紙の本
ミステリーであるからあまり詳述できないが著者の過去の作品と比較してみると
2012/05/19 00:33
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投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮部みゆきは多方面のジャンルで優れた作品がありますが私は現代の経済社会に直結した風俗をとらえ、社会との関わりの中で犯罪に巻き込まれていく一般庶民を丁寧に描く作品が彼女の真骨頂だと思います。
『火車』がそうでした。日本経済の爛熟期終末において「家計」がこうむった影響の重要な一面を経済の構造から説明してその悲劇と女性の自立がなす犯罪を活写した傑作との印象をもったものです。。
『理由』もそうでした。高層マンションを舞台にした、一家4人殺人事件。戦後の貧しさを引きずっている人・新しい感覚の若者の登場。複雑にしかしリアル感を持った絡み合いに中から殺されたもの殺したものの理由が浮かび上がってきます
『模倣犯』もマスコミに操られる大衆心理の怖さを描いていました。
私たちは常に社会との接点を深く広く持っているものです。その重みの中で生きていくことの難しさに私達は直面します。その時何が正義であり何が不正義なのかその分別さえ混迷しそれでも生きていくものです。それが宮部みゆきの描く現代人でした。
しかし、今回の作品はこの人間の背負う十字架というべき「社会性」がまるで欠落した仕上がりになっています。
主人公の男性はコンツェルンのオーナーの娘と結婚し、家族共々淡い水彩画ような透明な暮らしに満足しています。オーナーの仕事ぶり、日常生活は述べられませんがともかくお金持ちの好々爺です。オーナーの雇った実直な運転手が自転車にぶつけられ死亡する事件が発生します。運転手には二人の年頃の娘がいて、妹から父の思い出を本にしたいと依頼された主人公は事件の真相究明に乗り出すことになります。もしかしたら殺人かもしれない。父の過去になにか暗いものがありそうだと姉はこの出版には乗り気がありません………。
著者はあえて「社会性」を捨象したのでしょうが、そのため、実感できるストーリー展開もなければ、魅力的な「人間性」も登場しない結果となりました。
後半になってこの姉妹がクローズアップされますが、我が家にも同じ年頃の二人のじゃじゃ馬娘がいるものですから、比べてしまいます。こういう自己喪失の女性が今でも存在するのだろうか、居たとしても読者として共感するところはないし………。『火車』に登場した主人公と比較すれば、同じ作者の描いた女性像とはとても思えません。古くさいタイプに退行しているのです。篠田節子の描くしたたかな女性たち(『女たちのジハード』、『コンタクトゾーン』)、桐野夏生『グロテスク』の常軌を逸した性格の姉妹にむしろ生き生きした血の通いを感じます。
ミステリーには社会性や人間性を描くことに重点をおかず、ただ鮮やかに読者の予想を裏切ること、その一本勝負の名作がたくさんあります。この分野でも著者には傑作がありました。『R・P・G』では本格のどんでん返しを楽しむことができたのです。
その意味ではどっちつかずであって、待望した「二年ぶりの現代ミステリー」としては期待を裏切られた思いが残りました。
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宮部みゆきワールドへの第一歩目がこの本でした。後味がとにかく悪かった…(ノ_-。)他の作品はこんなことないんだよね?
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いつかは購入しようと思っていた本。今日、購入しちゃいました。これからです、読むのは。
帯より『事件は小さいけれど、悩みは深い。稀代の物語作家が、あなたの魂を揺さぶる新たな代表作を、いまここに生み出した──』
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ちょっと期待しすぎた・・・
期待ハズレまではいかないけどちょっと、物足りなかったなぁ〜。
でも、人間関係のドロドロさはさすがだなぁ〜。
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ある男の死んだ原因をつきとめろと、舅の依頼で調査を始めた主人公。男の人生を辿り、淡々と進む物語ではあるが、ラストのきれいさは宮部みゆき独特のものだなと感じいる。
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ある財閥の会長の極個人的な運転手だった男が自転車に轢かれて亡くなった。
事故ではなく企まれたことだと主張する二人の娘は 犯人探しの助けにしようと 父の思い出を本にしようとする。本の編集者として選ばれたのは 会長の娘婿。
一人の人間の一生とは 傍から見るだけでは計り知れないことが山のように積もっている。事の重大さの大小はあっても 誰もが何かを背負って生きているのだ。押し潰されそうになりながら しかし押し潰されるわけにはいかずに 宥めながら 闘いながら。
何不足ない幸福の中にいるように見える娘婿――この物語の語り手的存在でもあり探偵役?でもある――にも心には他人には見えない翳りはある。そしてそれが 幸福すぎる彼に反感を抱かせずに物語を委ねられる理由でもあるように思う。
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約4時間
帯通り、事件は小さいが、悩みは大きい。
LASTがもう少し、さわやかならば、心地よいが、それだとあまりに大衆向けすぎか?
これはきっと推理ものってことにした、人間描写モノ。
宮部みゆきのでも新しい感覚。
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これをミステリーと呼ぶのは嘘だろうなあ、と思うような話でした。主人公がある人物の死亡事故の真相を追っていくのだけど、実はそこはまったく話のメインではない、という。
私は宮部さんの書く人間模様が事件そのものよりも好きだったので、この話もけっこう楽しみながら読めました。
……ただ、どうしてもひとつ解らないのが……なぜこの話のタイトルが「誰か」なのか? ということだったり。私の読解力が足らんのでしょうか。うーむ。
(読書日:2004/3)
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先日、「炎と氷」を読んで、そのすざましい主人公をみたあとに、この「誰か」の探偵役になるのは、なんともひょうひょうとしたマイルドな雰囲気がとりえのサラリーマンです。
財閥の会長の妾の娘と結婚し、その傘下企業で働く主人公「杉村」は、その立場から裕福で幸せの毎日で悩みがないように周りから思われる役です。この「誰か」のストーリーから言えば、中編くらいの小説になっていたかもしれないけど、この杉村の雰囲気が単に裕福な悩みのないのほほんとしたやさしさでなく、誇りを持った芯のある強いやさしさに裏づけされいて、だからこそ家族を温かい目で見てることができるのだろうと分かるようになるには、これくらいの分量の小説になるのかもしれません。
模倣犯やクロスファイヤーなど、過去の作品からこの作品を同じ系統で宮部みゆきさんに期待すると、物足りなさを感じるかもしれないけど、逆に私はそこがよかったと感じました。
ミステリーとしては、一応、謎はあるけど、ま、その点は私にとってはあまり意味がないほどに思えました。
2003.12.31
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主人公の目線で丁寧に書かれているのだけど、やや話の展開がスロー気味かな。続編が出てもいいのではという設定。(2004.12.9)
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非常に読みやすいので、読書苦手な方でも入りやすいのでは。結構後味の悪い話なんですけど、それを上手くマイルドにしている所は流石です。
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義理の父が経営する会社の、私用運転手が自転車事故に遭い亡くなってしまう。残された二人の姉妹が父の事を本にしたいというので、義理の父に編集者として依頼され運転手の過去を辿り直す。だが、妹と違い、姉はあまり父親の過去を妹に知らせたくない事情があった。姉の幼い頃の記憶に不自然な点があり、事件性を匂わせるが・・・ミステリーっぽくはなかったように思います。期待していただけに物足りなさがありました。
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宮部さんらしく、読み手の興味をそらさない展開。「理由」や「模倣犯」に比べると、少し軽めではありますが、ジーンとくるところもありました。
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「ひとは一人では生きてゆけない―」事件としては小さなものだが、その背景に潜む人と人とのつながりと感情のもつれ合い、葛藤。タイトル「誰か」の意味は深い。
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これはミステリではなく、梶田のひき逃げ事件を事由にした、姉妹の悪意の物語だと思えてしまう。小さなエピソードは事件に関係なく、ラストも中途半端。やはり全盛期の面白さはもう期待できないのか?