紙の本
偉業を成し遂げた男の物語
2007/09/07 11:49
9人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今から振り返ると、小泉首相が最初に道路公団改革に手をつけたのには理由があった。それは、道路公団改革は実は「やり易い改革」であったからなのである。なんといっても関係する人間の人数が少なかった。組織改革に携わったことのある人ならご存知だろうが、改革で最大の問題はくびにした人間のはめ込み先である。国鉄は15万人以上の従業員がいたが(ピーク時は35万人もいた!)、道路公団はたったの8千人に過ぎない。私は道路公団の常務理事だった人と何度か酒席を共にしたことがある。彼曰く「道路公団は黒字だったのに、小泉のバカが改革の目玉に据えたことで、改革しないでいい組織がごちゃごちゃにされてしまった」。しかし、私は彼の言葉を額面どおりに受け取れなかった。なぜなら小泉が道路公団問題を取り上げる5年位前から、JR東日本の会長だった住田正二氏と彼に連なる運輸省改革派官僚の間から、「国鉄の次は道路が問題になる。道路公団の問題は国鉄と二重写しだ」という声が盛んに発しられはじめていたのを知っているからだ。日本の問題はどれもこれも同じである。日本の経済構造は、全部豊かで元気で成長を続ける「日本のお父さん」の立場にある「東京」に、日本全国の「子供たち」である「イナカモノ」がぶら下がり、その生き血を吸うという構造になっている。国鉄だって昭和39年までは一度も赤字となったことの無い優良企業だったのだ。ところがその後、イナカモノとそれに連なる田舎代議士たちが「我田引鉄」して赤字ローカル線の建設を国鉄に強要し、国鉄は20兆円を越える破綻企業に転落して行ったのである。国鉄を潰したのは日本全国のイナカモノである。道路も同じだ。高速道路は借金で建設するが、建設にかかった借金を通行料で返済し、返済が終わったらタダにするのが基本である。ところが全国の高速道路のうち黒字なのは東名高速と中央高速だけで、あとは全部赤字である。それでもとりわけ東名高速の黒字が巨額なので、「余った金は使っちまえ」よろしく、今日も加藤紘一や古賀誠らの田舎代議士は赤字高速道路建設の要求を政府に突きつけ続けるのである。しかしこの仕組は永遠に続かない。いつかは主客逆転して、東名の黒字でまかないきれないほどの田舎道路が建設されてしまうのである。そうなったら、あとの祭りで借金は雪だるま式に急増するのである。だから「道路公団は黒字だから改革の必要な無い」というのはウソであって「黒字のうちに民営化して借金して不良道路建設を膨張させる仕組を壊さなければいけない」というのが本当なのである。空港も同じだ。日本全国の空港は羽田と成田、中部国際空港を除いて赤字のところが大半である。田舎空港の赤字は羽田の黒字で補填させられているのである。日本は総人口が減少する時代に突入する。もう右肩上がりの高度成長時代は過去のものとなったのである。しかし、自分で稼いだことの無い「東京ぶら下がり健康法」が染み付いたイナカモノは、いまだに東京へのおねだりを続けている。げに「イナカモノのおねだりはもう沢山」なのである。
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自意識過剰の作家による政治小説。ノンフィクション風に書かれているフィクションとしか思えない。
自分だけが善で、他はみな抵抗勢力で、見事なまでに登場人物ホトンドをこき下ろしている。そして、不思議なほどにそれらの人物の考え方や感想を全て分かったように記載されている。
読めば読むほど著者の人間性を疑われる。
本当の真実については分からないことが多い事案だが、ある程度公にされている言動でも自分に不都合なものは全部カットしてあり、少なくともこの問題についての他者の文献を読まない限り、ミスリードされる危険性はある。
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高速道路と一般有料道路の建設コスト
横浜新道や小田原厚木道路などは、1/5のコスト。(ミニ新幹線は、1/10のコスト)p.90
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高速道路4公団民営化委員会の中心的存在であった猪瀬直樹氏が、その過程を克明に記録した書である。経済政策そして政治の主要な機能が富の再分配であるのならば、その直接的な手段として最も利用されるのが道路建設である。故に、多くの利権が渦巻き、政治の手段としてあるいは目的としても利用されてしまうのがまた道路建設である。経済成長が右肩上がりで続き、いくら借金をしてもそれを上回る生産を国が作り出すことができている間は大きな問題とはならなかったが、バブル終焉とともにこうした構造は持続不可能であることは明らかである。それにもかかわらず、国土交通省や道路公団そしてそのファミリー企業達は一度吸ったその甘い汁をすい続けるために、国民の不利益も省みずに増殖を続ける。こうした流れにストップをかけようとしたのが小泉元首相である。道路公団民営化は構造改革の目玉のひとつであった。郵貯で集められた国民の大切な資金が、財政投融資という形で採算性度外視の国家事業に湯水のごとく注ぎ込まれ挙句の果てには、回収不能となって多額の税金で穴埋めをする。郵貯はこうした悪の構造の入り口であり、道路は注ぎ込む先の出口である。郵政民営化と道路公団民営化はひとつの流れでつながった入口と出口であり表裏一体である。竹中平蔵という良識と正義感にあふれた稀有なエコノミストは、郵政改革を主導し小泉改革を支えたが、一方で道路公団改革においても猪瀬直樹が果たした役割は同じくらい大きい。世間には、猪瀬氏の歯に衣着せぬ言い口に不快感を示す人たちもいるであろうが、彼が主張していることはすべて正論であり、場偉大な資料を丹念に調べ上げたデータに基づいたものである。あまりにも巨大化しずぎた道路建設の利権はすでに誰も把握することができないほどになっていた。誰もコントロールすることがでいない怪物の表名ものである。猪瀬氏の前著である日本国の研究によって、ファミリー企業の癒着や非効率によって国民の利益が蝕まれていることを立証した猪瀬氏は、道路公団を改革するにあたって最も適任であろう。彼がいなければ、玉虫色の改革案で法案が提出され、結局は骨抜きの改革になってしまっていた可能性があることを考えると、空恐ろしいものである。今後も民営化のプロセスもしっかりと監視してほしい。
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高速道路4公団民営化委員会の中心的存在であった猪瀬直樹氏が、その過程を克明に記録した書である。経済政策そして政治の主要な機能が富の再分配であるのならば、その直接的な手段として最も利用されるのが道路建設である。故に、多くの利権が渦巻き、政治の手段としてあるいは目的としても利用されてしまうのがまた道路建設である。経済成長が右肩上がりで続き、いくら借金をしてもそれを上回る生産を国が作り出すことができている間は大きな問題とはならなかったが、バブル終焉とともにこうした構造は持続不可能であることは明らかである。それにもかかわらず、国土交通省や道路公団そしてそのファミリー企業達は一度吸ったその甘い汁をすい続けるために、国民の不利益も省みずに増殖を続ける。
こうした流れにストップをかけようとしたのが小泉元首相である。道路公団民営化は構造改革の目玉のひとつであった。郵貯で集められた国民の大切な資金が、財政投融資という形で採算性度外視の国家事業に湯水のごとく注ぎ込まれ挙句の果てには、回収不能となって多額の税金で穴埋めをする。郵貯はこうした悪の構造の入り口であり、道路は注ぎ込む先の出口である。郵政民営化と道路公団民営化はひとつの流れでつながった入口と出口であり表裏一体である。
竹中平蔵という良識と正義感にあふれた稀有なエコノミストは、郵政改革を主導し小泉改革を支えたが、一方で道路公団改革においても猪瀬直樹が果たした役割は同じくらい大きい。世間には、猪瀬氏の歯に衣着せぬ言い口に不快感を示す人たちもいるであろうが、彼が主張していることはすべて正論であり、場偉大な資料を丹念に調べ上げたデータに基づいたものである。あまりにも巨大化しずぎた道路建設の利権はすでに誰も把握することができないほどになっていた。誰もコントロールすることがでいない怪物の表名ものである。猪瀬氏の前著である日本国の研究によって、ファミリー企業の癒着や非効率によって国民の利益が蝕まれていることを立証した猪瀬氏は、道路公団を改革するにあたって最も適任であろう。
彼がいなければ、玉虫色の改革案で法案が提出され、結局は骨抜きの改革になってしまっていた可能性があることを考えると、空恐ろしいものである。今後も民営化のプロセスもしっかりと監視してほしい。
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著者の動きには他の方からの疑義が寄せられているので、あくまでもこの国の仕組みについて知るために読んだ。
本著が出された2003年から早20年が過ぎ、あの頃はまだお気楽だったなぁと“騒ぎ”を眺める事ができるが、現実は国力は人口減少格差拡大地方疲弊により弱まり、道路を作っても利用は伸びない、収益は上がらない、保守維持管理さえままならない笑えない状況になっている。
しかし国の仕組みは変わる事がなく、ひたすら終わった官僚国家の姿を晒すのみである。