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秀吉に対する悪意をこめたように読める小説であるが、逆に何故民衆を酷使した支配者を尊崇の念をこめて奉らねばならないのかと問われると、理由はない。(徳川政権を打倒して明治政府が成立したため、徳川家をおとしめるために、徳川家に滅ぼされた豊臣家を評価するという動きもあったのだろうが。)
天下統一すらも女にもてたいための手段である、というのはちょっと信じられないと思うが、大河ドラマ等々で語られる秀吉伝よりも、妖説の方が説得力もあるし、何よりも面白い。
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まず何より前半では、竹中半兵衛の策略に感動しました。
「右の手をみせて、左の手でやることをやる」「夷を以って夷を征す」
情報を収集し相手の心理を読み、相手の動きを予測し、その裏をかく。
全てを事前にセッティングして、相手を筋書き通りに動かす。
まさに、脚本・演出:竹中半兵衛、演出・主役:豊臣秀吉
で、のし上がっていく様は見事です。
もう一つの驚き。
秀吉にそんな性癖があったとは・・・天下を盗る目的が女ってとこが滑稽。執念の深さは異常ですね。
歴史の裏側を覗いてるようなワクワクした気分で読みました。
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●非モテの恨み、天下に届く
『へうげもの』で活写されたブラック系“人たらし”秀吉の人物造形が最近のヒットだったが、
こちらの非モテ怨念系ロリ併発太閤にも口アングリである。
信長の子息・息女の微笑ましい交歓風景が、未来図では色と叛逆殺に彩られる――戦国・恐怖の暗転シーンには息を呑んだ。
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ここまで人間臭く計算高い秀吉を読んだのは初めてでした。
しかし本当に秀吉はこんな人だったのだろうと思ってしまうほど真に迫っていました。
正直、秀吉に対する夢は壊れましたがしかし歴史小説としてはとても面白く読ませてもらいました。
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上下巻の感想を合わせて。
・十三歳のお市さまに惚れる秀吉にじゅうさんさい。ちょっと待ってそれロリコ(シッ!)。
・安国寺恵瓊さんに孟子を教えてもらうねねとか…!そして小生意気な所がまた可愛い。
・突然吉川氏(『新書太閤記』の作者)の名前が出て来て吹いた。
・恵瓊さんのバックアップで見事ねねをゲットした秀吉。その年の差十三。やっぱロリコry。(黙りなさいよ!)
・秀吉の怖いもの:信長とねね
・はんべが光秀のこと「明智先生」っていうとる!もえ!にやにや笑う企んけはんべ!もえ!もえ!
・秀吉が墨俣に一夜城を築いていた時はんべは鼻毛を抜いていました。鼻毛て。
・秀吉がお市に想いを寄せていることをねねの手紙で知りつつつも秀吉に万福丸の処刑を命じる信長。そしてそれを喜ぶねね。こ、怖…!
・秀吉の魔の手が明智家と菊丸に!逃げて全力で逃げて。
・明智家にそんなことをしつつも、謙信の矢面に立てられそうになった利家を身をもって庇う秀吉。やっぱり格好良い!
・と思ったらそれさえもはんべの策略でした。このふたり怖いよ!
・おしゃべり官兵衛かわいいよ官兵衛。
・はんべが秀吉に殺されるというまさかの展開。このふたりの最期の会話が凄く切ない…!
・この小説では光秀の謀叛は秀吉と官兵衛の策略説を採用しているようで……怖いよ!でも清々しいまでに黒い秀吉に管理人はときめきを隠せない。
秀吉という人物の魅力を余すところ無く抜き出している小説だと思います。
醜いけど美しい、相反した魅力を持った秀吉というひとにぐんぐん引き寄せられるというか。
後半はやっぱり読んでて辛かったのですが、周囲の武将にかなり救われたなー。
蒲生さんとか秀次とかあんまりに格好良過ぎてうっかり惚れそうだったよ!
この小説を読んで思ったのですが、自分で自覚しているよりもかなり秀吉が好きだったようです。後半読み進めるのがあんまりに辛くて速度落ちたもんな・・・めったに無いことです。
「ひとは顔じゃないんだよおおおお」となんど叫びそうになったことか。容姿も大事だけどさ!(・・・)
みんな毒がある感じでとてもたまらない小説でした。
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信長の妹・お市に一目惚れしてしまった秀吉は、出世して彼女を自分のものにするために邪魔者を排除してゆく。例え恩義のある相手であろうと容赦なく罠にかけ、それでいて表面上では周りにへらへらと取り繕う。
とにかくお前に良心はないのかってくらい腹黒く、剥き出しになった秀吉のどす黒い欲望にただただ圧倒される。
何がここまで彼を野望に走らせたんだろう?
お市をはじめとする、秀吉の狙う姫は必ず高貴・美しい・幼いの3点を兼ね備えている。
美しい女性から虐げられ続けてきた秀吉は、明らかに自分の容姿・身分や女性に対してのコンプレックスを持っている。だからこそ自分の手に入れられないもの全ての頂点に立つお市を自分のものにしたかったんだろう。
しかし、高貴な女性に取り入ろうとすればするほど秀吉は彼女たちから蔑視されて「猿」と罵られる。女の人に執着するほど自分のコンプレックスを解消するどころがますます傷口を広げているようにしか見えないんだけど。お市に至っては、秀吉は夫・浅井長政と息子を殺した敵として完全に殺意並みの憎しみを抱かれているし。
秀吉はお市へ惚れているというよりも、信仰しているような状態に近い。
巧妙な策で武将たちを陥れるほど知恵が働く割に、お市に対して自分を良く見せようとかそういうテクニックは出てこず、彼女の前に立つと秀吉はただ地べたに這いつくばって憐れみを請うことしかできなくなってしまう。そしてお市に媚びへつらうほど、ますます蔑視されていく。
女性に近づこうとするほどに嫌われコンプレックスを悪化させているけれど、それでも女性嫌いになることはなく、ひたすらにギラギラと欲望を燃やし続けるところが秀吉が天下をとれた理由なんだろうなぁ。
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「秀吉の枷」を読んで悪い秀吉を読んでみたくなったんだが、これは極めつけ。結構古い作品なんだが昔からこういう秀吉像もあったんだね。でも妙に説得力あり。楽しめました。
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面白い!
秀吉が胸のすく大悪人である。
悪人っぷりは容赦がない。
それも、「すべてお見通し」という風情でクールを気取る、作者の全能願望が透けて見えるような自己投影ではなく、悪人で、下品で、欲望まみれで、その欲望が汚くて、まさにダークヒーロー。こんや魅力的な秀吉見たことがない。
いや、太閤記はどれを読んでも、やはり秀吉は魅力的なのだけど、このえげつなさは最高だ。
わき役もいい。竹中半兵衛の悪役クールっぷりもすさまじいし、半兵衛の最後もいい。代わりに出てきた官兵衛もいいね。
上巻を読み終わって、本能寺の変が終わった。
このあと、まともに描いても怪物にしかならない秀吉後半生をどう書いてくれるのかと思うとぞくぞくする。
物語を読んでいるという楽しさを存分に味あわせてくれる小説だ。
いいものを読んだ、という感じがする。
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山田風太郎 著「妖説太閤記(上)」を読みました。
あの太閤記をあの山田風太郎が描く異色歴史小説。上巻は、本能寺の変までが描かれる。秀吉の魅力的な人柄の裏には権力を握ろうと権謀術数を駆使して天下をねらうしたたかな男の欲望が渦巻いていた。
あの山田風太郎が描くとあって、おどろおどろしいまさに妖しい太閤記なのかと思いきやいい意味で裏切られ、意外と直球勝負の歴史小説でした。
しかし、そこは山田風太郎、ただの太閤記であるはずはなく、秀吉が権力を握ろうとする欲望を動かしているのが、小さい頃からの女性に対するコンプレックスであったという解釈など新たな切り口から秀吉像に迫っているのが興味深かったです。
また、軍師竹中半兵衛との関係やその死の真相なども歴史の裏側に迫るような意外な展開で読まされ、歴史小説の醍醐味を味わうことができました。
下巻で権力を掌中にした秀吉が晩年を迎えるまでをどのように描いていくのか読むのが楽しみです。
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下劣な野望を抱きつつ、人を魅了していくカリスマ秀吉の成り上がり一代記。時代の全てを見通してきたかのような竹中半兵衛が冷酷な軍師として暗躍。
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草履取りから天下人へ・・・
日本史上最大の成り上がり者・・・
豊臣秀吉・・・
日本の英雄の1人・・・
天下を取るまでの政略、外交、軍事の天才的な冴え・・・
恐ろしいほどの強運の持ち主・・・
お調子者で陽気で人から好かれ・・・
武将だけども人を殺すのが嫌い・・・
多くの人を取り込む人たらし・・・
大体の秀吉モノ(太閤記モノ)はこの秀吉の陽性にクローズアップ・・・
日本人が好きな秀吉モノはこっち・・・
天下を取ってからの転落していく秀吉の暗部にはあまり触れない・・・
落差がありすぎて酷すぎるから・・・
まるで別人かと思うくらいの変貌を遂げるので・・・
秀吉好きな人も引いちゃうくらいなので・・・
大体は触られない・・・
そして、秀吉の暗黒面が出てくるのは天下を取ってから、とする・・・
しかし・・・
この・・・
山田風太郎の・・・
妖説太閤記は・・・
一味違う・・・
秀吉の暗部に、秀吉の闇にこそクローズアップ・・・
そもそも秀吉が成り上がっていったのは・・・
そう天下を取ることを目指したのは・・・
信長の妹であり戦国一とも謳われる美女のお市の方を手に入れるため・・・
もっと言うとお市を抱くために己をすべてを振り絞って戦国の世を駆け上がっていく、とする・・・
それは・・・
秀吉が・・・
その怪異な、醜い容貌のせいで・・・
女というものに・・・
まったく愛されないことからくるハイパーなコンプレックスから生まれ出た暗闇の情念から来ている・・・
この暗闇の情念が秀吉の才覚と絡み合って・・・
信長の下、頭角を現し・・・
そして、本能寺の変を引き起こす・・・
遠まわしに、決して悟られぬよう、ジワジワと明智光秀を追い込んで、自らの手は汚さずに、明智の手でもって主君、信長を討ち滅ぼす・・・
お市を手に入れるために・・・
邪魔な信長を消す・・・
ということで山田風太郎は秀吉黒幕説ですね・・・
好みの女を抱く・・・
好きなように抱く・・・
己の欲望をかなえるために、そのためだけに天下を取る・・・
天下を取ってからは欲望の歯止めが利かなくなる・・・
女を抱きまくるわ・・・
何万?何十万?の人に負担を強いて大建造物作りまくるわ・・・
大増税するわ・・・
大殺戮するわ・・・
無謀で無意味な海外遠征するわ・・・
あとのことなど知ったことか、と言わんばかりに、あらんかぎりの悪や愉しみをし尽くす・・・
そして枯れ果てていく・・・
妖説、とあるけど、非常に生生しくリアルな雰囲気を醸し出してる・・・
これぞ本当なんじゃない?と思わせてくれる山田風太郎の筆の凄みたるや・・・
感服です・・・
とても面白かった・・・
この妖説、上下巻・・・
上巻は秀吉の闇を見つつも、彼の才気の冴えをビンビン感じながら読める・・・
下巻は秀吉の闇しか見えない・・・
彼の欲望にまみれた姿と、孤独な姿と、彼に翻弄される人々の苦しみしか見えない・・・
特に最後の方はヤバイ・・・
死の臭いが漂ってくるくらいの酷さ・・・
巻末エッセイにもまさに書いてあるけど・・・
太閤殿下よ、早く死んでくれと・・・
主人公の死を願わずにおけないほどの衰えと哀れさ・・・
死んでホッとする、というね・・・
天下人の心の闇、孤独さ、哀れさがこれほど詰まった秀吉モノはない・・・
最後に・・・
文中で後に豊臣から天下を簒奪する徳川家康が感嘆しながら心の中で呟くのだけど・・・
ワタクシ、昔からこういう点において秀吉スゲー!と思って好きだったので、以下引用・・・
実に、やりたいことをやってのけた、あの男は。
天下制覇、大遠征のみならず、殺戮も、肉欲も、あらんかぎりの悪と権謀の愉しみも。
死ぬときのみれん、もがきようさえも、恥も外聞もない、ありったけの人間相をみせたではないか。
わしはああはできぬ。
しかし、生きるとは、あれがほんとうではないか。他をかえりみず、やりたい放題にやってのける。
それが人間が生きぬき、生きつくすということではないか?
あれほどの男は、前代未聞であったし、また未来にも一人もこの日本に現われてくることはあるまい。
と、ある・・・
絶対に統治してほしくない独裁者だけど・・・
やはり秀吉が好きだね・・・
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2021年7月25日読了。「猿」と呼ばれ、女性に縁がない貧しい野武士生活を送っていた藤吉郎は、己の才覚と軍師たちの謀略を用い織田家の中で出世し始めるが…。山田風太郎解釈による太閤記。他の作品に比べるとエログロ・忍法要素は少ないがそれゆえに史実に沿っていて、自分がよく知っている話でもあり非常に頭に入ってきやすい。超常的な武術を持たない代わりに、歪んだ嗜好・狂気を持つ秀吉像と彼を見込む半兵衛・官兵衛の暗躍ぶりや、登場人物たちの重々しい言葉遣いなどが読み応えがある。清州会議までがこの上巻、下巻は戦争要素が少なくなると思うが、家康配下の伊賀忍者と秀吉陣との争いという展開になるのか?続きが楽しみ。