投稿元:
レビューを見る
1969年に創刊されたマレー・ラインスターによるSFサスペンス(ホラー)小説。60~70年代、SFというジャンルが一般大衆にも浸透するに至り人類社会に恐怖を巻き起こす「侵略物」も一つのジャンルとして確立され、宇宙人や怪人、怪獣っといったクリーチャーは様々な形で出現し、新たな怪奇小説の一翼を担う事となり多くの読者を楽しませた。中でもラインスターは科学的視点を織り込んで実在しえない怪物の存在に説得力を持たせ、翻弄される人々を描く事でエンターテイメントとすることを得意とした作家である。
謎の「可動体」は下等生物を自らの体を使って窒息、死亡させてその腐敗ガスを得て増殖する生物であった。しかし、それが或る日、異常繁殖し、食料を求めた末についには人類の存続に大きな脅威となり人間とガス状生物との戦いが始まる。
ガス状生命体という未知の生物の存在を宇宙侵略説で説明するのはSFとしての「お約束」だが、ラインスターは敢て一ひねりを加えて太古の昔から死霊や餓鬼といった伝説の起源は実はこの生物であったという論理を当てはめることでサスペンスからホラーへシフトさせる構成と筆力は「さすがラインスター!」と思わず膝を叩きたくなる。愛おしきアメリカB級SF怪獣映画を髣髴とさせる傑作。