紙の本
「青磁象嵌雲鶴文梅瓶」にインスピレーションを得た、焼き物師の子ども時代の物語
2004/06/08 19:10
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投稿者:ひろえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
12世紀の韓国の、高麗青磁の名産地チュルポに住む少年モギとトゥルミじいさん。モギはみなしごで、同じく天涯孤独のじいさんと一緒に、幼児の頃から橋の下で、ゴミ捨て場からの収穫物と野草などを食べて暮している。だが、盗みと物乞いは決してしない。じいさんはモギを心から愛し、かわいがり、生きる知恵や「山を読む」すべを教え、おもしろく含蓄のある話をたくさん話して聞かせてくれる。
ひょんなことから、村で随一の陶芸家のミンの下働きになったモギ。たきぎ運びや粘土漉しなどの地味な重労働をこなしながら、親方ミンの手元をこっそりのぞき、いつか作ってみたい陶磁器を空想する。短気で職人気質で芸術家肌の気難しい親方に対して、奥さんは、おいしいお弁当を作って食べさせ、寒い冬には死んだ息子のために作った綿入れの服を着せてくれる。
チュルポの陶芸家はみな、宮廷御用達の焼き物師になるという、めったにないチャンスを夢見ている。あるとき、都から目利きのキム特別官が訪れるという噂が流れる。親方のミンももちろん、すばらしい作品をつくり、展示する。一方、人々の目をひいたのは、「象嵌」を焼き物に応用したカンの斬新な意匠だった……。
正しい生き方を示すじいさん、陶磁器一筋の親方、優しい奥さん、公正なキム氏など、モギをとりまく環境に悪意がないのがいい。モギがおそらくは天性の才能を、見習い修行の中で開花させていくすがすがしさと、すばらしい芸術品がひとの心を打つ真実とがたくみに組み合わさった、読後感のさわやかな、まっすぐに読者の心に響いてくる作品である。
いくつかのサイトで、後日談に出てくる「青磁象嵌雲鶴文梅瓶」を見てみた。写真では細かいところまでわからないのが残念。だが、希代の陶芸家の子ども時代を想像するのに、この梅瓶からインスピレーションを得たことはよくわかる。
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モギは、ある意味では死んだ。私はそれを喜びを持って迎えた。百九十九ページ。決して長くはない物語。けれども私がこの本を読んでいるほんの二時間足らずの時間は、長かった。結末は予想より美しく、そして悲しく希望に満ち溢れていた。この本について多くは語らない。他者の評論よりも、実物が大事だと思う。ただ最後に、この物語の中にあるふたつの死を悼もう。それから、少年の誕生を――心から、祝福したい。
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美しい物語。ほんとうの勇気や優しさをすがすがしく伝えてくれる。モギがじいさんのことを忘れて自分だけごはんを食べたことを恥じる場面などではほんとうに涙が出ました。モギは鍛えられた身体と鍛えられた優しい心できっとすばらしい焼き物師になったことでしょう。子どもたちの課題図書になった本のようですが、ぜひ大人にも読んでほしいなと思いました。
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小学生の時に課題図書で読んだ本。
何故かわかんないけど家族でかなりはまって、何回読んだかわんない(笑)
短いのもあると思うけど。
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韓国のお話しです。
みなしごのモギは橋の下のおじいさんとくらしています。
毎日の食べるものにも、困る苦しい生活だけど、人としてきちんと育っているのはおじいさんの深い愛情のおかげ。
そんなモギが焼き物に興味をもち、仕事を見つけ成長していく姿が描かれたお話しで、モギの素直な性格や周りの優しい人たちの爽やかな印象を与え、貧しさや苦しさもサラッと読めてしまいました。
好きな事を見つける!そんな進路を前にした子どもたちに読んで欲しい1冊です。
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トゥルミじいさんの生きる誇りが強くて温かくて好き。モギが追い剥ぎに器を奪われたときにも、前に向かって進めたのは、トゥルミじいさんの言葉が心にあったからだろうと思う。
ミンの奥さんの優しさも、この物語を支えてる感じ。
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読みながら、そして読み終わっても、
「ひすいのごとく輝き、水のごとく澄む」
とたとえられる、高麗青磁のあやしいまでに美しい
色調を、えもいわれぬ形状の梅瓶を、倦むこともなく
つい脳裏に浮かべてしまう。
主人公の少年のひたむきさと強さも、なかなか。
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実話ということです。素晴らしいお話なのですが、
本としては少し説教くささというか、自己啓発感が出すぎてしまっていたように感じました。
あと、どうしても気になったのですが、
大切な届け物の最中に、人気がない危険な場所を寄り道?してでも見ておきなさいというトゥルミ爺さんのアドバイスに、ちょっと違和感があった。
案の定、盗賊にあってしまって作品を壊されてしまったし、殺される危険性だってあったんだから。
あの場所が本当に大事な場所で、しかもあそこへ行く機会が今後ないかもしれないという状況を踏まえた上でも、
せめて届け物の後にすべきだったのではと…(まあトゥルミ爺さんは、作品が気に入られて、帰りは朝廷が船で送ってくれることを見越していたのかもしれませんが・・・)
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韓国の孤児、モギ(木耳)の成長物語。
ちょっと説教臭く感じてしまう部分はあるけれど、子どもに、一生懸命頑張るのはカッコいいと気づいてもらえるかな?という期待を込めて。
ラストは涙が出ました。
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近所の図書館にあったので。
通勤中読んでいて思わず泣いてしまう所もありましたがまあ今の時代造られた昔ばなし、でしょうか。それにしても昔の方が良かった、と言う人もおりますが昔だって盗賊はいるし、道は悪いし、結構危険だったんだろうなあと思うのですがいかがなものでしょうか。
おじいさんとモギの関係が良いです。そしておかみさんのさりげない優しさとか。その辺りはわかるなあ~と思いました。面白かったです。
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モギのひたむきな心にうたれます。焼きものへの情熱、いっしょに暮らしているおじいさんを思う気持ち。すごくいいお話です。
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橋の下で暮らす少年の運命を変えたものは、あやしいまでに美しい高麗青磁の輝きだった。12世紀後半の韓国、青磁の村を舞台に、名焼きもの師の見習いとなった少年の物語。2002年度ニューベリー賞受賞作。
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好きなことがあって
努力できるって幸せだよな
一所懸命になれるって素敵です
主人公の成長物語ではありますが
焼き物の工程や歴史を楽しめる本でもあります
陶芸博物館の先生がおっしゃっていたのは
この時代の青磁だったろうか?
実物を確かめたくなります
自分も焼いたことあるけど
釉薬の違いって結構あるよね
うちにあるのは、にごった緑色
澄んだ青に近い色の作品を見てみたい
古い時代の登り窯の見学をしたことがあって
その時のことを思い出しながら読みました
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モギは小さいころ親を病気で亡くします。そして、橋の下で暮らすトゥルミじいさんに育ててもらうのです。
食べ物は人々が捨てたごみから探します。そうやって探すうち、村のやきものに興味をもちます。
自分でもロクロをまわしてやきものを作りたいという夢をもちます。
あるきっかけから村でも指折りの技術の持ち主ミンのもとで働くことになります。
最初は窯のまきを集めるところから。けれどけがまでして頑張ったモギにミンはどなります。
九日間同じ仕事をしたあと、今度は粘土運び。
二か月後。粘土を濾す仕事。
なかなかロクロをさわらせえてはもらえません。
仕事も詳しくは教えてもらえず、見よう見まねで覚えるモギ。
一年半後、ついに大事な仕事をまかされますが…。
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ニューベリー賞受賞作で感想文の課題図書になっただけあって、児童書として文句のつけようのない出来。
キャラクターの造形が(ステレオタイプではあるものの)きちんとしていて、ストーリーもいいし、終わり方も上手い。
国宝になったというその青磁が見たくてネット検索したら、全部入れないうちに「青磁象嵌雲鶴文梅瓶」が出てきた。
読んだ人はみんな検索したと思う。
欠点がなさすぎて、「愛する本」とまでは思えないが、誰にでも安心して紹介できる名作であることは間違いない。