紙の本
気づいてしまった恋
2004/03/07 17:46
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投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは「恋愛小説」なのだ、と、あえていってみたい。
三島由紀夫の戯曲化でも有名な『黒蜥蜴』は、さしあたり、盗賊と探偵の知恵比べを主題とした、乱歩らしい推理小説なのだが、敵と味方が最後に恋をしていたことに気づく、という、よく知られたラストシーンは、果たして何を物語るのだろうか?
しかし、これは乱歩の作品群を見渡した時、取り立てて特異な設定・展開というわけではない。というのも、乱歩作品の多くにおいて、盗賊に代表されれる敵と、探偵に代表される味方は、お互いのトリックに敬意さえはらう、いわば好敵手と認識されているからだ。この構図が維持されたまま、キャラクターの性別が異性同士となれば、そこに「恋」が生まれてしまうのも不思議ではない。
こうして、乱歩ワールドは、「事件」としての「謎」だけでなく、「恋」といった、すぐれて人間的な「謎」をも孕み込み、迷宮と化す。
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表題の黒蜥蜴は、舞台化・映画化されたものをご覧になった方も多いと思う。(私が初めてこの作品を見たのは、三輪明宏さんのものだった)美しい女盗賊と稀代の名探偵との対決は、ページをめくるのに思わず息を詰めてしまう。他に人間豹・黒い虹・石榴を収録。
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ほんとうは春陽堂のやつを読んだんだけど。この話は黒蜥蜴の、恐怖美術館がすごいおもしろい。わらった。
明智小五郎のさいごのチューがダンディ!
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正しく明智小五郎VS女盗賊。タイトルは聞いたことがあったのですが、実は高階良子の少女漫画だと思っていた有様です。美輪明宏の黒蜥蜴とどういう関係なのかなーと思っていたり。長年の謎が氷解しました……そして自分の無知さ具合も痛感しました。
黒蜥蜴の登場シーンがすごいキャッチーで、頭の中で緑川夫人というと登場シーンの宝石踊りと次のシーンの黒服美女のギャップがぐるぐる。1つ1つのシーンが絵になるお人だったなぁと。キャラに突飛さはないと思うのですが、なんかあの妖艶さは他作品にはない。幼少期にあれ読んだらインパクト強すぎるだろうし、今読んでもクラクラしました。
それだけに、潤ちゃんの頼りにならなさが泣ける。カッコいい相方が欲しいぁと。女の子でも男の子でもいいから。……でも、それだと明智さんが負けちゃうか。 終盤の追い詰められるところは、なかなか切なかったです。そんくらい気付けー、って。あそこで気づいちゃったらどうしようもないのはわかるのですが、黒蜥蜴がいぶかしがったり勝ち誇ったりする度に、うしろうしろー、って気分でした。
「人間豹」も、頭に浮かぶ画像のインパクトが凄かったです。紙芝居やさんの口上を聞いてどきどきする子どもの気分。とりあえずヒロインが被害に遭いすぎです。明智夫人とか、この人だけは大丈夫だと思ったけど、あまりにあまりの展開に呆然としちゃいました。いいのかあんなシーン描写して!
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「黒蜥蜴」は、メチャクチャおもしろくて、一気に読んでしまいました。
「夜の夢こそまこと」といっていた乱歩の本当に自分が存在して見たかった世界というのは、こういう世界なんだろうなぁと思います。
そして、その勢いで「人間豹」を読み出したら、全然、前に進まなくて困ってしまいました(笑)
すげえ、作品の出来に、差があるなぁ乱歩。
明智小五郎がでてきて、やっと、お話が動き出した感じで読めました。
でも、明智小五郎が出てくると、急に敵が弱くなったような印象をうれます。
ところで、何で、「豹人間」ではなくって、「人間豹」なんだろう?
「石榴」は、好きです。
悪と滅びにも、美学がある。そして、もちろん、正義がある。そんな世界が、きっと楽しいのだと思います。
全集ということで、1冊が分厚くて、1冊読む間に2冊ずつぐらい刊行されています。
どこまで、読めることやら……。
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『黒い虹』
夫が嫌っているのを知りつつある指輪をしている涼子。徐々に離れていく夫。ある日夫の不在中に誘拐された息子・冬雄。脅迫状に指示されて男の元に向かった涼子。棺桶の中の冬雄の遺体。発見された棺桶の中の涼子と冬雄の遺体。死の直前、涼子が見た男の正体。連作の一部
『黒蜥蜴』
「黒蜥蜴」の刺青をいれた女。殺人を犯した男・雨宮を別人に仕立てあげ部下にする。大阪の富豪岩瀬氏の所有するダイヤ「エジプトの星」を狙う黒蜥蜴。「エジプトの星」を奪うために岩瀬氏の娘・早苗を誘拐しようとする黒蜥蜴。護に当たる明智小五郎。東京のホテルでの対決。緑川婦人として岩瀬氏に近づく黒蜥蜴。早苗の偽物をベットに寝かせて誘拐に成功したかと思われたが明智小五郎の勝ち。怪しい老人に仕事を依頼される桜山葉子。ある女性に変装して屋敷に入り込む。屋敷から早苗を誘拐する「黒蜥蜴」。屋敷に現れた酔っぱらい。長椅子に寝転び暴れる酔っぱらい。部屋から運び出された長椅子。明智小五郎の追跡。船上の対決。長椅子の中に閉じ込めれたまま水葬される明智小五郎。「黒蜥蜴」のアジトの剥製たち。監禁された早苗。黒蜥蜴一味の侵入者。水槽に入れられたはずの早苗が帰還したと報じる新聞。水槽に入れられた剥製。雨宮潤一の裏切りか?黒蜥蜴と明智小五郎の対決。
『人間豹』
明智小五郎シリーズ
神谷芳雄がカフェ・アフロディーテで出会った怪人物・恩田。恩田に誘拐された恋人の弘子。監禁される神谷。目の前で繰り広げられる惨劇。恩田親子と豹。1年後新たな恋人・蘭子との出会い。再びの誘拐と明智小五郎の登場。蘭子の死。明智小五郎対人間豹・恩田。文代夫人を狙う恩田。蝋人形による罠。誘拐される文代。サーカス団に隠された罠。
『石榴』
警官が目撃した柘榴のように顔をとかされた遺体。遺体をスケッチする青年。刑事の友人である和菓子屋の妻からの告白。対立する2軒の和菓子屋。殺害されたと思われた琴野。対立していた妻の夫・谷内。しかし刑事の捜査から発見された指紋から被害者と加害者の入れ替りの可能が・・・。
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2010/11/23
一貫して、洒落ていて優雅な空気を纏った作品でした。
探偵と女怪盗の抜き差しならない闘いであるという物語の筋に対して、
緊張感の中で生まれる、純粋な愛が骨子にされていて、
勿論、二転三転と欺いて裏を返して手玉にとって、探偵ものとしてもわくわくする。
結末が美しかったな、と思う。
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「黒い虹」「黒蜥蜴」「人間豹」「石榴」の4作が収録されています。
一番面白かったのは「人間豹」。乱歩のお家芸であるエログロ、明智と犯人との頭脳戦、小林少年の活躍、そして終盤のタイムリミットサスペンスといった盛りだくさんの内容が、非常にテンポよく展開していきます。大の大人の私でも童心に返ったようなドキドキ感の中で読むことができ、次のページをめくるのが楽しかったです。ミステリとしては細かい瑕疵がいくつかあり、乱歩本人も「子どもらしい読み物」と述べるなど、自他ともにそれほど高い評価は受けていない作品のようですが、私は本作こそが大衆作家・江戸川乱歩の原点であるように感じました。
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有名な『黒蜥蜴』はやはり黒蜥蜴の妖艶さとかわいらしさが魅力の話だと思う。
展開としては乱歩の長編お決まりの展開なので驚くことは特に無いけど、黒蜥蜴のキャラが良い。
終わり方も切なくて耽美で好き。
『人間豹』はあまり期待しないで読み始めたけど、黒蜥蜴よりテンポとハラハラ感があって一気に読めた。
ツッコミどころは相変わらず多いけど惹きつける文章力がすごい。
ラストのあたりはちょっと無理やり終わらせた感というか駆け足感が強いかなあ…。
『石榴』が話としてはいちばんしっかりしてるかなという印象。
推理物をちゃんと書こうとした感じが伝わってくる。
けど、すでによんだ『二癈人』などに展開などが似てるので新たな驚きが薄く、印象も薄くなってる感じがするかな。
解説のあとにある『私と乱歩』がいちいち頷けてよかった。
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長かったけどついに読了!以前に子供向け版の江戸川乱歩は読んでいましたが、いわゆる大人向けの乱歩は初だったかも。とにかく当時の風が感じられるところが好き☆トリック云々よりも、当時の情景が古くさくて良い。※褒めてますf^_^;黒蜥蜴はスカパーで、天知茂さんと小川真由美さんのコンビを見てましたが、違うバージョンもあり、それを脳内再生しながら読みました。作者のあとがきも興味深い☆このシリーズ読み進めたいです!
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「黒蜥蜴」だけでいいのに、と思いつつ他の収録作も読む。
「黒い虹」、途中で終るだろうと思ったら、案の定、リレー小説の第1回。風呂敷を広げるだけでよいから、乱歩には肩の荷が軽い仕事だったはず。
「黒蜥蜴」、三島由紀夫による戯曲版が、かなり原作に準拠していることに気づく。
「人間豹」、フーダニットをなげうった通俗長編はサクサク読める。獣人恩田の出自さえ投げっぱなしで物語は疾走する。乱歩の語り口は色褪せない。なお、望月三起也「ワイルド7」で、明智夫人あわや!のピンチが脚色・再現されていた。
「石榴」、こと本格になると乱歩の姿勢は敬虔そのもの。自作解説からも、本格に懸けた想いがうかがえる。