紙の本
大人向けのアンソロジー
2003/01/14 01:19
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投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹の手による誕生日をテーマにした短篇小説のアンソロジーである。「バースデイ・ガール」という村上春樹自身の書き下ろし短篇も収録されている。
あとがきにも書かれているように、誕生日をテーマにはしているが、明るい話はあまりない。むしろ全体的には暗いムードが漂っている(もちろん作品が面白くないというわけではない)。収録されている作家も、私には知らない人が多かった。しかし、逆に言えばこの機会に知らない作家の作品を読むことができる。これがアンソロジーのいいところだ。
印象に残ったのは2作品。最初は「バースデイ・ケーキ」というダニエル・ライオンズの作品。週に一度行きつけのケーキ屋で必ずケーキを買う老女がいる。ある日、閉店時間を過ぎて老女がケーキ屋に行くと洗濯屋のマリアがケーキ屋とともに老女を待っている。亭主のいないマリアは子供の誕生日なのに仕事から抜け出せず、パースデイ・ケーキを買うことができなかったのだ。そこで老女に是非ケーキを譲ってくださいと頼み込む。ケーキ屋も今回だけは譲ってあげてはどうですかと老女に頼む。しかし老女は頑として譲らなかった。なぜ老女はケーキを譲ってあげなかったのか。ラストは非常にもの悲しい。
もう1つは村上春樹の「バースデイ・ガール」。イタリア料理店でウェイトレスのアルバイトをしている女性がいる。二十歳の誕生日には仕事は休みのはずだったが、代わりの子が風邪をこじらせて寝込んでしまったために彼女が仕事に出る羽目になる。ひょんなことから、今までに一度も会ったことのないそのイタリア料理店のオーナーに会うことになり、そのオーナーの老人に「願い事があればひとつだけかなえてあげよう」と言われる。果たして彼女の願い事は何だったのか、そしてその願い事はかなったのだろうか? 不思議な読後感を残す好短篇である。
もしあなたが、二十歳の誕生日に願い事をひとつだけかなえてあげると言われたら、どんなことをお願いするだろうか?
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誕生日をモチーフにしたどれも個性的な翻訳短編集。訳者でもある村上春樹氏の「バースデイ・ガール」がいちばん心に響きました。
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カーヴァーの『風呂』(『ささやかだけれど役に立つこと』の短いバージョン)は、荒く感じました。
『バースディ・ガール』こんな20歳の迎え方したら幸せですね。
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6点
誕生日にまつわる話がいくつか収められているのですが、ほとんどがハッピーな話ではありません。でも、最後の最後に・・・。
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村上春樹編訳の誕生日にまつわる短編集。外国の小説を読むと、日本の平穏さを改めて実感できます。誰にとってもハッピーな誕生日も、それだけでない何かを感じさせてくれるから。ダニエル・ライオンズの「バースデイ・ケーキ」とリンダ・セクソンの「皮膚のない皇帝」がお気に入り。最後に村上春樹書き下ろしの20歳の誕生日を迎えた女の子の話があって、ちょっと運命を感じました!結局はいつもと変わらないその誕生日が、この先の平坦な人生を暗示している気がするって、なんかちょっと分かる気がするなあ(笑)
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翻訳モノ!って感じがしてちょっと苦手だった・・文体がやっぱり違うかな。ムーア人が好き。でも一番はやっぱ春樹の作品かなあ。
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誕生日をテーマにした短編小説のアンソロジー。外国の小説はほとんど読まないので新鮮でした。誕生日がテーマの割に暗い話が多い・・・「ムーア人」「ティモシーの誕生日」「風呂」が特に印象に残っています。最後に収録されている村上さんの書き下ろし短編で救われたような感じ。
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ジャケ買いしたけど、読書にストレートな感動を求めてる自分にはこういう世界はやっぱりしっくりこないかも。
読書に文学的ななにかを求める人にはいいのかも。
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内容(「MARC」データベースより)
「誕生日」を題材にしたテーマ、収録作品の質、作家の顔ぶれ、いずれの点でも魅力的なアンソロジー。村上春樹が選んだ英米の短篇を集めた「誕生日」をめぐる11の物語。村上春樹書下ろし最新作「バースデイ・ガール」も収録。
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誕生日について書かれた短編小説を、
村上春樹氏が集めて翻訳した。
ラッセル・バンクスの「ムーア人」が好きです。
男が21才で女が50才だったときに関係を持った男女が、
30年後のに偶然再開するという話。
中途半端に年をとると、なんのことでも、
「初めて」と相手に伝えることに覚悟が要り、
「初めて?」と聞くことにも覚悟が要るというのは、
わかる気がしました。
覚悟というか、
繊細な神経、抵抗感、期待。を、含むから、
副詞というより、大きい形容詞になっちゃう。
そして、しっかり年をとってしまうと、
必要な覚悟の大きさより、
知りたいという我侭のほうが勝つらしいということ。
きれいで、寂しくて、しかも良い話でした。
なんやったら、真似してもいいと思うくらいに。
レイモンド・カーヴァーファンには、
「ささやかだけど役に立つこと」の短いバージョンの「風呂」が収録されていますので是非。
ぜんぜん、印象が違ってくる。
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村上春樹編訳の誕生日にまつわる短編集。
誰にとってもハッピーな誕生日も、それだけでない何かを感じさせてくれるお話が色々つまっています。
ダニエル・ライオンズの「バースデイ・ケーキ」とリンダ・セクソンの「皮膚のない皇帝」がお気に入り。最後に村上春樹書き下ろしの20歳の誕生日を迎えた女の子の話があって、当時丁度20歳だった私は運命を感じた覚えがあります(笑)
結局はいつもと変わらないその誕生日が、この先の平坦な人生を暗示している気がするって、なんかちょっと分かる気がするなあ(笑)
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読み終わったのはずい分前だけれど、今だにいくつかの物語は覚えていて、じんわりと心を温めていてくれます
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正直に申し上げまして村上先生の書かれた「バースデーガール」しか読んでおりません。でもすごくこの話がすきなので★は五つ。これもまた中学生当時は最後まで何を願ったのか解らずやきもきしましたが、何度も読みたくなる話です。
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誕生日の見方が変わる本。産まれたことを、そして家族に愛されていることを感謝したい。
村上先生の解説読んでたらよく「救済」という言葉が出てくるんだけど、現代英米文学のトレンドなのかな。そういうことも考えながら読んでいると好き嫌いは別にして「ダンダン」「風呂」「バースデー・ケーキ」の3つが印象に残りました。
軌道から外れた一瞬の出来事が、破滅へ繋がっているのだろう。だれも幸せになれない。物事は悪い方にしか進まない。見捨てられた、残された家族の末路に、救済が見えなくてつらい。
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訳者である村上も評していたように、
誕生日を題材にした短篇がほぼ一様に理不尽だったり救いがなかったりするのは、
作家という肩書きをもつ人にひねくれ屋さんが多いからなのでしょう。
そして村上の書き下ろし誕生日短篇がちょっとハートフルっぽいのは、
そんなひねくれ屋さんばっかりの作家業に対しさらにひねくれた結果でしょう。
まとめ方が村上節なのにはうんざりしたけれど、
終わり方はいつになくファンタジーぽくて(村上作品としては)新しかったです。