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紙の本
初恋の音
2002/12/25 00:09
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投稿者:真愛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
亜美の「愛」をテーマにした5部作の最後です。この物語は、函館に流星が落ちた時に生まれた、感情を音に変えてしか表現出来ない共感覚をもった璃星と、精神科で東京の医療少年院で担当になった桜澤とのもどかしく、世界を壊す程の「初恋」の感情を互いに抱いた話です。
函館で育った璃星はある事件を起こし東京の医療少年院に送られる。そこには璃星の様な共感覚の子達がたくさんいた。璃星はそこで初めて桜澤に出会って、その感情表現としてなんとも切なく、心に響き渡る旋律を奏でる。きっとその時にはもう「恋」は始まっていたのだろう。
やがて璃星は感情を言葉で表現したいと、5ヶ月という期間限定の脳手術を受ける。そこで初めて自分の中に芽生えた「恋」に戸惑い、苦しさをも味わう。また桜澤も彼女に出会い変化が起きていた。恋愛は適当に、そんな桜澤にとって璃星はかけがえのない存在へと変わっていく。2人は璃星が感情を出せる間にどんどんその距離を縮めていった。そんな中、桜澤の恋人が彼のはっきりしない態度と、璃星への嫉妬で遺書を残し自殺をはかって桜澤の医師剥奪をさせようとした。たまたま居合わせてしまった璃星はその遺書を読み、捨ててしまう。そして院生に其処に璃星が居合わせた事を知られ、桜澤をかばった璃星はさらに厳しい施設に入れられてしまう。
そして期間の5ヶ月も終わりに近付き、璃星の口からはハミングがこぼれる様になった。桜澤は自分をかばった璃星を連れ出し、逃走する。そして璃星が共感覚へ戻るまでなんとか一緒に隠れる事が出来た。その間の璃星のこの気持ちを、桜澤を忘れるかと脅える不安は痛い位に伝わってきます。初めて知った「恋」。桜澤はそんな彼女に一度覚えた感情も記憶も消えない、と優しく受け止めます。
やがて桜澤は逃走の罪で服役し、璃星はその才能をかわれピアノの発表会を行う事になる。それが何年ぶりの2人の再会だった。そしてラストは2人でひっそりと暮らしていく。
こんなにも狂おしい程の初恋があるのかと感じました。「恋」とはこういうものなのだ、と教えられました。それなら「愛」は…。きっと彼等が行き着いた先がそうなのだろうかと思います。自分を犠牲にしてまでも相手を想える、そんな恋愛に憧れました。「初恋」の感覚をもう一度という方はお薦めです。
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