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紙の本
破天荒すぎて語られることのなかった男
2003/10/22 18:25
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投稿者:甲斐小泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本に出てくる登場人物は、評論家の大宅壮一、ノーベル賞作家の川端康成、国民栄誉賞受賞歌手の藤山一郎、男装の麗人として未だ語り継がれている川島芳子など、そうそうたるメンバーである。昭和半ばに生まれた私は、実際の人物を見、あるいは、親から話を聞いていた人が非常に多いのだ。
しかし、彼らと親交のあった、あるいは彼らを資金力で動かしたこの本の主役、伊東ハンニという人について、自分はもちろん知らないし、親から聞いた記憶もないのはどうしてだろうか?と不思議に思いつつ読み進むうちに、ハンニの破天荒すぎる人生が、彼と縁のあった人に多くを語らせなかったのに違いない、と確信するようになった。
経済的に恵まれた家庭に生まれながら、実家が零落した彼は、独学を重ねて、当たって砕けろの行動力で考星学者として有名だった隈本有尚の弟子となる。彼に株価の動きを占ってもらった結果、大もうけをするというあたりからして、非常にドラマティックだが、そのもうけを元に、徳富蘇峰がはじめた国民新聞を買い取り、隈本有尚のもう一つの専門であったシュタイナー学を持って、独特の世直し理論を展開。
宣伝には北原白秋に作らせ藤山一郎に歌わせた歌を使うなど、プロパガンダの大家でもあったようだ。しかし、日本が軍国主義に傾いていく中、段々に思想家というよりは、教祖的な言動を取るようになり、戦争終結前には危険な思想の持ち主という事で、過去に彼が度々詐欺を働いた事を理由に逮捕、投獄され、戦後は泣かず飛ばずで終わったという。
詐欺と言っても、決して今の時代にはやっているような弱いものからむしりとるような悪徳ではなかったと著者は説く。交際のあった人物といい、彼がもうけた金額といい、投資した金額といい、なまなかではないのだが、あまりに破天荒すぎるが故に、彼を知る著名人は付き合いがあった事実を公言したくなかったのではないだろうか。
恐らく、戦前のハンニは今で言うワイドショーを騒がせた人物のタイプ、つまり何ら文化的実りももたらさず、面白おかしい騒ぎをもたらしただけに終わってしまったのではないかと思う。本人は大真面目であり、カリスマ性を備え、非常にダイナミックな行動力がある人だっただけに、こけ方も派手だったハンニ。同じくプロパガンダを天才的に操ったヒトラーのように後世に語り継がれる極悪人とならなかったのは、天性楽天的、おめでたい面があったからだろうと想像する。
ダイナミックにずれまくったお方だが、愛すべき面のある、実に面白い人物がいたものだと思う。夢想と実際をまぜこぜにしたうそだらけの経歴に散散翻弄され、迷宮をさまよう気分を味わいつつもハンニを紹介してくれた著者に拍手したい思いである。
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