を揺らすその姿は若い女性に人気だが、枯れはじめると手の施しようがない、そんな繊細さを持つ。その状態は“アジアンタムブルー”と呼ばれる。が、ごくまれにその“憂鬱”を抜けだし、再び青々とした葉を茂らせることがあるという。
社会全体に憂鬱がはびこっている状態を比喩でそう呼ぶこともある。と、前作「パイロットフィッシュ」にある。
これはエロ本編集者の山崎の物語。
万引きで捕まる現実から逃げようとする少年時代と、写真家である恋人の葉子が旅立つ現実に向き合う過去と、その後の今。三つの時間軸がクロスオーバーしながら、絶望や喪失からの再生を描いているような気がする話。
人が死なないで感動したり、考えさせられたりする話がベストだと思う。死ぬのはいやだ。パイロットフィッシュとはまったく違う話だけどあわせて読むといいかもしれない。まあわかんない。 けいた
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『ドナウよ、静かに流れよ』
『アジアンタムブルー』
『別れの後の静かな午後』
『パイロットフィッシュ』
図書館に置いてある彼の本を、かたっぱしから読みあさった。
きれいな写真の表紙。
こじゃれたカタカナのタイトル。
都会的な(?たぶん…)生活スタイル。
そういうものぜんぶが
高校生だったわたしの夢をとことん煽ったのだ。
今でもその熱は体の中でくすぶっていて、デザインの良い家具や雑貨を見ると血がさわぐ。
いちばんの読みどころのはずの、
主人公のこころの動向とか
なんかそういうものはよく理解できなくてアウトオブ眼中でした。
『タペストリーホワイト』で消化不良を起こしちゃってから、
ひさしく読んでいない。
どんな小説だったかなあ。
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最初に読んだ大崎作品。瑞々しくて繊細な言葉選びに嵌ってしばらく大崎さんを追いかけることになる。ザ・泣ける恋愛小説。
「憂鬱の中からしか、掴めないものがある」
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パイロットフィッシュを読んだのがかなり前でしかもあまり良い印象が残っていなかったのですが、これはよかったです。
パイロットフィッシュの昔の話なんでしょうか。
恋人が末期癌で最期を二人でニースで過ごす…。切ないです。葉子の水溜りの写真見たいなぁと思いました。
090811
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愛する人が死を前にした時、いったい何ができるのだろう。末期癌に冒された恋人と向かったニースでの日々。
喪失の悲しさと優しさの限りない力を描き出す恋愛小説、とのこと。
ただ、メインの話にいく前に、冒頭のプロローグ的話が間延びした感が。
後半メインの恋人との余生生活のあたりは、感動的で涙も出たけれど、共感するには少し美しすぎたかな。
文章の表現や流れが美しく、タイトルや装丁のイメージ通りの文章だった。
小説というよりは、絵画や詩集のような、自然と流れ込んでくる美しさを感じさせる本。
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図書館で借りて読んだ。
この人の小説は、登場人物が重複していたりするが、設定が微妙に違っており中途半端な関連性が面白い。
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「私が死んでも・・・優しい人で居てね」
軽そうに見えて、実は深い。
救いようのあるラストでほっとした。
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<2010.05.26>
同著者の「パイロットフィッシュ」がすごくよかったので買った小説。期待に十分すぎるほどこたえてくれました。表紙もきれい。また読み返したい。
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「永遠に誓う」だとか「永遠の愛」とかいう言葉を、間髪入れずに「嘘くせぇ」とせせら笑ってしまう私は、つくづく恋愛方面に向いてない。
仕方ないことだ。この物語の「永遠」にまつわる話を知ってしまったから。
「天女が千年に一度、三千敷きの岩畳を羽衣で一撫でする。その岩が擂れて無くなるまでの時間を永遠と呼ぶ」のだと言う。
そんな想像を絶するような長い長い時を経て、それでも形が残っている物なんて、寂しいだろう、と思う。いつか消えてしまうものだから、裏切られるかもしれないものだから、存在する一瞬を「いいなぁ」と思えるんじゃないか。消えることが分かっていて、それでも不安の中で必死に支えようとするものだから、眩しいものになるんじゃないだろうか。
話中では、主人公へ大きな影響を与える人物として、「青」という新聞記者が登場する。はじめは神秘的な雰囲気で、何かを超越したような存在だが、物語が進むにつれて印象は変転していく。生きてきた時間、経験した過去、そういうものが次第に「青」に透けて見え始める。徐々に人間くさい存在になっていく「青」に、私はどこかで安心していた。
たった一人のヒーローが、いとも容易くハッピーエンドに持ち込んでしまう話じゃなくて良かった。無力で矮小な人々が、死にものぐるいで変えていこうとする世界に、救われていたのだ。
愛と死が書かれていない小説は無い、と言われるが、この物語以上に愛と死について書いた本もそう無いと思う。主人公の、卵の薄皮のような膜がかかった視線で物語は進むが、その薄い膜の中には強い熱情をはらんでいる。
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なんだかするすると読めてしまった。電車の中で、昼休みの職場で、駅のベンチでするすると読んで、最後の最後で自分が泣きかけていることに気づき、焦った。いささか過剰と思われる部分もあるけれど、この語り口は好きです。
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「孤独」「優しさ」「透明」
大崎さんの印象。
本を読まなかった私が、本にはまるきっかけを作ってくれた一冊。
人には何度も乗り越えなきゃいけない山があって、
その度に、傷つき、苦しむ。
アジアンタムのように。
それでも、向き合うことで、見つめることで、
「憂鬱の中から生まれてくる優しさ」
が得られるんじゃないかな。
強くなれる。
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正直言ってイマイチ。
内容は暗いしやたらとペ○スとか書きすぎ。白ける。
性的な表現が下品だなという感じ。
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大崎善生の作品はこれと、「パイロットフィッシュ」しか読んだことがないけれど、好き。
ちょっと村上春樹っぽくて、でも心を揺さぶられるほどの文章は正直あんまなく、表現は多彩な感じがするけど、ちょっと気障にねらってる感じがする部分もあって、一概に好きな文章ではない。
なのに好きなのは、それが解りやすい内容で、何よりそこに出てくる女の子が好みのど真ん中をゆくからだろう。当著では葉子。
無限について、死について、解らないことはいっぱいあるけれど、そんな世の中だけれど、誇りを持って確信出来ることがあるということ。
葉子は幸せだっただろう。
葉子が死に向かって歩んでいき、主人公がそれを看取ったように、読者もまた彼女を看取る義務を負った。そんな印象を読み続けてて思った。
死ぬことは解っている。でも最後まで読まなくちゃいけない。
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おいおい泣きました。二人の関係がとても緊密で、ぐっと来ます。私も最後はこんな風でいたい。お話としては、前半部分、もう少し短くても良かったかなー。ともかく、二人がニースに行ってからページをめくる手と涙が止まらず、顔がぐしゃぐしゃになりました。