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50羽から5000羽へ アホウドリの完全復活をめざして みんなのレビュー
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紙の本
かつて人間が減らしたのだから、増加に手を貸すのは義務である
2003/09/11 18:03
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投稿者:安之助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1949年には日本では絶滅宣言さえ出された鳥がいる。幸い、51年に細々と生存していることが再確認されたが、まだ絶滅危惧種であることは変わりはない。その鳥の名はアホウドリ(信天翁)という。本書は著者がいろいろなところに寄稿した文章を、まとめたものである。言い換えれば“アホウドリ復活”のための、行動記録とも言えるだろう。
76年、著者は28歳で初めて鳥島(伊豆諸島の最南部の小さな無人島)を見ることができた。特別天然記念物・国際保護鳥のアホウドリの調査(ちなみに、研究のために渡った人はほとんどいなかった)のためである。このときは上陸はできなかったが、翌年は果たすことができた。そのときに慄然としたという。「ひなは一五羽しかいなかった。(中略)この一五羽のひなのうち、親鳥になるのはどれくらいだろう。半分ちょっとだとして考えても、雌雄半々だろうから、結局、雌は四、五羽くらいしか生き残らないことになる。(中略)毎年、何羽かの成鳥が死ぬから、このまま放置すればアホウドリの数は減る可能性が高い。絶滅してしまうかもしれない」。ならばどうしたらいいのか。「現状維持のための保護」ではなく、復活を目指す「積極的保護」を目標に置いた方策が必要である。
初めは、親鳥が丈夫な巣を作れるようにすることだった。鳥島のコロニーは火山灰地で傾斜地にあった。だから一歩間違えれば、卵は転がって割れてしまう。場合によっては、ひなも吹き飛ばされるかもしれない。それを防止するために、ハチジョウススキの株を移植した。
効果はあった。「移植前、生まれた卵のうち巣立ちまで生き残る割合は平均四四%だったが、移植後はその割合が六七%に引き上げられた」という。ただ草を植えるだけなのだが。
次ぎに試みたことは、コロニー自体の安全な場所(新コロニー)への“引っ越し”である。無理なく引っ越させるために著者が行ったことは、デコイを使うことだ。アホウドリのデコイを作り、誘因効果を試した。新コロニーで1組のつがいが産卵したのが確認されたのは、企てから5年目であった。
アホウドリは人に対する警戒心のなさゆえに、絶滅の危機に追いやられた。白くて良質の羽毛をたくさん身につけている。それは人にとっては魅力的だ。明治から大正の50年間で数百万羽、取り尽くしたという。そして、その捕獲のあまりの簡単さにアホウドリと名付けられた。伊豆諸島や小笠原諸島ではバカドリといわれるところもあるそうだ。
だが、本当にそれでいいのだろうか。信天翁の読み方だとアホウドリはなじまない。上田敏は『悪の華』の1篇「信天翁」を翻訳するときに、わざわざ「をきのたいふ」とふりがなをつけていたという。また、山口県の長門地方の呼び方は「オキノタユウ(沖の太夫)」である。著者はアホウドリという侮蔑的名前を変えられないものかという意見の持ち主だ。私も賛成である。
かつて絶滅一歩手前までいったアホウドリ。現在、千羽を越えるまでに回復した。しかし、まだ完全回復にはおよびもつかない。五千羽を超すのは何年後なのだろうか。
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