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紙の本
現行制度は欠陥ばかり、著者主張の制度に欠陥はないのか
2004/08/08 23:30
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投稿者:ヤタガラス - この投稿者のレビュー一覧を見る
平成16年の法改正に向けて昨年出版されたものであるが、厚生年金保険の積立金だけで146.7兆円(平成12年度末)の残高があり、事業主負担は約10兆円に達しているというのだから、年金制度はわが国の経済政策に大きな比重を占めているし、これ自体経済とも言いえる。したがって、多くの問題点なり課題があることになる。
本書は、現行の姿を解説し、平成16年に改革すべき方向を主張しているが(年金法が改正された後に読むのも変ではあるが)、なんと言っても改革の主張の目玉は基礎年金を全額消費税とすることである。
どんな制度を採用しても必ず長所と短所があるが、本書では現行制度の短所は最大限に誇張しても、全額消費税方式とした場合の短所には触れておらず、公平かつ客観的な議論とは言えない。消費税とした場合、現行制度にある低所得者に対する免除が適用されなくなるし、サリンをまいたり脱税したりした者に対しても年金が保障されるというのはおかしい。また、現在、一部の生活保護の悪用に対して大変不公平感が強いのであるが、誰でも一律の基礎年金を保障するとなると、これは生活保護の一律的な拡大にほかならず、若いときに勤労や義務をさぼっても国が面倒をみてくれるという風潮が高まることが予想される。こういったことに問題意識はないのであろうか。
制度の選択を行う場合、財政がこうなる、実務がこうなるなど議論したところで、最後は長所と短所が同居した制度を選択するしかないのであるから、要は制度の理念がもっとも大事であるということである。現行方式は社会保険方式であり、自助・共助が理念であるが、本書を読んでみると、改めて現行制度のもとで、透明性を高めて、より効率的で安定性を追求することがよいと感じた。
本書では、現行制度は実質任意加入であると決めつけている。任意加入ならば、途中で脱退の自由もあるし、保険料の納付期間も選択できるなどの要件があるのであり、ただ徴収が悪いの一点だけをもって任意加入と断定するのは前提を欠いた議論である。本書全体の流れは、昭和60年に改正した内容にも不満、第3号被保険者制度にも反対、つまるところ、現行制度を全く変えたいということである。このような姿勢が、現行制度は実質任意加入という表現になって端的に表れているといってよい。
客観性を装ってみても、本には、偏った議論を展開するものもあるということがよくわかるし、駒村康平著「年金はどうなる」は、客観的な議論を展開しており、本書と読み比べることによって位置付けがよくわかる。
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