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時は西暦79年6月。所は古代ローマの港町オスティア。
フラビア・ジェミナが初めて謎を解決したのはヴェスパシアヌス帝が皇帝の位についてから10年目の、6月13日だった。
父の紫水晶の認め印がついた指輪は母の形見であり、二人にとって大切なものであったのだが、それが盗まれたのだという。
その行方を探して"死者の町"と呼ばれる共同墓地へと足を踏み込んだフラビアは野犬の群れに囲まれてしまうが、そこを隣へ引っ越してきたばかりのユダヤ人少年ジョナサンに救われる。
ここから、フラビア・ジョナサン・奴隷の少女ヌビア・舌のない孤児の少年ルーパスという奇妙な取り合わせの仲間が集まり始めた。
「それに、あんたはたしかに誰かを傷つけたんだ!」
この物語中で起こるミステリー−事件は、何も舞台がローマである必然性はない。
しかし、本文中に見て取れる当時のローマの生活風景にニヤリとさせられる。
町のメインストリートに馬やロバの糞が落ちていたり、二階から糞尿を捨てる人がいる一方で公共の大衆浴場があったりと、当時の風俗が垣間見える様はおもしろい。
そして、何よりもこの年代の設定である。西暦79年の8月。この年はポンペイのヴェスヴィオス火山が噴火した年であり、この物語はまさにその直前に当たるのである。作中にはこの火山噴火で死ぬこととなるプリニウスの名や、その著作である『博物誌』が登場しており、次作へと続くであろう伏線が顔を覗かせている。
今作の中に置いて、登場するフラビアを初めとした子ども達は当時からすれば異色なまでに公平な思考の持ち主達である。奴隷であったヌビアを高額をはたいて自分の家に友人同然に迎え入れ、乞食であったルーパスを仲間と認めて共に公衆浴場へ行くなど、身分の差というものにとらわれていないのである。それはフラビアの父であるジェミナスが船長であり、ジョナサンの父がクリスチャンであることに由来していると思われる。世界を広く知った者の目や博愛を掲げる信仰者の目に守られ、育てられてきたからなのであろう。
そんな彼女達は犯人の「誰も傷つけるつもりではなかった」という言葉に対して怒りを覚える。
誰かの私欲によって他人が傷つくことがあると言うことを知り、悲しむ彼女たちは、自分たちも又他人の境遇を思いやり、愛し、理解する努力が必要であることも学ぶのである。
そんな彼女たちは次作ではどうやらネアポリス(現ナポリ。つまりポンペイの近く)へ行くようである。1巻終了時では79年の7月。この先どのようにヴェスヴィオス火山爆発という歴史的事象と絡んで行くのかという点からも興味がある作品である。
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図書館で借りた本です。「古代ローマ」に食いつきました。
実在の「オスティア遺跡」をモデルにした舞台でストーリーが展開していきます。
その舞台の地図もついていて、主人公の足跡をたどるように地図を見ながら
私も古代ローマを歩いている気分でした。
謎解き、という部分では、小学校高学年~中学生向けなので、シンプル過ぎて
ちょっと展開が読めてしまう感はありましたが、その世代のお子様ならきっと
ハラハラ、ドキドキで読めると思います。
子供っぽい謎解きはイヤ、という方には向かないかもしれませんが、歴史モノ
のアドベンチャー、としては◎です!
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2003年刊行、本国では17巻も続いている人気シリーズらしいが日本ではこれ1冊のみ翻訳されている。
古代ローマの都市オスティアに住む10歳の少女フラビア・ジェミナが色々なきっかけで同年代の色々な境遇の子供達と友達になっていく過程と、謎解きと、古代ローマの日常がいい感じに噛みあってこれぞ児童文学というストーリーになっている。時代性もあり今では考えられないような残酷なこともたくさん出てくるけれど、主人公たちと同世代の子が読んで古代ローマに興味を持つきっかけになりそう。あと手でたべるべたべたした蜂蜜のお菓子、気になります。