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インディーズ映画が世界を変える アート系映画のカリスマ・プロデューサーが明かす、低予算映画を成功へ導く秘密 みんなのレビュー
- クリスティーン・ヴァション (著), デイヴィッド・エデルスタイン (著), 頼 香苗 (訳)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:アーティストハウスパブリッシャーズ
- 発行年月:2004.2
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紙の本
思わず胸が熱くなる
2004/03/02 23:38
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投稿者:たこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
有形無形を問わず、ものをつくって売るという行為には、常に創り手の想いと受け手の評価のギャップが存在する。
特に、芸術行為の場合は、芸術性と商業性とのせめぎあいになる。
良質なものは必ず評価してくれる人がいるが、それが多くの人に評価されるものであることを保証するものではない。
そして、創り手の想いのつまり過ぎたものは、得てして「売れない」のである。
インディーズ映画というのは、まさに、こういうものである。
大きな売上が見込めないから資金も集まらない。
資金が集まらないとスタッフを集めるのも一苦労だし、いつまでも撮影は続けられない。だからトラブルも多い。
「基本的に、低予算映画というのは、危機の連続だ。もてるすべての力を限界まで出し切り、そのうえで、その限界そのものを押し広げていかなくてはいけない。常にクリエイティブな頭でいることが必要だ。というのも、何かマズい状況に陥ったからといって(というか、いつだって何かがマズい状況になるものだけど)、お金で解決できるほどの資力はないのだから。」
著者は、このようなインディーズ映画を専門とする米国在住のプロデューサーだ。
お金を集め、進行を管理し、配給会社との交渉をする。それがプロデューサーの仕事。
日本映画界では、まだまだその存在が一般に知られることのないプロデューサーの仕事とは何なのか。
この本を読めばそれが良くわかる。
しかも、金のないインディーズ映画のプロデューサーだ。
場数を踏んだ人ならではの臨場感溢れるトラブルやエピソード、それに工夫の数々は、当人にしてみれば、とても笑えたもんじゃないのだろうと思いながらも、思わず笑ってしまう。そんなおかしみと哀しみに溢れている。
映画業界の方々が読んだらはまるだろうなあと思う。
でも、映画に限らず、ものづくりに関わる全ての人が共感を持って読めること請け合いだ。
また、小さな会社で、マンパワーと知恵だけに頼って仕事をしている人達にもきっと勇気と希望を与えてくれることだろう。
組織論、リーダーシップ論としてもヒントに満ちている。
金がないほうが良いとは言わない。
しかし、「低予算を補うためにひねり出すさまざまな問題解決法は、逆に、とてつもなく創造性に溢れた発想につながる」のも事実である。
そして、金がないなかで苦労するからこそ生まれる団結心。
インディーズならではのものづくりの感動がここにはある。
「自分の手の仲に映画を抱えているのだけど、実はそれは水銀で、手にしたと思った瞬間に指の間からすり抜けていってしまうというイメージを頭から振り払うことができなかった」
何かを成し遂げようと思う人は、必ず、こういう思いに直面することだろう。
けれども、「奇跡は、自分のためにきっちりとした枠組みを作っている人々に起こるものなのだ」。だから、常に諦めずに一つ一つ積み上げていくことが必要だと著者は言いたいのだろう。
「インディペンデント映画は新しい希望の競技場(アリーナ)なのだ。そして、わたしが心の底から求めるのは、映画を敬虔な気持ちで扱う、向上心に燃えたプロデューサーや監督や脚本家たちだ。大衆の知性を過小評価した多くの人は、破産へと追い込まれた。わたしは、しっかりとした仕事をやり通せば、映画は−いつか必ず−観てもらえるものと信じている。信じなくてはいけない。さもなければ、やり続けていくことはできないのだから。」
彼女のこの映画に対する愛と情熱、そして信念の強さを前にして、僕はただただ敬虔な気持ちに包まれた。本当に映画って素晴らしい。皆でものをつくることって素晴らしい。そう思わせてくれる本である。
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