- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |
紙の本
画材を識る眼と手
2003/02/09 22:12
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KANAKANA - この投稿者のレビュー一覧を見る
ずっと気になっていた謎の女流画家の初の作品集である。
だからこの存在を知ったとき、希少なしあわせを手に入れた思いで買いもとめた。
描かれるのはみな、どちらかというとあまりつきあいやすいタイプの女ではない。
顔も躯も向き合った相手のほうを、つまり真正面を向いているはずなのに、そのまなざしはどこか遠い。
たとえ一緒に遊びにいったとしても、とりとめもない話をするうちふと途切れた会話に顔を上げると、外された視線の先は彼女しか知らないどこかをゆるやかに見定めていて、黙ってしまったことに腹はたたないけれど、この沈黙の時間をどうやって切りくずそうかとこちらがどぎまぎしてしまう、猫のような友人だろう。
国司華子が影響を受けたのは、エドガー・ドガ、アンリ・マチス、パウル・クレー、ジョセフ・コーネル、エゴン・シーレ、マーク・ロスコ、アントニ・タピエス、ロス・ブレックナーといったアーティストだという。そういわれてみれば、男の立ち姿を描いた「く・ろ・す(cloth)」はエゴン・シーレを本歌取りしたような肖像画だし、いくつもの不定形の色面を組み合わせた背景の処理は、色彩のかさねで画面を構成した抽象画家、マーク・ロスコを思いおこさせる。金箔をはりあわせた作品もあるから、クリムトを連想する向きもあるかもしれない。
しかし彼女は「純毛の」日本画家なのである。
日本画の重鎮平山郁夫の下で学び、1992年のセビリア万博の日本政府館で安土城の復元プロジェクトにも携わったという。そしてどんなに重い色を使ったとしても、水を思わせる透明感のある画面は、岩絵具の質感があってこそのものだ。
日本画を初めて識る人も、この色彩の美しさにはきっと抗えない。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |