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紙の本
言葉が軽くなってきている
2005/12/20 16:26
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る
《反知性主義が世界を跋扈(ばっこ)しはじめている。世界の指導者は知性による政治を真剣に考えるべきだ》
『愛と差別と嫉妬で鍛える英語』堀武昭、日経BP社(2003)よりの引用です。
堀武昭さんは1940年横浜市生まれ。慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興会(ジェトロ)入社。ジェトロを退社後、米日財団副理事長、フォーラム2000財団理事、国際ペンクラブ理事などを歴任。著書に『世界マグロ摩擦!』『サシミ文化が世界を動かす』などがあります。
冒頭の引用文は「世界中から大統領や首相、あるいはノーベル賞受賞者がゴマンと集まった会議」における堀武昭氏の発言。発言直後に「会場は興奮の渦に包まれ、出席者の拍手が延々と続いた」と堀氏自身が書かれています。隣席にいた海洋学者トール・ハイエルダール(Thor Heyerdahl)が堀氏を抱擁し「You deserved it.(賞賛に値する)」と何度も賞賛してくれたそうです。
実のところ最初に読んだ際はそれほど感銘をうけませんでした。「オッサン、自慢が激しいな」と思ったくらいです(笑)。けれども時間の経過とともにこの文章を忘れていくのではなく、逆にだんだん気になってきました。いまでは「なるほど賞賛に値するかもしれない」と感じ始めています。
一般に言葉が軽くなってきていると感じます。総理・閣僚を始めとする政治家たちが暴言・妄言の言い放題(お咎めはいっさいなし!)。その反面、些細な(?)日本語の誤りを指摘するような本は売れています。新聞や雑誌にも「日本語の乱れ」を揶揄する記事は少なくありません。ただし批判の対象になるのは主に「アルバイト店員」や「女子高生」なのです。
若い人の「日本語の乱れ」を嘆くのも結構です。でも日本国総理大臣および閣僚の言葉の乱れのほうが遥かに深刻な問題でしょう。以前は政治家たちの不誠実な言論を咎める論評も結構ありましたが、最近ではあまり見なくなりました。メディアが権力側に寝返ったのか、暴言・妄言に慣れきってしまって報道されないのか・・・。
言葉・論理・知性。これらをないがしろにする社会は衰退への道を歩み始めている。私はそう思います。
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